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ムコ多糖症 - Wikipedia

ムコ多糖症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ムコ多糖症(ムコたとうしょう、MucopolysaccharidosisMPS)は、遺伝的な要因による先天性代謝異常症であるライソゾーム病の一種である。医学上の正式名は「ムコ多糖代謝異常症」。特定疾患に指定されている。

リソソーム内の加水分解酵素の先天的欠損あるいは異常により、リソソーム内にムコ多糖の一種であるグリコサミノグリカン(GAG)が蓄積する疾患である。GAGは人体内で細胞間結合に寄与する役割がある。

原因となる遺伝子によっていくつかの類型に分けられており、それら遺伝子染色体上の位置により常染色体劣性遺伝と性染色体劣性遺伝の2種類に分類される。なお、ムコ多糖症I型は前者、ムコ多糖症II型は後者にあたる。

また、同一酵素の欠損あるいは異常は、遺伝子配列等の因子により程度が異なっており、病態の進行度、重篤度は患者間で大きな差が見られる。

目次

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日本での分類は以下のようにI型~VI型までの型に分けられている。医療者向け資料などではMPSという略称で使う事が多いようで、例えばムコ多糖症I型の場合MPS Iと表記する。なお、以下の記述中のオーストラリアでの発症率はMeikleらの論文による[1]。ただし、発症例は各型数十名程度しか存在しないため、統計的誤差は多分に含んでいると考えられる点に注意されたい。

