エクスプレス予約
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エクスプレス予約(えくすぷれすよやく)とは、『JR東海エクスプレス・カード』および『J-WESTカード(エクスプレス)』の会員を対象とする、東海道・山陽新幹線の会員制予約サービスの名称である。
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[編集] 概要
このサービスの最大の特徴は、パソコンや携帯電話から東京~博多間の東海道・山陽新幹線各駅間の特急券が、年末年始やゴールデンウィークなどの繁忙期においても通常の新幹線特急券よりも安価なe特急券を購入することが可能で、通常では1回のみに限定されている乗車変更がe特急券を引き取る以前であれば何度でも可能なことにある。
また、任意の列車の号車・座席位置を指定して指定券を購入できる「座席番号リクエスト」機能が利用可能。パソコンや携帯電話の画面に表示されるシートマップを見ながら座席を選択できるが、リクエストした列車が満席もしくはそれに近い場合は「ご希望の列車は残席数が少ないか満席のため、お選びいただける座席がありません。」と表示される。
- 一部列車では号車の選択ができない場合がある。
- 全席禁煙のN700系で運行される列車では「喫煙ルーム付近の座席を希望」にチェックを入れると、該当する座席のみ表示される。
- ひかりレールスターで運行される列車では「オフィスシート」にチェックを入れると、該当する部分の空席情報が表示される。
- 「サイレンスカー」設定時は「4号車」・「サイレンスカー」どちらを選択しても同じ座席表示がなされる。
- 8号車のコンパートメントはエクスプレス予約では利用できない。
サービス開始当初は東京~新大阪間の「のぞみ」を利用する場合で通常料金より500円安く利用できる設定であったが、当時の「のぞみ」の特急料金の割り増し額が970円と大きく、運転本数も少なかったため割引サービスという面ではあまり効果が期待できるものではなかった(東京~名古屋は380円引であった)。
しかし、2003年(平成15年)10月の品川駅開業と「のぞみ」大増発、特急料金の値下げにあわせて通常の「新幹線回数券」よりも割引率を大きく設定する変更が行われた。このため現在ではビジネスなど高頻度の利用に限らず、帰省や観光目的などで年間数回程度しか利用しない乗客にとっても有利なサービス内容となっている。
乗車券もセットで予約でき、東京都区内発・福岡市内発などの形で発券することもできるが、次のような制約がある。
- サービスの提供元である東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)の窓口で受け取る必要があるため、関東および九州エリアでは受け取りできる駅(東京駅、品川駅、新横浜駅、小田原駅、熱海駅、小倉駅、博多駅)が限られる他、実際の乗車駅(例・本八幡駅)から乗車券類を受け取る新幹線停車駅(例・東京駅)との間は別に運賃が必要となる。ただし事前に発券する機会があればこの問題は回避できるが、手間やその後の乗車変更等が通常扱いになるなどサービス本来のメリットが失われてしまう。
- セットされる乗車券は無割引のため、JR線の利用営業キロ数が片道601キロ以上の区間(例・東京~西明石以西)を往復利用する際に適用される往復割引制度が適用されない。
これらを避けるために新幹線停車駅までJR在来線を利用する場合や、往復割引制度の対象になる区間での往復利用の場合、エクスプレス予約では特急券のみを予約・購入するように勧めている。[1]
また、一般の特急券のような新幹線⇔在来線特急列車相互間の乗り継ぎ割引制度はない。[2]
- JR西日本では、在来線特急と乗り継ぐ場合は割引の特急券を組み合わせて購入するか、通常の乗車券類を駅や5489サービスで購入する方が安くなる場合がある旨を「JRおでかけネット」で案内しているほか、J-WESTカードの入会申込書にもその旨の記述がある。
JR東海エクスプレス・カードの場合は夜行列車や臨時列車など、自社独自の在来線列車の予約サービスは現在実施していない。国際ブランド付きの現行カードであれば、ブランド利用によるJR他社の電話やインターネットによる予約サービスの利用が可能である。ただし、この方法は他社管内(主に関東地区)もしくは近接した地域の利用者でなければ現実的でない。
J-WESTカードエクスプレスの場合はeきっぷサービスで、JR西日本管内の主な在来線特急列車(5489ならJR各社の列車)の予約を別途実施している。
またJR東海では電話センター経由でJR全線の乗車券・特急券をカード決済で購入し、窓口や指定席券売機で受け取るサービスを2006年(平成18年)8月末で廃止した。これにより、在来線での電話やインターネットによる予約サービスを実施しないJR旅客会社となった(サイバーステーションやプッシュホンによる予約サービスを除く)。
