マーコス
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マーコス（Marcos）は、イギリスの自動車メーカーの1つ。
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[編集] 歴史
[編集] 創設
マーコス(Marcos Cas Ltd.)は1959年に英国ナショナルフォーミュラーチャンプのジェム・マーシュ(Jem Marsh)と、Cosworthのエンジニア、マイク・コスティン（Mike Costin）の兄で「Lotus11」の設計者としても有名なエンジニア、フランク・コスティン(Frank Costin)の2人で設立された。
マーコス「Marcos」というブランド名はジェム・マーシュ(Jem Marsh)の「Mar」とフランク・コスティン(Frank Costin)の「Cos」を合わせたもので、ジェム・マーシュが経営を担当し、フランク・コスティンが設計を担当した。
こうしてマーコス「Marcos」はレーシング・カーを設計製作するワーク・ショップとしてスタートする。
[編集] バック・ヤード・ビルダーとして
設計担当のフランク・コスティンは第二次世界大戦中に活躍した戦闘爆撃機「モスキート」の設計に従事した経験を生かして、ベニヤ合板で製作されたシャシーと、かなり奇抜なスタイリングのFRPボディーを持つ初代のMarcos GT「Xylon」を開発する。
当初のプロトタイプはFORD1.2リッター（1172cc）エンジンが積まれていたが、「Xylon」は軽量化のためCosworthチューンのFORD製1リッター（993cc）エンジンに積み換えられ、非力なエンジンながらもベニヤ合板による軽量かつ剛性の高いシャシーはレースにおいて好成績を収める要因となったが、空力に優れながらも奇抜なボディー・デザインであることから「醜いアヒル」（Ugly Duckling）という不名誉なニック・ネームが付けられる。
後にF1ドライバーとなるジャッキー・スチュワートやデレク・ベル、ジャッキー・オリバーとジョナサン・パーマーもこの「Xylon」を使ってレース経験を積んだ。 生産台数は6台とされている。
1961年、デニス・アダムス（Dennis Adams）、ピーター・アダムス（Peter Adams）兄弟がマーコスに加入。初代Marcos GT「Xylon」の手直しに取り掛かり、ガルウィングドアを与えられた「ルートン・ガルウィング」（Luton Gullwing）と「ブレッドバン」（Breadvan）が製造された。
これに起因したのか、フランク・コスティンはMacosを去ってしまう。
1964年、日本の鈴鹿サーキットで行われた第2回日本GPに「ルートン・ガルウィング」が2台が参戦している。 この時、日本へ初上陸を果たしたMarcosだったが、エントラントがホモロゲーション・シートを忘れた上にMarcosがまだ日本では無名なため、オフィシャルにレース参戦を断られるが、日本の自動車雑誌の権威「CAR GRAPHIC」のエディターが仲介する事によって参戦する事ができた。 このレース結果は出走した2台のうち、1台は車検不合格のまま出走したため失格、もう1台は1位でフィニッシュするもののフライング・スタートのペナルティーを受けて5位という成績こそ不本意なものに終わってしまった。
しかし地元イギリスでこの「Marcos GT」たちはクラブマン・レースを中心に1リッタークラスのコース・レコードを次々と塗り変えていった実績があり、この成功によって資金のバック・アップを受けることへと繋がったMarcosは、新たにエイヴォンに工場を構え、市販車の製作のプロジェクトを立ち上げた。
[編集] ジェム・マーシュの野心
1963年、市販車第1号となる「Marcos Spyder」を発表するが、レーサーたちからの要求でレース用として屋根付きのクーペ・モデルも製造した。
市販車は既述のレーシング・カー「Marcos GT」ベースのオープン・カーで、アダムス兄弟がウッドン・シャシーに手を加え、FORD1.5リッターエンジンを搭載したモデルだった。内装も市販車両として通用させるための内貼りが施され、キット・カーとしては￡750で売り出されたが、一般からの評判は芳しいものではなかったため、販売台数は少なかったと見られる。
しかし翌1964年、ジェム・マーシュとアダム兄弟の奥の手とも言える「Marcos 1800GT」が発表される。
シャシーこそフランク・コスティン設計のウッドン・フレームを改良された物だったが、インボード・ブレーキや新設計のサスペンションを搭載。そして悪評だったFRPボディーはアダムス兄弟がデザインし直したスリークなスタイルで、前モデルである「Marcos・GT」のデザインから一転、「醜いアヒルから生まれた白鳥」とジャーナリストから称賛を浴びる事となる。
