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フランケンシュタイン - Wikipedia

フランケンシュタイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

フランケンシュタイン(Frankenstein)は、メアリー・シェリー1818年3月11日に匿名で出版した小説『フランケンシュタイン、すなわち現代のプロメシュース』(Frankenstein: or The Modern Prometheus)に主人公として登場するスイス科学者の名前である。今日では1831年の改訂版が出回っている。

目次

[編集] 概要

文学
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電気刺激により人造人間に生命を与えるというアイデアは、筋肉が電気刺激により痙攣することを発見したルイジ・ガルヴァーニの実験(1791年)から得たと言われている。このような科学技術を背景とする着想が見られることなどから、多くの作家や評論家たちが、この小説を最初のSF小説としている。

しばしば誤解されるが、フランケンシュタインは人造人間の名前ではなく、それを作った科学者(ヴィクター・フランケンシュタイン)の姓である。映画漫画に登場する人造人間が、フランケンシュタインと呼ばれることが多いが、正確にはフランケンシュタインの怪物(Frankenstein's monster)、あるいは、フランケンシュタインの創造物(Frankenstein's creature)である。日本ではこの経緯を知っている者は、前者で呼ぶことが多い。この人造人間が、固有の名前を持っていないのは、フランケンシュタインが、名前を付けなかったためである。

ストーリーに込められたメッセージ性などからたびたび映画化されているが、人造人間の容貌が醜いとされることから、原作でのその繊細な側面は無視され、知性の低いモンスターとして扱われ、また後世にはパロディ化されている。フランケンシュタインの怪物をモチーフとしたキャラクターは多くの作品に登場しており、狼男吸血鬼と並べ世界三大怪物、ミイラ男を含めて四大怪物とする見解もある。

なお、後の映画作品などでフランケンシュタインが博士とされていることもあるが、原作では一介の学生であり職業科学者ではない。


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


[編集] ストーリー

スイスの名家出身の青年、ヴィクター・フランケンシュタインは科学者を志し故郷を離れてドイツで自然科学を学んでいた。だがある時を境に彼は、生命の謎を解き明かし自在に操ろうという野心にとりつかれる。狂気すらはらんだ研究の末、フランケンシュタインは『理想の人間』の設計図を完成させた。そして彼は、それが神に背く行為であると自覚しながらも計画を実行に移す。自ら墓を暴き人間の死体を手に入れ、それをつなぎ合わせることで人造人間の創造に成功した。

しかし誕生した人造人間は、優れた体力と人間の心、そして知性を持ち合わせていたが筆舌に尽くしがたいほど容貌が醜かった。そのあまりのおぞましさにフランケンシュタインは絶望し、人造人間を残したまま故郷のスイスへと逃亡する。だが人造人間は強靭な肉体を与えられたがために獣のように生き延び、野山を越えて遠く離れたフランケンシュタインの元へ辿り着いた。自分の醜さゆえ自己の存在に悩む人造人間は、フランケンシュタインに対して自分の伴侶となり得る異性の人造人間を一人造るように要求する。人造人間はこの願いを叶えてくれれば二度と人前に現れないと約束するが、更なる人造人間の増加を恐れたフランケンシュタインはこれを拒否してしまう(フランケンシュタイン・コンプレックスの項目を参照)。創造主たる人間に絶望した人造人間は、復讐のためフランケンシュタインの弟・友人・妻を次々と殺害。憎悪にかられるフランケンシュタインは人造人間を追跡するが、北極に向かう船上で息を引き取る。そして創造主から名も与えられなかった人造人間は、怒りや嘆きとともに氷の海に消えた。

[編集] モデル

「フランケンシュタインは18世紀に実在し、人体実験の内容を日記に残した」というふれこみの本(『フランケンシュタインの日記』学研から邦訳あり)が刊行されているが、明らかに贋作である。日記によれば、墓場などから臓器を持ち出し、日夜人体実験に勤しんでいたらしい。しかし、その実験結果と人物のその後は日記が途絶えているために謎である。家系は元々ドイツの北ババリアフランケン地方)の領主であったらしいが、十五世紀、新教徒迫害から逃れるためにスイスへ亡命したという。また、フランケンシュタイン城にまつわる伝説がモデルであったともされるが、こちらも議論の余地がある。

[編集] 文献

[編集] 原著邦訳

  • 山本政喜訳『巨人の復讐 フランケンシュタイン』(『世界大衆文学全集』第11)、新人社、 1948年
  • 宍戸儀一訳『フランケンシュタイン』(『サスペンス・ノベル選集』第4)、日本出版協同、1953年
  • 山本政喜訳『フランケンシュタイン』改版、角川文庫、 1968年、1994年
  • 臼田昭訳『フランケンシュタイン』(『ゴシック叢書』6)、国書刊行会、1979年
内容: フランケンシュタイン、変身、寿限有の寿限無/シェリー夫人の生涯と作品(臼田昭著)
解説新藤純子、年譜あり
  • 菅沼慶一訳『フランケンシュタインあるいは現代のプロメシュース』共同文化社、2003年ISBN 4877390871

