ユルゲン・ハーバーマス
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ユルゲン・ハーバーマス(Jürgen Habermas, IPA: [ˈjʏʁgən ˈhaːbɐmaːs]、1929年(昭和4年)6月18日 - デュッセルドルフ)は、ドイツの社会学者、哲学者である。フランクフルト学派第二世代に位置し、マルクス左派と捉えられている[要出典]。公共性論や、コミュニケーション論の第一人者である。哲学者のジャック・デリダとの論争や思想家ジャン=フランソワ・リオタールとの論争、社会学者ニクラス・ルーマンとの論争、また1986年6月にフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙に発表されたエルンスト・ノルテによる論文「過ぎ去ろうとしない過去」に対して批判を加えたことによる歴史家論争でも有名である。「国民に承認され、擬制された憲法を尊重せよ」とする憲法愛国主義を提唱した。
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[編集] 略歴
ゲッティンゲン、チューリッヒ、ボンの大学に通う。1954年にフリードリヒ・シェリングに関する論文により博士号の授与を受けた後、1961年から1964年まではハイデルベルク大学において、1964年から1971年まではフランクフルト大学において社会学および哲学の教授。つづいて1971年から1983年までミュンヘン郊外のシュタルンベルクにあるマックス・プランク研究所所長を務めた後、1983年より再びフランクフルト大学教授に就任し、1994年に退職。2004年には、京都賞を受賞した。
[編集] 生涯
1929年6月18日、ドイツのデュッセルドルフに生まれた。少年期をナチス政権下で過ごし、ドイツ少年団、ヒトラー・ユーゲントに組み込まれていた。1945年、ドイツ敗戦後にギムナジウムでの学習に戻った。アメリカ占領下での民主主義教育は、彼の思想形成に大きな影響を与えたと考えられる。1952年より書評、批評をフランクフルター・アルゲマイネ紙などに寄稿し始める。1954年にボン大学で博士号を習得した。
1956年、フランクフルト・アム・マインに拠点を戻していた社会研究所に入りテオドール・アドルノの助手を務めた。しかし翌年に発表した文章が、社会研究所の中心人物であったマックス・ホルクハイマーにとって暴力革命を肯定する急進的すぎる内容だととらえられ、ホルクハイマーは研究所からハーバーマスの排除を図った。この頃、ハーバーマスは代表的著書である『公共性の構造転換』の着想をえており、フランクフルト大学の教授職をもとめたが、ホルクハイマーの反対を受けたことから断念し、1959年に社会研究所を辞職した。『公共性の構造転換』を完成させたハーバーマスは、1961年よりハイデルベルク大学で教授職を得て教壇に立った。そして、1964年にホルクハイマーがフランクフルト大学を退くと、後任としてフランクフルト大学教授の職についた。
[編集] 邦訳著書
[編集] 単著
- 『社会哲学論集――政治における理論と実践(1・2)』(未來社, 1969年-1970年)
- 『イデオロギーとしての技術と科学』(紀伊國屋書店, 1970年)
- 『公共性の構造転換』(未來社, 1973年/第2版, 1994年)
- 『認識と関心』(未來社, 1981年)
- 『哲学的・政治的プロフィール――現代ヨーロッパの哲学者たち』(未來社, 1984年)
- 『コミュニケイション的行為の理論(上・中・下)』(未來社, 1985年-1987年)
- 『近代の哲学的ディスクルス(1・2)』(岩波書店, 1990年)
- 『意識論から言語論へ――社会学の言語論的基礎に関する講義(1970/1971)』(マルジュ社,1990年)
- 『ポスト形而上学の思想』(未來社, 1990年)
- 『社会科学の論理によせて』(国文社, 1991年)
- 『未来としての過去――ハーバーマスは語る』(未來社, 1992年)
- 『新たなる不透明性』(松籟社, 1995年)
- 『法と正義のディスクルス――ハーバーマス京都講演集』(未來社, 1999年)
- 『近代――未完のプロジェクト』(岩波書店, 2000年)
- 『史的唯物論の再構成』(法政大学出版局, 2000年)
- 『事実性と妥当性――法と民主的法治国家の討議理論にかんする研究(上・下)』(未來社, 2002年)
- 『他者の受容――多文化社会の政治理論に関する研究』(法政大学出版局, 2004年)
- 『人間の将来とバイオエシックス』(法政大学出版局, 2004年)
- 『討議倫理』(法政大学出版局, 2005年)
- 『テクストとコンテクスト』(晃洋書房, 2006年)
[編集] 共著
- (ニクラス・ルーマン)『批判理論と社会システム理論――ハーバーマス=ルーマン論争(上・下)』(木鐸社, 1984年-1987年)
- (エルンスト・ノルテほか)『過ぎ去ろうとしない過去――ナチズムとドイツ歴史家論争』(人文書院, 1995年)
- (チャールズ・テイラー, スーザン・ウルフ, スティーヴン・C・ロックフェラー, マイケル・ウォルツァー, K・アンソニー・アッピア)『マルチカルチュラリズム』(岩波書店, 1996年/岩波モダンクラシックス, 2007年)
- (ジャック・デリダ, ジョヴァンナ・ボッラドリ)『テロルの時代と哲学の使命』(岩波書店, 2004年)
- (ヨーゼフ・ラッツィンガー、フロリアン・シュラー)『ポスト世俗化時代の哲学と宗教』(岩波書店, 2007年)
[編集] 関連項目
- 公共圏
- 批判理論
- コミュニケーション
- テオドール・アドルノ
- マックス・ホルクハイマー
- ヴァルター・ベンヤミン
- マックス・ヴェーバー
- ヴィルヘルム・ディルタイ
- ポストモダン
- カール・ハインツ・ボーラー