クラシック (ロードレース)
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クラシック (Classic) とは、ヨーロッパ各地で開催されている ロードレースの形態の一つである「ワンデーレース(シングルデーレース)」(1日で競技を終了するレース)のなかで、特に長い歴史を持ち、高い格式を誇るレースを指す。ツール・ド・フランスのように複数日にわたって行われる「ステージレース」は、いかに歴史や格式があってもクラシックとは呼ばれない。
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[編集] 概要
ロードレースにおける「クラシック」とは、通常「ミラノ〜サンレモ」「ロンド・ファン・フラーンデレン」「パリ〜ルーベ」「フレッシュ・ワロンヌ」「アムステルゴールドレース」「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」「ヴァッテンフォール・サイクラシックス」「パリ〜ツール」「チューリッヒ選手権」「ジロ・ディ・ロンバルディア」の10レースを指して使われる言葉である。[1]
ただし広義では「クラシカ・サンセバスティアン」や「ヘント〜ウェヴェルヘム」「オムロープ・ヘット・フォルク」のように有名な大会ではあるが比較的歴史が浅いなどの理由で「セミクラシック」と呼ばれるワンデーレースも含めて「クラシック」と呼ぶ。
ミラノ〜サンレモは「プリマヴェーラ」「クラッシチッシマ」(それぞれイタリア語で「春」「最高のクラシックレース」の意)、パリ〜ルーベが「北の地獄」「クラシックの女王」、ジロ・ディ・ロンバルディアが「落ち葉のクラシック」と呼ばれるなど、いずれのクラシックレースにもさまざまな異名が付けられて親しまれている。
[編集] クラシックと呼ばれるレース
- ミラノ〜サンレモ(1907年)
- ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年)
- パリ〜ルーベ(1896年)
- リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1894年)
- ジロ・ディ・ロンバルディア(1905年)
- アムステルゴールドレース(1966年)
- フレッシュ・ワロンヌ(1936年)
- ヴァッテンフォール・サイクラシックス(1996年)
- チューリッヒ選手権(1914年)
- パリ〜ツール(1896年)
※( )内は第1回大会の開催年度
[編集] モニュメント
上記の10大会のうち ミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、ジロ・ディ・ロンバルディアの5つは、クラシックのなかでも、とりわけ古い歴史を有しており、記念碑的なレースという意味合いを込めて、モニュメント (The Monuments)と呼ばれる。過去にモニュメント全制覇を達成した選手は、以下の3人がおり、最多優勝回数はメルクスの19回となっている。達成順に列挙する。
- リック・バンローイ(ベルギー)…8回
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- エディ・メルクス(ベルギー)…19回
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- ロジェ・デフラミンク(ベルギー)…11回
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※バンローイとメルクスは、ワンデーレースの最高峰と目される世界自転車選手権・個人ロードレース種目でも優勝経験がある。
[編集] モニュメント優勝回数ランキング
選手名 | 国籍 | MSR | RVV | PR | LBL | GDL | 通算 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
エディ・メルクス | ベルギー | 7 | 2 | 3 | 5 | 2 | 19 |
ロジェ・デフラミンク | ベルギー | 3 | 1 | 4 | 1 | 2 | 11 |
コスタンテ・ジラルデンゴ | イタリア | 6 | 0 | 0 | 0 | 3 | 9 |
ファウスト・コッピ | イタリア | 3 | 0 | 1 | 0 | 5 | 9 |
ショーン・ケリー | アイルランド | 2 | 0 | 2 | 2 | 3 | 9 |
リック・バンローイ | ベルギー | 1 | 2 | 3 | 1 | 1 | 8 |
ジーノ・バルタリ | イタリア | 4 | 0 | 0 | 0 | 3 | 7 |
