ポルターガイスト現象
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ポルターガイスト現象あるいはポルターガイストとは、そこにいる誰一人として手を触れていないのに、物体の移動、物をたたく音の発生、発光、発火などが繰り返し起こるとされる、通常では説明のつかない現象[1]。心霊現象の一種[2]。
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[編集] 解説
物体の移動としては、主として建物内部に設置された家具や、家具内に収納された日用雑貨などが挙げられる。住人が就寝中に移動するものもあり、住民が起きている時に移動し、移動する過程が直接目撃されるものもある。激しく飛ぶこともあれば、ゆっくりと移動することもある。
電化した製品が普及した近年では、上記の諸現象と同時に、家電製品のスイッチが(リモコン装置も含め人が手を触れないままに)作動する現象などが起きることがある。例えば、テレビなどがリモコン装置も含め手を触れないままにオンになったり、チャンネルが勝手に変わっていったり、そもそもコンセントに差し込んでいないのにもかかわらず家電製品が作動しはじめる現象などである。[要出典]
「誰もいないのに音が鳴り響く」がといったラップ現象も、この現象の一つとして分類する研究者もいる。
[編集] 語源
「ポルターガイスト(Poltergeist)」とはドイツ語で、polter(騒がしい)+geist(霊)、すなわち「騒がしい霊」という意味の表現である[3]。
[編集] ポルターガイストとされている事例
- 1661年 - 1663年、イギリスのテッドワースで起きたポルターガイスト現象。治安判事のジョン・モンペッソンは放浪者ドリールを逮捕させ、ドリールから取り上げた太鼓を自分の屋敷に置いたが、それ以来太鼓の音が家中にこだまするようになった。さらに子供が空中に放り投げられたり、灰や排泄物がまき散らされたりするようになった、とされている[4]。
- 1741年 - 1747年(寛保から延享年間)のころ江戸で次のようなことが起きた、と1839年(天保10年)ごろに出版された東随舎(とうずいしゃ)の手による『古今雑談思出草紙(ここんぞうだんおもいでぞうし)』に記述がある、とされている。評定所書役(現在の裁判所書記官に相当)の大竹栄蔵が幼少のころ、栄蔵の父親が池尻村(現在の東京都世田谷区池尻)の娘を下働きにやとったところ、大竹家で不思議な現象が起こり始めた。天井の上に大きな石が落ちたようなものすごい音がしたり、行灯(あんどん、照明器具)がふいに舞い上がったり、茶碗や皿などの食器が飛んだり、隣の部屋に移動したりした。現象は次第にエスカレートしてゆき、ある日には、雇った男が台所の庭で石臼(いしうす)を使って玄米を精米する作業をしていて、ひと休みして煙草を吸っている間に、石臼が垣根を飛び越え、座敷の庭へと移動してしまっていた。栄蔵の父は連日怪音が続いていたので困り果てていたが、ある老人が怪現象のことを聞きつけて大竹家をたずねて来て、もしも池尻村の娘を雇っているなら村へ帰したほうがいい、という助言をしたので、その助言に従って帰したところ怪現象が止まった、とされている。[5]
- 1818年 - 1829年(文政年間)に書かれた『遊歴雑記(ゆうれきざっき)』の記述。ある与力が池袋村(現在の東京都豊島区池袋)出身の娘を下働きにやといいれたところ、家の中に石が降ったり、戸棚の中の皿・椀・鉢などがひとりでに外へ飛び出してこなごなに壊れたり、火鉢がひっくり返って灰かぐらになった釜の蓋が宙へ浮き上がるなどの現象が起きた、といった記述があるとされている[6]。
- 1967年、ドイツの「ローゼンハイム・ポルターガイスト」(Rosenheim Poltergeist)
- 1977年 - 1978年, 1980年、イングランドの「エンフィールド・ポルターガイスト」(Enfield_Poltergeist)
- 1981年、イングランド、バーミンガム、Ward Endの「ソーントン・ロード・ポルターガイスト」(Thornton Road poltergeist)