エンジンはボルボ製1.8リッター（1780cc）が搭載されていた。 このVOLVOエンジン最高出力は114psで、「Marcos GT」のフォードエンジンが発生した最高出力60psから一気にパワフルなものへと変わったが、装備の充実と共に車重も増加したために性能面では「Marcos GT」と特に変わりはなかった。
完全なロード・カーとして生まれ変わった「Marcos 1800GT」の登場でMacosは活躍の場だったクラブマン・レースから遠ざかり、スポンサー的存在であったアマチュア・レーサーたちも自然と離れていく事になるが、ワイルドなデザインは北アメリカに受け入れられ、この北アメリカへの輸出で順調にメーカーとして業績を伸ばしていく。
1967年、コスト削減のため搭載するエンジンをフォード・コーティナ用の1.5リッターへ変更。サスペンション等も安価なパーツに交換されたため、実質の性能は低下してしまった。 この「Marcos 1500GT」の生産台数は82台とされる。
翌1968年、FORD1.6リッター（1599cc）OHVエンジンに変更され「Marcos 1600GT」となる。
この年、前モデルの「Marcos 1500GT」のスペシャル・モデル、「Marcos 1650GT」も製造された（一説では3台）。前モデルに搭載されたFORD・コーティナ用エンジンを、Marcosがエンジン排気量を1650ccにボア・アップ、さらにクリス・ローレンスがチューンを施した事によって圧縮比が高められ、1機だったウェーバー・キャブレターも2機装備する事で、このモデルは最高出力140psを叩き出した。
さらに1968年、これらの「1500GT」系と、後に登場する「Marcos 2litre GT」と平行して、ディアック用3リッターV6（2994cc）エンジンを搭載し、4輪ディスク・ブレーキに変更された豪華版「Marcos・3litre GT」も生産されている。この「3litre GT」は最高時速201km/h、0-60mph 7秒を誇った。
翌1969年、「1500GT」系はコーセア用2リッターV4エンジンに変更され、「Marcos 2litre GT」として生産している。
このようにMarcosのエンジンは需要や供給に合わせて目まぐるしく変更されていく。
[編集] ベニヤ合板シャシーから鋼管パイプ・フレームへ
1969年ついにプロトタイプから引き継がれてきた「ウッドン・フレーム」が廃止された。
フランク・コスティン設計の名残りで、Marcosのアイコンでもあった「ウッドン・フレーム」は、かさむ製造コストの面から見直され、1969年の秋にボックス断面の鋼管スペース・フレームに変更される。
1970年になると「Marcos 3litre GT」は需要の大きかった北アメリカの排ガス規制に合わせるため、輸出用として元々触媒装置のあったVOLVO164用3リッター直列6気筒エンジンを搭載したモデルを製造した。また、少数だがTriumph3リッター直列6気筒エンジンを積んだ車も製造されている。
これらのモデルは「キット・カー」としても販売され、自分自身で車を組み立てる事で購入者が比較的安価で購入できるシステムも取り入れられていた。
Marcosは後に述べる「Mini Marcos」も含め、キット・カー・メーカーとしても確立したのだった。
同じく1970年、Marcosは新設計の4シーター・スポーツを発表する。この車は「Mantis」と名付けられ、元ロータスに在籍していたブライアン・カニントンが鋼管スペース・フレームを設計した。ボディーのデザインはデニス・アダムス。エンジンは Triumph TR6用2.5リッター[直列6気筒]エンジンが組み込まれた。
ちなみにこのMantisは、アダム兄弟がデザインした「Adam Probe 15」に端を発し（映画「時計じかけのオレンジ」に登場している。）、1968年のスパ1000kmに参戦したMarcos唯一のミッドシップ・レーシング・カー「Marcos Brabham」（Mantis XP）の流れを汲んでいる。
そしてこの1970年、Marcosはイギリスで大企業ではない自動車のスペシャリストとして1位を獲得している。
[編集] 倒産
元々工場工場のあったウィルトシャー州エイヴォンから程近いウェストベリーに工場を移動、拡張し、週に6～10台の生産を計画したマーコスだったが、アメリカとイギリスとの貿易関係の悪化、工場再建が遅れた事によって減産を余儀なくされてしまう。元々縮小していた本国イギリス市場も開拓する事ができなかった上に、4シーター・スポーツ「 Marcos Mantis」の開発費が仇となり、ついに1972年、Marcosは倒産してしまう。
しかしジェム・マーシュはMarcosのスペア・パーツの生産、販売の権利を残し、修理工場を構え、ビジネスを続けた。
[編集] 再起
それまで生産したマーコスのオーナーを相手に細々とビジネスを続けたジェム・マーシュだったが、1976年に「Marcos」の権利を再び手中に収めることに成功する。