アンリ・ペリシエ | フランス | 1 | 0 | 2 | 0 | 3 | 6 |
アルフレッド・ビンダ | イタリア | 2 | 0 | 0 | 0 | 4 | 6 |
フランチェスコ・モゼール | イタリア | 1 | 0 | 3 | 0 | 2 | 6 |
モレノ・アルゼンティン | イタリア | 0 | 1 | 0 | 4 | 1 | 6 |
ヨハン・ムセウ | ベルギー | 0 | 3 | 3 | 0 | 0 | 6 |
ガエターノ・ベローニ | イタリア | 2 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 |
リック・バンステーンベルヘン | ベルギー | 1 | 2 | 2 | 0 | 0 | 5 |
フレッド・デブルイヌ | ベルギー | 1 | 1 | 0 | 3 | 0 | 5 |
ベルナール・イノー | フランス | 0 | 0 | 1 | 2 | 2 | 5 |
ミケーレ・バルトリ | イタリア | 0 | 1 | 0 | 2 | 2 | 5 |
パオロ・ベッティーニ | イタリア | 1 | 0 | 0 | 2 | 2 | 5 |
[編集] モニュメント歴代優勝者(1990年以降)
[編集] 開催時期
3月末から10月末まで長期にわたって開催されるが、現在のロードレースカレンダーでは、5月から8月にかけてはグランツールなどステージレースが中心となっており、そのほとんどが春と秋に開催される。
年間の流れとしてはミラノ〜サンレモで春のクラシックシーズンが幕を開け、ベルギー北西部のフランドル地方を中心として、前半戦の「北のクラシック」もしくは「石畳のクラシック」と呼ばれる3連戦、ロンド・ファン・フラーンデレン、ヘント〜ウェヴェルヘム、パリ〜ルーベが開催される。
そして舞台を南部のワロンヌ地方へと移し、後半戦の「アルデンヌクラシック」と言われるアムステルゴールドレース、フレッシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュが行われる。
以後しばらくの中断をはさみ、8月にヴァッテンフォール・サイクラシックスが開催された後、秋のクラシックシーズンがスタート。チューリッヒ選手権、パリ〜ツール、ジロ・ディ・ロンバルディアが行われて、その年のロードレースシーズンは終了する。
[編集] レースの特徴
アルデンヌクラシックのようにアップダウンが絶え間なく続くレースがあれば、パリ〜ツールのように延々平坦なコースが続くレースもあるほか、ジロ・ディ・ロンバルディアのように長い登りが設定されているレースもあるといった具合に特徴的なコースレイアウトがされているレースが多い。
またパリ〜ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンのように通常走らないような悪路や急坂を走る、あるいはミラノ〜サンレモのように極端な長距離を走るなど、独特な性格を持ったレースもある。
こうしたことに加え「1日で勝負が付くこと」「レースの格式が高いこと」があいまって、クラシックでは間断の無いアタック合戦の様相を呈することが多いため、ステージレースとはまた異なった、それぞれのレースの特徴にあわせた戦略や走り方が必要になってくる。
ミラノ〜サンレモやパリ〜ツールなどはスプリンターがエースになることが多いが、登りが多かったり、ゴール手前が登りになっているアルデンヌクラシックのようなレースはオールラウンダーが勝利を狙う。ただ、パンクや落車などの不確定要素も多く、序盤〜中盤で集団からエスケープしたスピードマンたちが、そのまま逃げ切ってしまうことも少なくない。
[編集] ロードレースにおける位置づけ
クラシックでの勝利は極めて価値の高いものであり、1勝でもすれば生涯の勲章となる。自国で開催されるクラシックに対してはグランツールでの勝利以上に重きを置く選手も多い。中でもトム・ボーネン、オスカル・フレイレ、ダヴィデ・レベッリン、パオロ・ベッティーニ、フアン・アントニオ・フレチャ、あるいはかつてのダニーロ・ディルーカといったクラシックを得意とする選手たちは「クラシックハンター」と呼ばれ尊敬されている。
[編集] 脚注
- ^ ワンデーレースの最高峰に位置づけられているのは世界選手権だが、チーム戦でなく国別対抗戦であるという理由でクラシックとしては扱われない。
- ^ MSR=ミラノ〜サンレモ
- ^ RVV=ロンド・ファン・フラーンデレン
- ^ PR=パリ〜ルーベ
- ^ LBL=リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ
- ^ GDL=ジロ・ディ・ロンバルディア