  • MPS I
    リソソーム酵素であるα-L-イズロニダーゼは、GAGの一種であるデルマタン硫酸とヘパラン硫酸のα-L-イズロン酸を加水分解する酵素であり、MPS I患者においては常染色体劣性遺伝により先天的に欠損している。本酵素の欠損によりリソソーム中にデルマタン硫酸やヘパラン硫酸が蓄積することにより、MPS I患者においては慢性かつ進行性の、多様な症状を示す。MPS Iはさらに重症型のMPS I H型(ハーラー症候群; Hurler syndrome)、中間型のMPS I H-S型(ハーラー-シャイエ症候群; Hurler-Scheie syndrome)および軽症型のMPS IS型(シャイエ症候群; Scheie syndrome)に分類される。オーストラリアでの発症率は148,000人に1人である。
    1994年、組換えα-L-イズロニダーゼのCHO細胞内での過剰発現系が構築され[2]、また、1997年にはα-L-イズロニダーゼ欠損マウスの作成により本病態のモデル動物が作成された[3]2001年には酵素補充療法によるMPS Iの臨床試験結果が発表され、実際の患者(10名)への本酵素補充により肝脾腫の縮小、身長と体重の増加、肩と肘関節の動きの改善、睡眠時無呼吸頻度の低下、心不全状態の改善といった効果が認められた。[4]。一方、半数(5名)の患者にアレルギー症状である蕁麻疹が発生し、また、ほぼ半数(4名)の患者で中和抗体が認められ、一定の副作用が観察されたことも事実である。
    本薬はGenzymeによりAldurazymeとして製剤化され、アメリカ合衆国EUでは2003年に承認された。また日本においてもアウドラザイム(一般名:ラロニダーゼ(遺伝子組換え))という商品名で2006年に製造販売承認された。本製剤を週1回点滴静脈投与することによりMPS I患者で不足している酵素を外的に補充することで、MPS I患者が有する特有の諸症状の改善に寄与する。ただし、タンパク質は一般に血液脳関門を通過できないため、中枢神経症状に対する有効性は認められていない[5]ことに注意が必要である。なお、動物実験ではあるがくも膜下腔内投与を行うことにより、中枢神経症状の改善が見られることが報告されており[6][7]、血液脳関門の中枢神経側に安全に投与する技術が開発された場合、ムコ多糖症による中枢神経症状も改善される可能性がある。
  • MPS II
    MPS II型(ハンター症候群; Hunter syndrome)はCharles A. Hunter(1873年-1955年)によりはじめて報告[8]された疾患であり、イズロン酸-2-スルファターゼの先天的欠損によりGAGの分解ができずに細胞内のリソソームに蓄積することにより引き起こされるものである。本タンパク質はゲノム上ではX染色体上に位置しており、従って本疾患は性染色体劣性遺伝による遺伝性代謝異常症である。
    本疾患を有している新生児は、出生した時点では他の新生児と外見上の違いは見られないが、成長に伴い、騒音呼吸を初発症状として気道感染、肝脾腫を経て、1~2歳ごろから特徴的な身体機能(特徴的な顔貌、骨変化、角膜混濁、関節の可動性低下)や精神発達遅滞が観察される。本疾患は進行性のものであり、重症の場合は成人することなく死亡する。しかし、循環器系に問題を有しない場合は若年で致死することは少なく、軽症の場合は精神発達遅滞が見られないこともある。尿中にムコ多糖であるデルマタン硫酸、ヘパラン硫酸が多量に排泄されることも知られている。
    MPS IIは日本における本疾患の約半分を占めており、日本における患者数は120~140人とされている。またオーストラリアにおいては約136,000人に1人の新生児が本疾患を発する。前述の通り本疾患は進行性のものであるため、可能な限り早期に鑑別し、早期に治療を開始する必要があった。しかしながら、従来は骨髄移植か対症療法しか治療法の選択肢が無く、文字通りの難病である。
    前述の通り、本疾患は1917年にHunterにより報告され、その後の研究により、患者らは何らかの酵素が欠損していることが明らかとなったが、永年その原因は不明であった。しかし、1973年、Bachらにより患者らが欠損している酵素がイズロン酸-2-スルファターゼであることが明らかとなり[9]、さらに1990年にはWilsonらにより本酵素がクローニングされ、遺伝子配列が明らかとなった[10]ことにより、この遺伝病への治療の道が拓かれた。2006年2007年には本酵素を用いた酵素補充療法の臨床試験結果が報告された[11][12]。患者において6分間歩行試験での歩行距離延長及び尿中GAG排泄量の減少が観察され、本療法の有効性が証明された。
    本酵素はElapraseとして米国及び欧州ではShireにより発売され、日本においてもエラプレース(一般名:イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え))という商品名で2007年に製造販売承認された[13]。本酵素を週1回点滴静脈内投与することによりイズロン酸-2-スルファターゼを体内に補充し、リソソーム中に蓄積したGAGを分解し、症状の進行を遅らせることが可能となった。ただし、タンパク質は血液脳関門を通過できないため、中枢神経症状に対する有効性は認められていないことに注意が必要である。
  • MPS III型 - サンフィリッポ症候群 (Sanfilippo syndrome)
    オーストラリアでの発症率はIII-A、III-B、III-C及びIII-D型がそれぞれ169,000、230,000、593,000、514,000人に1人
  • MPS IV型 - モルキオ症候群 (Morquio syndrome)
    オーストラリアでの発症率はIV-A型が206,000人に1人
  • MPS VI型 - マロトー・ラミー症候群 (モロト-ラミー症候群、Maroteaux-Lamy syndrome)
    オーストラリアでの発症率は242,000人に1人
  • MPS VII型 - スライ病 (Sly disease)
    オーストラリアでの発症率は726,000人に1人
  • MPS VIII

[編集] 症状と特徴

進行性の病気でありムコ多糖が蓄積することにより下記のような症状が現れる(但し、型や個人差によって症状は大きく異なるため一概には言えない)。患者は徐々に衰弱する。寿命は重症の場合10歳から15歳までの間であるといわれる。軽症の場合では成人している患者も少なくない。

  • 臓器への障害
  • 知能障害
  • 運動能力低下・喪失
  • 聴力低下・喪失
  • 呼吸困難
  • 特異顔貌(ガーゴイル様顔貌)
  • 低身長

[編集] 治療法

遺伝的要因によるものなので根治治療は難しい。現時点では胎児あるいは新生児の時点、すなわちできる限り早期に診断するのが治療には重要と考えられている[14][15]。もちろん、これら遺伝子診断は倫理学的には解決しなければ問題が多いのも現実であるが、早期診断・早期治療はムコ多糖症の症状進行を食い止めるには有効な手段である。なお、治療法については確立されていないものも含め下記のようなものがある。

