ミニチュア撮影
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ミニチュア撮影(ミニチュアさつえい)とは映画などで縮尺模型(ミニチュアモデル)を使って行われる撮影、特殊効果をいう。
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[編集] 概要
ミニチュア撮影は実物大のセットを用意することが物理的、経済的な理由で困難な場合に行われる、古典的、伝統的な特殊撮影である。たとえばスティーブン・スピルバーグ監督の『1941』(1979年)のラストシーンで断崖から崩れ落ちる2階建ての家は実物大のセットを使って撮影されたものであったが、同タイトルにおいて、大観覧車が桟橋から海へ転げ落ちるシーンは室内プールと精巧なミニチュアセットを使って撮影された。日本でも戦前作られた国策映画『ハワイ・マレー沖海戦』(1942年)では、特技監督の円谷英二による一切記録映像を使わない、ミニチュアモデルとワイヤー操演による、真珠湾攻撃、マレー沖会戦の空戦映像が当時の観衆を驚嘆させた。
ミニチュア撮影に使われる縮小模型は、ジオラマなどのミニチュアセットと、子供が作るプラモデルのようなミニチュアモデルとに分けられる。その材料は様々であり、ミニチュアセットの場合はジオラマに使われるような発泡スチロール、段ボール、ベニヤ板、針金などで市街地を制作することもある。ミニチュアモデルにはプラスチック、ファイバーグラス、透明な部分にはレジンキャストなどの合成樹脂が使われることが多い。これらの樹脂は型どりをする必要があるため、木材や粘土でオリジナルのモデルを制作し、そこからシリコンなどで型を取る。シリコン型から成型されたミニチュアモデルはプラモデルでおなじみの「ヨゴシ」などのテクニックを用いて彩色される。
[編集] 撮影技術
縮小模型を使って撮影するときに、ごまかしが効かないのが自然現象である。50階建てのビルディングが崩壊するシーンを1メートルのミニチュアモデルを使って撮影したとする。いかに外観の優れたミニチュアモデルであっても、重力はごまかすことが出来ない。実際より早く崩壊してしまうビルディングは観客にそれが縮小模型であることを容易に悟られてしまう。そういった事態を防ぐため、ミニチュア撮影では、実際のサイズよりも大きく見せるために、高速度撮影が利用されることが多い。高速度撮影された映像はスローモーションになるため、たとえばトレーラーがビルに突撃して炎上する映像では、破壊されたトレーラーとビルの破片は非常にゆっくりと地上に落下していく。もしスローモーションを用いなければ、観客は破片の飛び散り方でミニチュア撮影であることにすぐに気がついてしまうだろう。下表はハリウッドのSFXスタジオで目安とされている模型のスケールと撮影速度の対応表である。
縮尺率 | 撮影速度(fps) |
---|---|
1/2 | 33 |
1/4 | 48 |
1/8 | 67 |
1/10 | 77 |
1/12 | 84 |
1/16 | 96 |
1/20 | 108 |
1/24 | 117 |
1/36 | 144 |
1/48 | 168 |
1/64 | 192 |
1/100 | 240 |
他にも縮尺模型をリアルに見せるため、様々なテクニックが用いられる。たとえば爆発炎上する自動車は燃えやすい素材で造り、パラフィンと石油を電気的に起爆することでより自然な爆発に見せたり、屋外プールを使ってライティングを自然の天空光に近づけたり、プールの水を黒く着色し、洗剤を混ぜて荒れ狂う荒波を再現したりと工夫は絶えず行われる。
焦点深度も重要な問題である。ミニチュア撮影では画面全体に焦点が合うように絞り値を大きめにするのが通常である。パースをきつくするために被写界深度の深い広角レンズも利用される。より奥行き感を出すためには、手前のモデルを大きく、奥のモデルは小さく作ればよい。これは強制遠近法といわれている。
[編集] 3DCG登場とミニチュアの現状
1980年に製作された『レイズ・ザ・タイタニック』では1/350スケールの豪華客船タイタニック号がプールに浮かべられ、スクリーン上で迫力ある沈没シーンが演出されたが、1997年に製作された『タイタニック』で観客の前に現れたタイタニック号は、(部分的にミニチュアも使われたものの)もはやミニチュアモデルではなくなっていた。80年代にはごく一部でしか使われることのなかった3次元コンピューターグラフィックスは90年代に入りより一層の進歩を遂げ、デジタル・コンポジット技術の発達とともに実写と見まごうばかりの映像が作られるようになった。 ストップモーション・アニメーションは、ミニチュア撮影が利用される代表的な撮影技法だが、『ジュラシックパーク』(1993年)ではフィル・ティペットのデモンストレーションによるミニチュア恐竜はILMの作り出したフルデジタルCGIによる恐竜に駆逐され、この作品ではストップモーション・アニメーションはその役割をCGに譲る形になってしまった。
一方、近年、目覚しく進化を遂げているCGを多用した作品が増える中で、よりリアルな存在感を求める動きが盛んになってもいる。「ロードオブザリング」「ダイハード4.0」「007(カジノロワイヤル)」「キングコング(2005)」等は、CGとミニチュアを組み合わせることで、より効果的でリアリティのある重厚な表現に成功している。
[編集] 関連企業
- 白組
- アップアート
- マーブリングファインアーツ
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 『SFX映画の世界』 中子真治 1983年 ISBN 978-4062003018