バキュームカー
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バキュームカーは、吸引機とタンクを装着した自動車(トラック)であり、公式には吸上車と称される。とくに汲み取り式便所での糞尿、浄化槽に貯まった汚泥の回収を行う。 バキュームカーは和製英語であり、日本固有の名称である。衛生車、糞尿収集車、くみ取り車などとも呼ばれる。
液体を吸引する働きから水害時や水道管破断などにおける溢水、汚水回収に活躍することもあり、その際は専用の(屎尿処理に用いていない)吸上車が使用される。
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[編集] 車両の概要
- 特種用途自動車(いわゆる8ナンバー車)の一つ。
- 後部には「積載物品 糞尿」と書かれてある。
- 汚物によるタンク部分の腐食が速く、使用開始後わずか数年で大概が廃車になってしまう。
- 最近ではタンクやホースを囲い、一見普通のトラックの様な外観になっている物も在る。
[編集] 歴史
バキュームカーは1951年(昭和26年)川崎市が全国に先駆けて開発・導入し、その後、衛生的であるとの理由で全国へ普及したとされている(村野まさよし著『バキュームカーはえらかった』文芸春秋1996年の記述から)。当初は、トラックの荷台にタンクを載せ、ホースを車体に巻きつける状況であったが、その後、電動のホース巻き取り装置が取り付けられるようになった。1980年代以降、下水道の普及により急速に姿を消したが、建設現場などの仮設トイレや下水道が完備されていない場所や山間部のトイレなど一定の需要はあり完全に消滅しているわけでもない。
なお、大正11年(1922年)7月14日付の時事新聞記事に、以下の記述がある。 "今度東京市衛生課では、特殊構造の屎尿吸揚タンク自動車を考案し、麹町区八重洲町セールフレーザー会社をして製作せしめ、試験の結果理想的成績を挙げたといふ"。続いてその仕組みについて詳述してあるが、"その大要を示せば・・・「タンク」内の空気を排除し、真空ならしめるもの・・・"とあり、実際にこれが使用されたかどうかは不詳だが、既にこの時代に原型はあったと言える。
[編集] 原理
バキュームカーの原理は、名称の通り、掃除機の様にタンク内を真空状態にし、タンク内へ空気もろとも汚物を吸い上げる。それゆえ開発当初は「真空車」と呼ばれた。「バキュームカー」はそれを横文字に直した名称である。
[編集] 英訳
冒頭でも触れているように、「バキュームカー」は和製英語であり、欧米ではおよそ通じない。和英辞典にはhoney wagonの訳語が掲載されていることもあるが、もっと一般的に"septic truck"又は"vacuum truck"と呼ばれる。バキュームカーの性能からnight-soil truck equipped with a vacuum hoseという説明的な訳を付ける例も存在する。
ウィキペディア英語版ではcesspool emptierという項目を設けているが、これは日本語にすると「真空汚水槽」と言ったところになる。また、この項目から紹介されている外部リンクによればvacuum tankという表現が見られる。こちらは「真空水槽」であり、用途を特に汚水処理には限定していない様子が窺える。
なお、アメリカにはCar Portable Vacuum Cleanerという製品は存在する。これはその名の通り、乗用車内清掃用のコンパクトサイズの掃除機である。
[編集] トピック
- 都市伝説の一つとして、ヤクザ同士の抗争やみかじめ料支払い拒否に対する嫌がらせとして、飲食店や風俗店の店内にバキュームカーの内容物を逆噴射させるという話がある。
- 2004年に発生したインドネシアスマトラ島沖地震の際の支援物資として、日本政府はスリランカに対して横浜市が所有していた9台の中古バキュームカーを供与している。
- TVアニメ、『ルパン三世』第16話『宝石横取り作戦』ではバキュームカーを使って、宝石店から密輸宝石を盗み出すシーンが登場する。だが、このシーンでの通行人の「汚い」という台詞が職業差別発言に当たるとして取り沙汰された。結果的には、大衆心理から考えて正当な発言であると見做され、回収、抹消という事態は避けられたがLDやDVDの収録では事情を解説する旨のテロップが流れる。
- 映画「トラック野郎 爆走一番星」では劇中のドタバタでタンクの内容物を放出してしまうシーンがある。
- 商店街の路地にはバキュームカーが入れないため、ホースを店内に入れて汲取式のトイレの汚物を回収した。
- 京阪電気鉄道では、1990年代後半まで大阪市内に所在する地下駅(天満橋駅など)のトイレの汲取りを、月に2回程度、バキュームカーを用いて実施していた。そのため、終電間際に寝屋川車庫発、始発列車前に寝屋川車庫行で電動貨車にバキュームカーを積載して走行する姿が見られた。
[編集] 書籍
- バキュームカーはえらかった!―黄金機械化部隊の戦後史 村野まさよし 文藝春秋 1996