  • 対症療法
  • 酵素補充療法(Enzyme replacement therapy)
    現在の医学水準では最も現実的で、かつ有効と考えられている治療法。ムコ多糖を分解する酵素(患者は、ムコ多糖を分解する酵素を先天的に欠損し、あるいは産生能が不足している)を製剤化し、点滴投与により補充する治療法。I型(1型)とII型(2型)は欧米、日本で、VI型(6型)は欧米で、治療剤の製造販売が承認されている。ただし、これら酵素は血液脳関門を越えられないため、I型やII型における中枢神経症状には効能を示さないとされている。なお、VI型については現在のところ中枢神経症状を示さないとされているため、VI型については酵素補充療法が他の病型に比べ有効度が高いものと見込まれている。
    • VI型(6型)の初めての治療剤は、『ナグラザイム』〔一般名:ガルスルファーゼ(遺伝子組み換え)〕(galsulfase)。米国、EU諸国での販売名はNAGLAZYME。2007年6月、厚生労働大臣は、本医薬品を希少疾病用医薬品に指定した。2007年8月、アンジェス MGは、厚生労働大臣に本医薬品の製造販売承認申請をし[1]、2008年3月28日に製造承認を取得。同年4月11日薬価収載、4月14日発売となった。『ナグラザイム点滴静注液5mg』の価格は256,775円。用法・用量は「1回1mg/kgを週1回、点滴静注」である。
    • IV-A型(4A型)は現在アメリカで酵素製剤の研究・開発が進んでいる[16]
  • 骨髄移植
  • 造血幹細胞移植
  • 遺伝子治療

[編集] 支援団体

[編集] 日本ムコ多糖症親の会(MPS親の会)

  • 1986年設立の患者団体。1988年に第1回交流会を開催。年1回、東京または大阪において、会員や医師達の交流会が実施されている。交流会は、患者家族や医師達との交流、情報交換等の中心的な役割をになってきている。2007年には大阪で交流会を開催。
  • 現在の組織は、患者家族からなる「家族会員」と患者家族ではない会員の「賛助会員」から成り立っている。
  • 2007年4月14日に群馬県草津町で行われた自転車のヒルクライム競技大会「第12回ツールド草津」では写真、ポスターを掲示した展示ブースを設置した。多くのライダーが親の会のシンボルマークのステッカーを車体等に貼り、PRに貢献した。実行委員会から大会参加料収入の一部が寄付された。
  • IV-A型(4A型,モルキオ病)の治療薬の製品化を目指すイノテック・バイオテクノロジ社に対して臨床治験に日本人患者を参加させることを求める請願署名の募集が行われている。

[編集] ムコ多糖症支援ネットワーク(ムコネット,muconet.)

  • 日本のムコ多糖症患者のために、行政・国会・製薬会社等関係各所に対し働きかけて、治療薬の開発、治療薬の製造販売の早期承認や新生児マススクリーニングの実現に向けての活動を行っている特定非営利活動法人。2007年8月に長崎県知事の設立認証を受け、2007年9月に設立登記された。法人の主たる事務所は長崎県大村市にある。2005年5月8日に放送された日本テレビのドキュメント番組『NNNドキュメント'05 「1億3千万分の1 =0ですか?」』を観たバンドネオン奏者の小松亮太が、2005年8月21日に母校である東京都足立区立の小学校にてチャリティライブを実施し、その収益を元に2005年8月に任意団体として発足した。小松亮太はその後もムコネットの活動告知や協力を呼びかけるなど、積極的な患者支援活動を行っている。
  • レゲエグループの湘南乃風もムコネットとの協同で、患者救済の支援活動を行っている。2007年2月4日、日本テレビ放送網系列の情報番組『THE・サンデー』がこの模様を放送した。反響により、2月18日にも放送された。支援のために書き下ろされた曲「みんなのうた」は、ムコネットのWebサイトで聴くことができる。9月2日放送の同番組において、司会者の徳光和夫安倍改造内閣厚生労働大臣に就任したばかりの舛添要一へのインタビューにおいて、番組と湘南乃風が行ってきた同疾病に対する活動の報告をし、活動への支援を呼びかけた。これに対し舛添氏は、支援を検討すると発言した。
  • 疾病の認識促進や支援を呼びかけるために、だいだい色のオリジナルのTシャツ(ムコネットTシャツ)[17]を着用してランニング大会等に参加する活動が全国各地の有志により行われている。