- 1984年8月、イングランドのチェスター近くのドドルストンで起きたポルターガイスト現象。コテージで発生した。騒音が起きたり、物体が飛んだりするという一般的なポルターガイスト現象が起きたうえに、「トーマス・ハーデンと名乗る霊のほか15の霊がコンピュータを通じて通信を送ってくるという現象も生じた。この通信はコンピューターを換えたり、ソフトをチェックしても続いた」という[7]。
- 1990年以降、スコットランド、エディンバーグの「マッケンジー・ポルターガイスト」(George Mackenzie参照可)。1990年からつい最近まで数百回におよぶ(まだ継続している可能性あり)。
- 1999年4月ごろから2000年暮れごろまで、岐阜県富加町の新築の町営住宅団地のいくつもの世帯で起きたポルターガイスト騒動。例えば、主婦が見ている前で、食器棚の(磁石で固定されるタイプの)扉が勝手に開いて中の食器が勢いよく飛び出し2メートルほど飛ぶ、という現象がおきたり、コンセントに差し込んでいないドライヤーから勝手に熱風が出たり、シャワーが勝手に出て止まる、といった現象が起こったと住民が訴えたが、富加町の調査ではそのような現象の発生は確認できず住民側と対立。一時期は24世帯のうちの10世帯ほどが避難する騒ぎになった。テレビ朝日のニュースステーションが正規のニュースとして取り上げ、現場にカメラが行き、住民らが経験した現象を生々しく語るのを生中継し全国に放送したのを始めとして、いくつかのテレビ番組で取り上げられたため、日本人には比較的広く知られている。[8]
- 2004年 - 2005年、イタリア、シチリア島で起きた現象(Canneto di Caronia fires)
[編集] 解釈
[編集] 古来の解釈
古来、西欧ではフェアリー(妖精)の類の小人のいたずらととらえ好意的に受け止める人々もいた[要出典]。また、悪魔の仕業、と恐れられたこともあった[要出典]。
[編集] 心霊主義的解釈
[編集] 超心理学的解釈
超心理学では超常現象として扱っている。 ポルターガイスト現象は、思春期の少年少女といった心理的に不安定な人物の周辺で起きるケースが多いとされており[1]、その人物が無意識的に用いてしまう念力(反復性偶発性念力 recurrent spontaneous psychokinesis RSPK)によるものという考えもある[9]。つまり、そういった能力を有する者が、無意識的に物を動かし「ポルターガイスト現象」を発生させてしまういう考えである。
[編集] 錯誤やイタズラ類とする解釈
- ポルターガイスト現象は「通常では説明のつかない現象」とされる[1]が、一方、テレンス・ハインズは科学的な調査の結果、霊現象と確認された例は皆無に近い、とする[10]。また、ポルターガイスト現象は基本的に目撃証言に依存しており、原因不明な事例であっても何十年も前のもの が多く、他の疑似科学に共通する特徴と同様に「肯定派が否定派の側に立証責任を求めていること」に問題がある、と述べている[10]。
[編集] イタズラ説
- ポルターガイスト現象の多くが思春期の少年少女の周辺で起こることについては、「ただ単にその年代の子供が悪戯を好むためではないか」という指摘があり[11][12]、実際にイタズラだと判明した例も存在する[11]。他にも、『悪魔の棲む家』はポルターガイスト事件のノンフィクションとされた小説だが、これは作家によるでっちあげと指摘された。
[編集] 錯誤説
[編集] 振動説
- 特命リサーチ200Xでは、ポルターガイスト現象を「建物や土地等に隠された問題点によって 振動や騒音が発生する現象」と位置づけていた[14]。例えば、1979年1月にイギリスのケンブリッジで起きた現象については、トイレの排水によるものであったとした[14]。
- 付近で発生した超音波や低周波あるいは高周波電流などの影響が疑われるケースがある[要出典]、とする説。
- 富加町のポルターガイスト騒動では、住宅内の異音 (ラップ音)については「水道管から響くウォー ターハンマー音」ではないかという指摘がある[13]。