以前の「型」を使って再生産された車だけに特別変化した部分はなく、ボディーのデザインもほぼ以前のままだった。シャシーも過去に設計された鋼管スペース・フレームに既製のFORD2リッターエンジンや3リッターエンジン等を乗せるだけの手法だったが、チューンされたエンジンがオプションとして用意され、年々改良も進められた。
1982年にはバーミンガム・モーター・ショーに「Marcos 3litre GT」を出展している。
それから2年後の1984年、元々の鋼管スペース・フレームにROVER3.5リッターV8エンジンを搭載した「Macos Mantura」を発表する。
さらに2年後の1986年、「Marcos Mantura」のオープン・カー、Mantura Spyderを発表。
以後のシリーズにオープン・モデルの「Spyder」がライン・アップされるようになる。
そして1991年、この「Mantura」、「Mantura Spyder」のエンジンはROVER3.9リッターV8に変更された。200psを発生したと言われている。
ちなみにこのROVER V8エンジンの素材はアルミ合金で、大排気量のエンジンにもかかわらず軽量コンパクトだったため、Marcosの他にもTVRやMorganも採用した。
この頃、バブル経済だった日本で発足した輸入元「Marcos Japan」によって「Mantura」、「Mantura Spyder」が合わせて30台ほど輸入され、西日本代理店の京都「スギモトオート」、東日本代理店の横浜「マルヴァーン＆アビンドン」を通して販売されたが販売実績は定かではない。 「チェッカーモータース」も数台輸入、販売した。
「Marcos Japan物」と「チェッカーモータース物」とではクーラーの取り付け位置等、多少仕様の違いがあったようだ。
同年1991年、Marcosはキット・カー「Marcos Martina」を発売する。 これはスタイリングこそManturaとほぼ同じだったが、エンジンをはじめコーティナ用のパーツを多く流用した車だった。
「Mantura」と「Martina」は1993年まで製造されている。
1992年、「Mini Marcos」、「Marcos Martina」共にMarcosがキット・カー事業から撤退する事で生産中止となる。
同年、「Marcos Mantara」を発表する。「Mantara」は「シーラカンス」と比喩された「Mantura」の正常進化型と言え、エンジンはROVER3.9リッターV8のままだったが新型の鋼管スペース・フレームが採用された。
[編集] レース復帰
1993年になるとレース参戦復帰をかけて「Mantara」のル・マン24時間耐久レース・スペシャルとも言えるMarcos LM400、LM500、LM600を続け様に発表する。
これらの車はレース参戦のホモロゲーションを獲得するために市販化され、LM400はROVER3.9リッターV8、LM500はROVER5リッターV8、LM600はChevrolet6リッターV8エンジンを搭載した。
ホモロゲーションを獲得したこれらの車はル・マン24時間耐久レースとBRTC GT選手権、全日本GT選手権に参戦している。
1997年に、「Marcos LM」シリーズの進化型「Macos Mantis」、「Marcos Mantara」の進化型「Marcos GTS」を発表。
このMantisはネーミングこそ1970年に 発表された4シーター・モデルと同じだが、FORD・コブラ・V8（FORDクァッド・カム 4.6リッター）エンジンを搭載した2シーター・モデルで325psを発生、0-60マイル加速は4秒とアナウンスされた。ボディーのデザインは巨大なエンジンをフロントに収めるために、カウルとタイヤ・ハウスは大きなアーチを描き、挑発的で戦闘的なスタイルになった。
この独特のスタイルはイギリスのレースで注目され、人気を集めた。
「MarcosGTS」は「Mantis」のシャシーを利用した派生モデルだが、一回り小さいボディーサイズで、実質Mantaraの後継車の役割を果たした。搭載されるエンジンはROVER2リッターエンジンで、これにターボチャージャーを追加して200psを発生するモデルも登場した。
1999年、Mantisは進化し、「Mantaray」となる。
MantarayのシャシーはMantisと共通だが、ボディーは攻撃的なイメージが薄れたまったく新しい物に変わった。搭載されるエンジンは230psを発生するROVER4リッターV8と、オプションで340psを発生するROVER4.6リッターV8が選べた。
生産台数は4リッター・モデルが11台、4.6リッター・モデルが7台だった。
そして同年、Marcosは「Mantis GT」を製作する。
この車はMantisをベースとし、FORD・クァッド・カム4.6リッターV8にスーパーチャージャーを追加して500psを超えるエンジンを搭載。エキゾースト・パイプの太さは3インチにもなり、カーボンを多用したシャシーにレース用のブレーキとリア・フェンダーが取り付けられた、まさにコンペディショナルなモデルだった。
