クロルプロマジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。 |
クロルプロマジン | |
---|---|
分子式 | C17H19ClN2S•HCl |
分子量 | 355.33 g/mol |
CAS登録番号 | [50-53-3] |
形状 | 白色の結晶 |
融点 | 194–198 °C |
クロルプロマジン(Chlorpromazine)は、フランスの生化学者アンリ・ラボリ(Henri Laborit,1914-1995)が1952年に発見した精神安定剤である。「クロルプロマジン」はINNの一般名で、化学名は2-chloro-10[3(-dimethylamino)propyl]phenothiazine、化学式はC17H19ClN2S•HCl、CAS登録番号は50-53-3。メチレンブルー同様、フェノチアジン系の化合物である。一塩酸塩が医薬品として承認され利用されている。
目次 |
[編集] 沿革
1950年、フランスの製薬会社ローヌ・プーラン社(Rhône-Poulenc,現サノフィ・アベンティス)により抗ヒスタミン薬として開発されたものの、鎮静作用が強すぎる上、抗ヒスタミン作用が少ないと当時は評価された(整理番号は4560RP)。
ドパミン遮断剤のほか、古くからヒベルナシオン(hivernation)という麻酔前投与剤として知られていたが、この薬効がドパミン遮断効果(その作用機序は、脳内の中枢神経系で興奮や妄想を生み出すと想定される神経伝達物質ドパミンのD2受容体の回路を遮断する事にある)を有することは、ラボリの発見まで知られていなかった。
約12.5 mg程度で乗物酔の防止効果と悪心の防止効果を生じ、精神神経疾患に対しては、アメリカでは1,000 mg / 日程度の所謂『1キロ投与』の統合失調症の障害治療に発明当初から広く使用された。ヒベルナシオンとしての麻酔前投与も古くから行なわれ、この用途では前記発明以前から知られていた。日本では、クロルプロマジンの迂回発明が大阪地方裁判所(昭35.9.11言渡:判例時報162号23頁)で認められ、吉冨製薬がその迂回発明に拠る製法特許を取得し、市場の西半分は吉冨製薬の「コントミン」が占有し販売されている。サンド社(SANDOZ、現ノバルティス)の輸入品は「ウインタミン」(塩野義製薬取次)の商標を使用している。
クロルプロマジンの発明が病院の神経科の「閉鎖病棟」を開放する大きな動機づけとなったことは良く知られている。ドパミン遮断薬としては最も歴史が古く、その塩の成分により、前者の迂回発明による吉冨製薬迂回製法によるクロルプロマジン剤と塩野義製薬の正規輸入クロルプロマジン剤とで多少の差異があるものの、薬効には差異はみられない。なお、吉冨製薬(現「三菱ウェルファーマ」)はこの当事者系特許侵害訴訟(塩野義製薬が原告で請求棄却)に勝訴し、日本でのクロルプロマジンのシェアを寡占状態近くにまでのばし、旧来の一流製薬企業に比肩することになった。
[編集] 効能
[編集] 投与にあたっての留意点
重要な副作用は、パーキンソン症候群である。初期は、手がふるえ、綺麗な文字(書道)が筆記できなくなり、くずした文字の日本語しか書けなくなり、痙攣(震顫)が各部に生じ、横隔膜の痙攣(「しゃっくり」)等をも生ずることが報告されている。美容上では、「色素沈着」等が生じ、「そばかす状」の「汚点」等が生じ、眼科では、網膜に色素沈着が生ずることも知られている。おおむね、活力が減退し、「意志」の力が減退する。また、外的なストレスに弱くなり、内部に「ストレス」が蓄積される。「抗パーキンソン薬(ビペリデン「biperiden」[商標:アキネトン、タマモリン、ビカモール])」をクロルプロマジンと同時に投与(1mg/日、から3-6mg/日)する方法で、前記の「パーキンソン病」を防止することができるが、最悪は「遅発性ジスキネジア」のビペリデン「biperiden」のリバウンドを防ぐことができないので、「抗パーキンソン薬」を安易に投与することは慎むべきである。それよりも、投薬量をなるたけ少なくするよう、患者も医師も努め、パーキンソン症候群のリバウンドを生じさせないように留意されたい。)
[編集] 重大な副作用
[編集] 併用禁忌
アドレナリンの強心作用を逆転させ、重篤な低血圧発作を引き起こすことがある。
アドレナリンはアドレナリン作動性α・β-受容体の両方を作用し効用を発揮するが、クロルプロマジンにはα-受容体遮断作用があり、アドレナリンのβ-受容体への作用が優位となり、重篤な低血圧発作を引き起こすことがある。