[編集] ポルターガイストをテーマにした作品
[編集] 出典・脚注
- ^ a b c 笠原敏雄 『大百科事典:ポルターガイスト』13巻、平凡社、1985年、初版、p.1163。
- ^ 『広辞苑:ポルターガイスト』 岩波書店、1998年、第五版。
- ^ 現象の多くの特徴を比較的うまくとらえた表現なので、各国語でこの表現が定着している。英、フランス、スペイン、ロシア.....など各国語ですべてPoltergeistとほぼ同一の表記をしている。中国語では「騒霊現象」。日本語でもまれに「騒霊」と表記することがある。
- ^ 羽仁礼『超常現象大事典』 成甲書房,2001,ISBN 4880861154の「テッドワース現象」の項目
- ^ 『日本史怖くて不思議な出来事』PHP研究所,2006, ISBN 4569657036, pp.156-158
- ^ 『日本史怖くて不思議な出来事』PHP研究所,2006, ISBN 4569657036, p.159
- ^ 羽仁礼『超常現象大事典』 成甲書房,2001,ISBN 4880861154の「チェスターのポルターガイスト」の項目
- ^ 住民以外の第3者は具体的なポルターガイスト現象の発生を確認しておらず、ニュースとなったのはあくまでも「住民の起こした騒動」であることに注意が必要である。『新・トンデモ超常現象56の真相』 の「岐阜県富加町のポルターガイスト事件は本物!?」の項では、著者の1人である加門正一が騒動が起きていた当時の現地の様子を野次馬視点からレポートしている。
- ^ ウィリアム・ロル『恐怖のポルターガイスト』坂斉新治訳 ボーダーランド文庫、角川春樹事務所(1998年)ISBN 9784894563780、
- ^ a b テレンス ハインズ 『ハインズ博士「超科学」をきる―臨死体験から信仰療法まで〈Part2〉』 化学同人、1995年、p.13。ISBN 9784759802900。
- ^ a b 皆神龍太郎・山本弘、志水一夫 「家具が宙を舞う!ポルターガイストは実在する!?」『トンデモ超常現象 99の真相』 洋泉社、1997年3月。ISBN 978-4896912517。
- ^ テレンス ハインズ 『ハインズ博士「超科学」をきる―臨死体験から信仰療法まで〈Part2〉』 化学同人、1995年、p.12。ISBN 9784759802900。
- ^ a b 伊藤猛 (2000-10-03). "説得力ある“ウォーターハンマー説”" 徹底検証!パニックin幽霊住宅~岐阜ポルターガイスト現象~. 2008年3月7日閲覧.
- ^ a b 日本テレビ (1997-11-23). "ポルターガイスト現象の正体を追え" F.E.R.C Research Report. 2008年3月7日閲覧.
[編集] 関連文献
- ジェームズ・カーン 『ポルターガイスト』 広瀬順弘訳、角川書店、1982年。ISBN 978-4-04-779903-5。
- つのだじろう 『ついに霊魂をとらえた!―ポルターガイストは実在する』 サンデー社、1982年。ISBN 4882030179。
- コリン・ウィルソン 『ポルターガイスト』 青土社、1991年。ISBN 4791751531。
- ウィリアム・ロール 『恐怖のポルターガイスト』 角川春樹事務所、1998年。ISBN 4894563789。
- G.Roll, William (2003). “Poltergeists, Electromagnetism and Consciousness” (PDF). Journal of Scientific Exploration Vol.17 (No.1).
- と学会 『トンデモ超常現象99の真相』 山本弘、志水一夫、皆神龍太郎、洋泉社、1997年。ISBN 4896912519。
- 皆神龍太郎、志水一夫、加門正一 『新・トンデモ超常現象56の真相』 太田出版、2001年。ISBN 4872335988。
- テレンス ハインズ 『ハインズ博士「超科学」をきる PartII 臨死体験から信仰療法まで』 化学同人、1995年。ISBN 9784759802900。