[編集] 関連文献

  • モネット・ヴァカン著(辻由美訳)『メアリ・シェリーとフランケンシュタイン』、パピルス、1991年11月25日。ISBN 493816504X
    • 年譜: p234 - 235、参考文献: p236 - 242、原著: Monette Vacquin, Frankenstein: ou les délieres de la raison, François Bourin, 1989; 4 août 1994: ISBN 2876860287
  • ヒューバート・ヴェナブルズ編(大瀧啓裕訳)『フランケンシュタインの日記』、学習研究社、1995年2月、ISBN 4054004938
  • 佐倉統著『フランケンシュタインの末裔たち-人工生命のワンダー・ワールド』、日本経済新聞社、1995年10月。ISBN 4532161738
  • メアリー・シェリーほか著、風間賢二編『フランケンシュタインの子供』(『角川ホラー文庫』)、角川書店、1995年1月。ISBN 4042710026
    • フランケンシュタインに関するアンソロジー集: メアリー・シェリー著、臼田昭訳『変身』/ メアリー・シェリー著、安野玲訳『よみがえった男』/ハーマン・メルヴィル著、杉浦銀策訳『鐘塔』/ジェローム・K.ジェローム著、井上一夫訳『ダンシング・パートナー』/E.E.ケレット著、田中誠訳『新フランケンシュタイン』/H.P.ラヴクラフト著 片岡しのぶ訳『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』/ウィリアム・ハールバット著 風間賢二訳『フランケンシュタインの花嫁 ジョン・L.ボルダーストーン』/レスター・デル・リイ著、福島正実訳『愛しのヘレン』/ジョン・コリア著、中西秀男訳『腹話術奇談』/ハリー・ハリスン著、安野玲訳『ついに明かされるフランケンシュタイン伝説の真相』/ロバート・ブロック伊藤典夫訳『プロットが肝心』/カート・ヴォネガット・ジュニア著、池沢夏樹訳『不屈の精神』
  • 新戸雅章著『逆立ちしたフランケンシュタイン 科学仕掛けの神秘主義』、筑摩書房、2000年1月、ISBN 4480860541
  • ジョン・ターニー著(松浦俊輔訳)『フランケンシュタインの足跡-バイオテクノロジーと現代の神話』、青土社、1999年8月。ISBN 4791757467
    • 原著: Jon Turney, Frankenstein's Footsteps: Science, Genetics and Popular Culture, Yale University Press, 1998. ISBN 0300074174, Oct 2000 (New Edition), ISBN 0300088264
    • 原著:Hubert Venables, The Frankenstein Diaries,Hutchinson, 1980. ISBN 0091426707
  • スティーヴン・バン編(遠藤徹訳)『怪物の黙示録 『フランケンシュタイン』を読む』、青弓社、1997年8月。ISBN 478729122X
    • 原著: Stephen Bann, Frankenstein, Creation and Monstrosity - Critical Views, Consortium Book Sales & Dist, 1995. ISBN 0948462590 ; Oct 1997, ISBN 0948462604
  • 久守和子、中川僚子(共著)『フランケンシュタイン』ミネルヴァ書房、2006年12月、ISBN 4623046885
  • クリス・ボルディック著(谷内田浩正・山本秀行・西本あづさ訳)『フランケンシュタインの影の下に』(高山宏編『異貌の19世紀』)、国書刊行会、1996年4月。ISBN 4336034958, [1]
    • 原著: Chris Baldick, In Frankenstein's Shadow: Myth, Monstrosity, and Nineteeth-Century Writing, Oxford, Clarendon Press, 1987.
  • 吉田純子『身体で読むファンタジー フランケンシュタインからもののけ姫まで』人文書院、2004年12月、ISBN 4409240714
  • J=J・ルセルクル著(今村仁司・澤里岳史訳)『現代思想で読むフランケンシュタイン』(『講談社選書メチエ』105)、講談社、1997年5月。ISBN 4062581051
    • 原著: Jean-Jacques Lecercle, Frankenstein : Mythe et Philosophie, Paris, Presses Universitaires de France. ISBN 2130418724