そしてこの車を最後にMarcosは再び債務超過に陥る。
2000年、ジェム・マーシュは「Marcos Sales Ltd.」ビジネスを休止する事になる。
[編集] 引退
2001年、元々Marcosのエンジニアだったローリー・マクマス（Rory McMath）は「Marcos Heritage Spares」を立ち上げ、「Marcos Sales Ltd.」の資産のを買収する。
この「Marcos Heritage Spares」はMarcos創立当時に至るまでの全ての権利を所有し、過去に製造されたモデルの部品の製造やアップ・グレード・パーツを製造する。
2002年、ジェム・マーシュはアメリカの支援者から融資を受け、「Marcos Engineering」として「Marcos Marcasite TS250」と名付けられた車をグッド・ウッド・フェスティバルで発表し、再び復帰することになる。
発表されたMarcasite TS250は「Marcos Mantaray」のシャシーに175馬力を発生するシボレー2.5リットルV6エンジンを搭載したもので、ボディーのデザインも伝統的なものだったが、従来、丸目4灯だったヘッド・ライトはプジョーの物が与えられて近代的な顔付きとなった。
この車を発表した後、ジェム・マーシュは引退を表明する。
[編集] 伝統との決別
2003年、名前から「Marcasite」が外され、「Marcos TS500」が発表された。
この車の開発を行ったのはジェム・マーシュ(Jem Marsh)に変わってMarcosのトップに立ったアラン・ウォレス（Alan Wallace）とマーク・ウォレス（Mark Wallace）。
ノーブル（Noble）でM12の開発プロジェクトに参加したアランとマークはMarcasite TS250のシャシーを改良し、エンジンは320ps発生するJavelin V8エンジンが搭載され、ボディーもTS500と比較して若干グラマラスなデザインに変更された。
しかし近代MarcosのアイコンだったROVERエンジンを採用しなかった事でMarcosオーナーたちの間で物議を醸す事になった。
[編集] 新生
新生Marcosとして「Marcos TSO」をオーストラリア・アデレードで発表。
これまでのモデルと違って何一つ前モデルから引き継がれない、まったくの新設計で経営破綻したROVERに変わって、350psバージョンと400psバージョン、2種類のChevrolet5.7リッターV8エンジンが積まれた。 Tony Stelligaが常務に就き、プロドライブ（Prodrive）が製作。 またデザインはTVRのデザイナーだった デーミヤン・マクタガート（Damian McTaggart）が担当している。
2005年、当初「TSO」はオープンモデルのみの生産だったが、クーペモデルも生産するようになり、オーストラリア仕様の「MarcosTSO GT」、そしてヨーロッパ向けの「Macos GT2」が発表。
2006年、「Marcos TSO GTC」、「MarcosTSO R/T Spyder」を発表。 各パーツを強化してエンジンも462psを発生する「パフォーマンス・パック」もオプションとして用意された。
初代ミニのドライブ・トレーンとサスペンション・ユニットを流用し、1966年のル・マン24時間耐久レースで英国車として唯一完走を果たしたFRPボディーの「ミニ・マーコス」が世界的に名を馳せ、日本では1990年代に再生産された「ミニ・マーコス」をチェッカーモータースが輸入したことでも知られる。
同じく1990年初頭に日本へ輸入されたモデルとして、鋼管スペースフレームのMarcos GT系シャシーにトライアンフのパーツを多用し、ローバー製3.9リッターV8エンジンを積んだFRスペシャリティー「マンチューラ」（Mantura）がある。 こちらはMarcos Japanが輸入元で西日本の代理店は京都のスギモトオート、東日本の代理店は横浜のマルヴァーン＆アビンドンだった。 チェッカーモータースも数台輸入した。
現在はイギリス・ワーウィックシャー州でMarcos Engineering Ltd.が存在し、プロドライブ（Prodrive）が、TSOを生産している。 日本代理店は存在しない。
[編集] 車種
- Mini Marcos
- Mini Jem
- リヒティジ
- Marcos GT
- Xylon
-
- Breadvan
-
- 1800GT
-
- 1500GT
- 1600GT
- 1650GT
- 2litre GT
- 3litre GT
- Mantis XP
- Mantis（4seater）
- Mantura
- Martina
- Mantara
- GT LM5400/GT LM500/GT LM600
- GTS
- Mantis
- Mantaray
- Mantis GT
- Marcasite TS250
- TS500
- Marcos TSO
