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ゼニタナゴ - Wikipedia

ゼニタナゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

?ゼニタナゴ

東北地方産継代飼育個体(左右ともオス)
種の保全状態評価
絶滅危惧IA類 (環境省レッドリスト)
画像:Status jenv CR.png
分類
動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
亜門 脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
上目 骨鰾上目 Ostariophysi
コイ目 Cypriniformes
コイ科 Cyprininae
亜科 タナゴ亜科 Acheilognathinae
タナゴ属 Acheilognathus
ゼニタナゴ A. typus
学名
Acheilognathus typus
(Bleeker, 1863)
和名
ゼニタナゴ

ゼニタナゴ (銭鱮、Acheilognathus typus) は、コイ目タナゴ亜科に分類される淡水魚。

目次

[編集] 分布

太平洋側では神奈川県日本海側では新潟県以北の、青森県を除く本州が本来の分布域であるが、多くの地域で環境改変やオオクチバスの食害によりすでに絶滅している。最後の生息地となった東北地方の一部水域でも圃場整備やオオクチバスの違法放流が続いており、予断を許さない状況にある。かつて、霞ヶ浦からの二枚貝移植に随伴して一時定着したとされる諏訪湖天竜川水系のほか、琵琶湖でも確認記録がある。日本固有種

[編集] 形態

体長6-11cm程度。タナゴ類の間では最もウロコが細かく、銀色で黒く縁取られる。

繁殖期の雄は口先に追星が現れ、うすい桃色になるが、婚姻色の差は産地によって著しい。

[編集] 生態

河川の中・下流域で比較的流れの穏やかなところや、用水路、湖や沼などの中層、下層などに生息する。 遠浅で浮水植物が繁茂したような止水環境が本種の生息には最も適していると思われる。かつての基幹生息地であった霞ヶ浦伊豆沼の環境がまさしくそうであった。数百から数千という大きな群れを作り、浅瀬を回遊していたという。

食性は雑食であるが、植物食性が強く、通常は付着藻類を好んで食べる。

繁殖形態は卵生で、多くのタナゴ類は春に産卵するが本種はカネヒラやイタセンパラと同様秋産卵型であり、9-11月頃にイシガイ、カラスガイ、タガイ、ドブガイなどの鰓葉内に産卵し、仔魚は翌年の春4-5月頃に貝から外に出る。

[編集] 人間との関係

かつては東京近郊の小合溜(東京都葛飾区等)、手賀沼(千葉県柏市我孫子市等)、霞ヶ浦(茨城県南部)などにも大量に生息していた。中村守純著「日本のコイ科魚類」には、1950年、足立区西新井での採集記録があり、このエリア一帯のクリーク中川水系や前述小合溜とも繋がる。東京北東部から関東平野一円に長閑な水郷風景が広がっていた時代には、本種が生息していたことになる。つくだ煮など食用にも供された他のタナゴ類よりも苦みが強く、手賀沼などでは鶏の餌としていた記録がある。タナゴ類は味が苦いことから、苦鮒(ニガフナ)とも呼ばれる。英語圏でも同様の意味で、タナゴ類はビターリングと呼ばれている。ゼニタナゴを指す方言として「ニガビタ」「ヤスリメ」(群馬)「オカメ」(釣り人用語)などがあった。

第二次世界大戦後、特に高度経済成長期を境として、都市近郊での埋め立て開発や農村における圃場整備の進行による生息地の破壊、さらには1980年代以降ルアー釣りブームとともに一部の心ない釣り人によって行われているオオクチバスブルーギル外来魚の違法放流による食害により、生息数は激減している。

茨城県霞ヶ浦では、流域の急激な都市化に伴う水質汚濁や、コンクリート護岸化に伴う抽水植物帯の激減などの環境改変により生息数を減らしていたところへ、とどめをさすように外来魚の食害が加わり、1990年代初頭を最後にまとまって本種を確認することはできなくなっている。特に2000年代になってからの本種の正式な確認例は流入河川を含めまったくなく、地域社会でも危機感を募らせているが、すでに野生絶滅した可能性が高い。地域個体群を何とか次代に繋げようという取り組みとして、2007年、遠く琵琶湖博物館において系統保存されていた霞ヶ浦産の個体群のうち50個体が里帰りを果たし、将来は再び自然繁殖できるよう、関係機関や閉鎖ビオトープなどでの繁殖が試みられている。

東北地方の生息地は、小さなため池とそれに続く素掘りの用水路がほとんどであるが、ここでもオオクチバスの違法放流が相次ぎ、放流(バス発見)後2~3年で確実に本種を絶滅に追いやっていると考えられる。また、圃場整備事業がすでに決定あるいは進行している生息地もあり、行政等関係者の良識ある配慮が急がれている。比較的近年まで本種が確認できた伊豆沼(宮城県栗原市)では、1990年代中ごろにサイズが揃った小型のオオクチバスが確認され、1999年頃にはタナゴモツゴ等他の小型コイ科魚類とともに本種が激減、現在でも復活の兆しはない。伊豆沼ではバスの駆除に向け、人工産卵床を多数設置し、産卵後に引き上げる、あるいはヨシ際に浮上した稚魚を一斉にさらうなどの取り組みを懸命に続けているが、心ない何者かが人工産卵床を破壊して回るなどのできごとも報告されている。

2007年8月、環境省レッドデータブックでは、本種の置かれた危機的状況から従来の絶滅危惧IB類指定を見直し、IA類への格上げを公表している。

現状の生息地は全国で10か所程度であり、その絶滅危険性は、特別天然記念物に指定されているミヤコタナゴなどを上回る危機的状況にあると考えられている。しかし、ネット通販オークションへの出品、ペットショップでの取扱等、飼育目的の販売もあるのが現状である。興味本位で野生個体を採集したり、売買を問わず商業的に本種を利用することを行わないことが求められている。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 『ヤマケイポケットガイド17・淡水魚』山と渓谷社、2000年、110項
  • 『ポケット図鑑 川・湖・池の魚』成美堂出版、1994年、49項
  • 『タナゴのすべて』マリン企画、2004年、36項


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