[編集] 映画化・漫画化・アニメ化・ゲーム化

フランケンシュタイン(の怪物)そのものの映像化、および、それをモデル・モチーフにしたキャラクターが登場する作品。

[編集] 映画

この映画でボリス・カーロフが演じたものが、以後一般的な「フランケンシュタインの怪物」のイメージとなる。また、「飛び出した額、厚いまぶた、首のボルト」などの意匠はユニバーサル映画が版権を持っている。
  • フランケンシュタインの花嫁』(Bride of Frankenstein) 1935年(米)
  • フランケンシュタインの復活』(Son of Frankenstein) 1938年(米)
  • 『フランケンシュタインの幽霊』(The Ghost of Frankenstein) 1942年(米)
  • 『フランケンシュタインと狼男』(Frankenstein Meets The Wolf Man) 1943年(米)
  • 『フランケンシュタインの屋敷』(House of Frankenstein) 1944年
  • 『凹凸 フランケンシュタインの巻』(Bud Abbott and Lou Costello Meet Frankenstein) 1948年
  • 『怪人フランケンシュタイン/生きかえった死体』(I Was a Teenage Frankenstein) 1957年
  • フランケンシュタインの逆襲』(The Curse of Frankenstein) 1957年(英)
  • フランケンシュタインの復讐』(The Revenge of Frankenstein) 1958年(英)
  • 『怪物を造る男』(How To Make a Monster) 1958年(米)
  • 『フランケンシュタインの娘』(Frankenstein's Daughter) 1958年
  • 『フランケンシュタインの怒り』(The Evil of Frankenstein) 1964年(米)
  • 『ジェシー・ジェームスとフランケンシュタインの娘』(Jesse James meets Frankenstein's Daughter) 1965年
  • フランケンシュタインの逆襲』(Frankenstein Meets The Space Monster) 1965年(米)
  • フランケンシュタイン対地底怪獣』 1965年(東宝)
  • フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』 1966年(東宝)
  • 『フランケンシュタイン死美人の復讐』(Frankenstein Created Woman) 1967年(英)
  • 『フランケンシュタイン/恐怖の生体実験』(Frankenstein Must Be Destroyed!) 1969年(英)
  • 『*『フランケンシュタイン/娘の復讐』(Lady Frankenstein) 1971年(伊、米)
  • 『ドラキュラ対フランケンシュタイン』 (Dracula VS. Frankenstein) 1971年(米)
  • 『怪奇フランケンシュタイン』(Frankenstein) 1971年(米)
  • 『悪魔のはらわた/アンディ・ウォホールのフランケンシュタイン』(Flesh For Frankenstein) 1973年
  • 『フランケンシュタインと地獄の怪物』(Frankenstein and The Monster from Hell) 1974年(英)
  • ヤング・フランケンシュタイン』(Young Frankenstein) 1974年
  • 『ロッキー・ホラー・ショウ』(The Rocky Horror Picture Show) 1974年(英)
  • 『ブライド』(The Bride) 1984年(米)
  • フランケンウィニー』(Frankenweenie) 1984年(米)
  • 『幽霊伝説/フランケンシュタイン誕生秘話』(Haunted Summer) 1988年(米)
  • 『フランケンシュタイン桃色病院』(Frankenstein General Hospital) 1988年(米)
  • 『フランケンシュタイン 禁断の時空』(Frankenstein Unbound) 1990年(米)
  • 『フランケンフッカー』(Frankenhooker) 1990年(米)
  • 『ラスト・フランケンシュタイン』 1991年(松竹)
  • フランケンシュタイン』(Mary Shelly's Frankenstein) 1994年(英、米)
  • 『フランケンシュタインと僕』(Frankenstein and Me) 1996年(カナダ)
  • 『親指フランケン』 2002年(米)
  • 『ヴァン・ヘルシング (映画)|ヴァン・ヘルシング]]』(Van Helsing) 2004年(米)
  • 『デュカリオン』 2004年(米)

[編集] 漫画・アニメ・ゲーム

  • 『エンバーミング-DEAD BODY and BRIDE-』
  • 『エンバーミング-DEAD BODY and LOVER-』
  • 『エンバーミング -THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』
  • 武装錬金』 - 『エンバーミング』は『武装錬金』のスピンオフ的な作品であり、上記『THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』で語られたヴィクター・フランケンシュタインは本作のヴィクター・パワードと酷似している。

[編集] 実写ドラマ・特撮

  • 竜馬におまかせ!』 - 第7話 「文久二年のフランケンシュタイン」
  • 仮面ライダーX』 - 劇場版『5人ライダー対キングダーク』 - コウモリとフランケンシュタインを合体させた怪人、コウモリフランケンが登場する。
  • 仮面ライダーストロンガー』 - 第27・33・34話 デルザー軍団の改造魔人の一人、隊長ブランクはフランケンシュタインの子孫という設定。
  • 仮面ライダーキバ』 - 主人公に味方する怪人・ドッガが、フランケンシュタインという設定。
  • 秘密戦隊ゴレンジャー』 - 第49話 イーグルの開発した新鋭ロボット「フランケン1号」として、カーロフの怪物マスクに手を加えたロボットが登場。
  • 恐竜戦隊ジュウレンジャー』 - 第28~31話 フランケンシュタインをモチーフにした怪人ドーラフランケ、ゾンビフランケ、サタンフランケが登場する。
  • 魔法戦隊マジレンジャー』- 敵組織に、フランケンシュタインをモチーフにした凱力大将ブランケンが登場する。
  • 超人バロム1』 - 第2話 カーロフの怪物を顔のモチーフにしたフランケルゲが登場。
  • 変身忍者嵐』 - 第24・34・35話 西洋妖怪フランケンとして登場。石川賢の漫画版にも登場。
  • アクマイザー3』- 第27話に、カーロフ風の悪魔族フランゲンが登場。
  • 恐竜戦隊コセイドン』 - 第38話 カーロフ風の顔をした人造恐獣フランケンが登場。

[編集] 関連事項

[編集] 外部リンク


欧米では遺伝子組み換え食品をフランケンシュタインフード(あるいはフランケンシュタインフーヅ)と呼ぶ。


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