ジョン・レノン対火星人
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『ジョン・レノン対火星人』(ジョン・レノンたいかせいじん)は、1983年10月に雑誌「野性時代」に掲載され、1985年1月に角川書店より単行本として刊行された高橋源一郎の小説である。
1988年10月に新潮文庫より刊行され、それが長らく絶版状態だったが、2004年4月、講談社文芸文庫より刊行された(ISBN 4061983652)。
高橋が、第一作として群像新人文学賞に応募して落選した『すばらしい日本の戦争』を少し書きかえて発表したもの。
目次 |
[編集] サブタイトル
- 序章 ポルノグラフィー
- 1章 「すばらしい日本の戦争」
- 2章 十九世紀市民小説
- 3章 リアルなものはあらずや?
- 4章 「気のせいですよ、きっと」
- 5章 同志T・O(テータム・オニール)
- 6章 愛のレッスン
- レッスン(1)~(35)
- 終章.追憶の一九六〇年代
- レッスン(36)~(53)
- エピローグ
[編集] 登場人物
- 語り手の「わたし」
- ポルノ小説家で、パパゲーノと共同生活を営んでいる。出所した「すばらしい日本の戦争」の身柄引き受け人に、突如されてしまい、治療に取り組む。
- 「マザー・グース大戦争」の被告として以前東京拘置所に拘置されていた。
- すばらしい日本の戦争
- 「花キャベツカントリー殺人事件」を起こした「花キャベツカントリー党」のリーダー。
- 頭の中に死躰が取り付き、常々「深淵」に襲われ、苦しむ。
- T・O(テータム・オニール)
- 愛称ティミィ。熊本大教育学部音楽科中退。トルコ「ハリウッド」の№1ホステス。
- 「マザー・グース大戦争」の被告として福岡刑務所に拘置されていた。154cm、38㎏。「すばらしい日本の戦争」に性交を提供する。
- パパゲーノ
- 「わたし」の共同生活者。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
ポルノ作家の「わたし」は、書いた自分の頭をも、うんざりさせてしまうような作品ばかり書いて暮らしている。そんなある日、「すばらしい日本の戦争」という人物からの葉書が届く。そこにはたくさんの死躰たちが描かれていた。そして、「すばらしい日本の戦争」が突如「わたし」の家にやってくる。彼は事情を全く説明できず、ただ時々死躰のことを口走るのみだ。「わたし」は何とかして彼の頭から死躰を追い出すべく試みていく。
さまざまなことを試したが一向に効果が上がらない。そんな時、「わたし」は、彼に性交を提供することを思い立つ。トルコ「ハリウッド」の№1ホステスであるT・Oの元へ彼を連れて行き、レッスンは始められた。しかし「すばらしい日本の戦争」はいつまで経ってもT・Oに性的欲望を示さない。逆に彼の頭の中の死躰はますます暴れだすようになってしまった。彼の誕生パーティーの最中、発作を起こした彼に、「わたし」は最後の手段を取る。
「わたし」は「すばらしい日本の戦争」に『あなたはきちがいのまねをしているだけ』と通告してしまう。うたたねをした後、「すばらしい日本の戦争」は「僕は治った」と喜びの声を上げるが、「わたし」は、完全に失敗してしまったとうろたえることになった。そして「わたし」たちは「すばらしい日本の戦争」の遺躰を焼く火葬場にいた。
[編集] 『きちがい』という言葉の削除
2004年4月講談社文芸文庫から再刊された際、『きちがい』という言葉が別の単語に置き換えられている。
- 6章 愛のレッスン - レッスン(35)
- 終章 追憶の一九六〇年代 - レッスン(38)
-
- 文芸文庫版 P.182 L13
- ぼくは気が狂ってはいない、
- 新潮文庫版 P.182 L11
- ぼくはきちがいではない、
-
- 文芸文庫版 P.183 L1
- 気が狂っていることより遥かに困難な問題だった。
- 新潮文庫版 P.182 L13
- きちがいであることより遥かに困難な問題だった。
- レッスン(39)
-
- 文芸文庫版 P.183 L3
- 気の狂った人間がタバコを喫(の)むのかどうか
- 新潮文庫版 P.184 L2
- きちがいがタバコを喫むのかどうか
-
- 文芸文庫版 P.183 L6
- 「気が狂ってもタバコは喫むもんです」
- 新潮文庫版 P.184 L5
- 「きちがいだってタバコは喫むんです」
巻末には『身体・職業等に関する表現で不適切と思われる箇所がありますが、時代背景と作品価値を考え、そのままにしました』とあり、『きちがい』以外の言葉に対するフォローをしている。