オンドル
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オンドル(온돌、溫突、温突)は、朝鮮半島や中国の華北北部・東北部で普及している床下暖房。
朝鮮式の漢語では「突火煖寝」もしくは「堗厝火」とも。 中国語では「炕(kang カン)」と呼ばれる。
本来は台所を居住空間より低い場所に設け、その台所で煮炊きしたときに発生する蒸気や煙(台所を使わないときは暖房のためだけに台所で火を焚く)を居住空間の床下に通し暖房として使用する設備。
かつては薪、わらなどを燃料としたが、韓国においては1960年代から80年代にかけ、練炭を燃料としたオンドルが主流となった。しかし、床にできたひび割れから一酸化炭素が流入し、就寝中の家族が中毒死する事故が頻発した。
現在、特に韓国では中高層アパートの普及に伴い、旧来の方式でのオンドル暖房が構造的に不可能になったため、温水床暖房が一般的に使用されており、「オンドル」といえば温水床暖房の事を指すことが多い。古くからある建物では温水床暖房ではない、本来の形のオンドルが残っているが、その燃料は灯油が主流になっており、ガスオンドルや電気オンドルを使用している家庭もある。
中国の華北・東北部の農村部では今でも昔ながらのオンドルをよく見かける事ができるが、都市部ではほぼ無いに等しい。
日本では、湯治小屋としてオンドルを採用している温泉が存在する。
[編集] エピソード
朝鮮半島の山は、木が切り倒されて草や低木のみが一面を覆っている、いわゆる「はげ山」が多い。豊臣秀吉による朝鮮出兵時に「加藤清正が焼き払ったから木がなくなった」などと冗談を言う現地の人もいるが、これはオンドルの薪に利用され続けたためである。
[編集] その他
朝鮮半島の住宅は、日本と同様に靴を脱いで上がる。この風習は、中国や東南アジアの一部の少数民族などを除けば、日本と朝鮮半島のみといっても過言ではない。
日本・朝鮮半島の民家は一見すると似ているようだが、日本の民家が畳や縁側、襖など、蒸し暑い夏の気候に対する開放的な造りになっているのに対し、朝鮮半島の民家、特に北部地域はオンドルを用い、窓や出入口を極力小さくするなど、寒冷な冬の気候に対する閉鎖的な造りになっている。