[編集] そうた応援会

  • この会は、先天性代謝異常症「ムコ多糖症4型(モルキオ症候群)」の患者・家族を支援する為に活動を行う事を目的とした任意団体である。活動の拠点は山口県岩国市。
  • 2007年7月、スイスの製薬会社イノテックバイオテクノロジー社に対し、自然歴調査と世界同時治験への日本人参加を求める請願書を送付するために、署名(自署ではない)をウェブページSNSの一つであるmixi内の公式コミュニティ等で請願内容を公表した上で協力を呼びかけたところ、約1日で542名の賛同を得た。寄せられた署名は請願書に賛同者として全員の氏名がローマ字アルファベットで表記され、同製薬会社にEメールと国際郵便で送付された。この請願書送付についてはHP、公式コミュニティなどで速やかに報告されている。
  • モルキオ病は現在、治療薬が研究・開発されている途上にあるが、日本における新薬の承認には臨床治験データに日本人のデータが含まれている事が必要となる。

※そうた応援会は積極的に国への請願や治療薬研究室への研究費助成を行ってきたが、その甲斐あって2008年5月、2009年より開始予定の臨床治験第一相と自然歴調査への日本人参加枠が内定した。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 参考文献

  1. ^ Meikle P.J. et al., 1999. Prevalence of lysosomal storage disorders. JAMA 281:249-254.PubMed
  2. ^ Kakkis, E.D. et al., 1994. Overexpression of the human lysosomal enzyme alpha-L-iduronidase in Chinese hamster ovary cells. Protein Expr. Purif. 5:225-232. PubMed
  3. ^ Clarke, L.A. et al., 1997. Murine mucopolysaccharidosis type I: targeted disruption of the murine alpha-L-iduronidase gene. Hum. Mol. Genet. 6:503-511. PubMed
  4. ^ Kakkis E.D. et al., 2001. Enzyme-replacement therapy in mucopolysaccharidosis I. N. Engl. J. Med. 344:182-188. PubMed
  5. ^ ジェンザイム・ジャパン株式会社 2006. アウドラザイム点滴静注液2.9 mg 添付文書 PDF
  6. ^ Kakkis, E. et al., 2004. Intrathecal enzyme replacement therapy reduces lysosomal storage in the brain and meninges of the canine model of MPS I. Mol. Genet. Metab. 83:163-174.PubMed
  7. ^ Dickson, P. et al., 2007. Intrathecal enzyme replacement therapy: successful treatment of brain disease via the cerebrospinal fluid. Mol. Genet. Metab. 91:61-68.PubMed
  8. ^ Hunter, C., 1917. A rare disease in two brothers. Proc. R. Soc. Med. 10:104-116.
  9. ^ Bach, G. et al., 1973. The defect in the Hunter syndrome: deficiency of sulfoiduronate sulfatase. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70:2134-2138. PDF
  10. ^ Wilson, P.J. et al., 1990. Hunter syndrome: isolation of an iduronate-2-sulfatase cDNA clone and analysis of patient DNA. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8531-8535. PDF
  11. ^ Muenzer, J. et al., 2006. A phase II/III clinical study of enzyme replacement therapy with idursulfase in mucopolysaccharidosis II (Hunter syndrome). Genet. Med. 8:465-473 PubMed
  12. ^ Muenzer, J. et al., 2007. A phase I/II clinical trial of enzyme replacement therapy in mucopolysaccharidosis II (Hunter syndrome). Mol. Genet. Metab. 90:329-337. PubMed
  13. ^ ジェンザイム・ジャパン株式会社 2007. エラプレース点滴静注液5 mg 添付文書 PDF
  14. ^ Meikle P.J. et al., 2004. Newborn screening for lysosomal storage disorders: clinical evaluation of a two-tier strategy. Pediatrics 114:909-916.PubMed
  15. ^ Meikle, P.J. et al., 2006. Newborn screening for lysosomal storage disorders. Mol. Genet. Metab. 88:307-314.PubMed
  16. ^ http://www.slu.edu/readstory/more/7115
  17. ^ http://www.muconet.jp/topics/060911.html


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