このサービスを受けるには「JR東海エクスプレス・カード」か「J-WESTカード」(エクスプレス)への入会または「ビューカード」を所持してかつJR東海へ「ビューエクスプレス特約」への入会(モバイルSuica・およびモバイルSuicaをVIEWカードで利用することが必須)が必要だが、これらはクレジットカードであり与信審査が必要となるため、審査基準に満たない人や年少者は利用できない。ちなみにどちらのカード・およびビューエクスプレス特約の年会費はいずれも1,050円(2008年現在、消費税込み)かかり、エクスプレス予約が利用できない「J-WESTカード」(ベーシック)の年会費が実質無料であることを考えると、エクスプレス予約の年会費と捉えることもできる。
2007年6月末時点の会員数は約94万人で、JR東海ではEX-ICサービスを開始する2008年春から2年間で、約2倍の180万会員獲得を目標としている。平日には全乗客の2割、約6万4000人がこのサービスを利用している[3]。
[編集] エクスプレス早特
乗車日の3日前までに予約し、かつ特急券と乗車券をセットで購入することを条件に、前述のe特急券よりもさらに安く乗車できる。利用できるのは以下の列車。
- 東海道新幹線
- 山陽新幹線
- 新大阪駅・新神戸駅~小倉駅・博多駅を直通する全列車
割引額はJR東海やJR西日本の企画商品(「ひかり早特きっぷ」「山陽新幹線2枚きっぷ」)などと同等かそれ以上に高く、グリーン車では通常の普通車指定席価格に数百円から千円程度の上乗せで乗車できる価格設定のものが主となっている。
また早朝6時台の東海道新幹線「のぞみ」におけるエクスプレス早特では、通常の切符の普通車指定席料金よりもさらに安い値段でグリーン車が利用できる場合がある(東京~新大阪間などでは通常期で50円、繁忙期では250円安くなる)。また年末年始やお盆、ゴールデンウイークなどの多客期でも利用できるほか、予約の変更が何度でも(「山陽新幹線2枚きっぷ」も同様だが)可能、などの特典も付与されている。
[編集] スーパーエクスプレス早特(終了)
早朝時間帯の「のぞみ」利用促進のため、2007年7月6日から同年10月31日乗車分までの期間限定で発売された。乗車日の5日前までに予約し、かつ特急券と乗車券をセットで購入することを条件に、通常の「エクスプレス早特」よりもさらに安く利用できるものであった。利用できる列車が「エクスプレス早特」よりさらに限られる反面、割引率が高く設定されていた。
なお、新大阪・新神戸発のみで東京側からの設定はない。利用可能列車のうち、新大阪6:25発「のぞみ104号」は2007年7月1日のダイヤ改正で増発されたものである。
- 設定区間
- 新神戸・新大阪→新横浜・品川・東京
- 利用可能列車(列車名は設定当時)
- のぞみ200号(運休日あり)
- のぞみ102号
- のぞみ104号(休日運休)
- のぞみ80号(新神戸から利用できるのはこの列車のみ)
- 価格
- 新大阪→東京・品川 10,500円など
[編集] グリーンプログラム
2006年度から、エクスプレス予約により乗車するとポイントが加算され、一定のポイントがたまるとグリーン料金0円でグリーン車が利用できる「グリーンプログラム」という新しいサービスを設けた。なお、一部の法人用カードは本プログラムの対象外である。
例えば、東京~新大阪間を6往復利用すると普通車指定席の料金で「のぞみ」のグリーン車に1回乗車できるもので、獲得ポイントは乗車距離により異なり、「ひかり」や「こだま」の場合はより少ないポイントでグリーン車に乗車できる。具体的には東京~新大阪間に列車種別に関わらず乗車すると90ポイントが与えられる。蓄積ポイントが1000ポイントに達すると「のぞみ」のグリーン車、800ポイントで「ひかり」のグリーン車、600ポイントで「こだま」のグリーン車に普通車指定席料金で乗ることができる。
蓄積ポイントによるグリーン車への「アップグレード」は、必要ポイント数を持っていれば乗車区間の長短に関わらないので、より長距離移動の場合に利用した方が“お得感”があると思われる。ただしポイントの有効期間は最長でも1年6か月(ポイントの有効期間は当初、ポイント取得翌年2月末日の23時までとなっていたが、2007年の取得分から翌年6月末日の23時までに延長された)であるのと、利用距離に応じたポイントが加算されるしくみとなっており、実質的には関東-関西間の移動の場合、年間6往復以上利用する会員のための特典となっている。
会員規約に「e特急券は発券本人以外の使用は禁止」などと明記されていないため、ポイント取得への早道として会員自身以外の家族・知人などにe特急券を購入・提供したり、隠れた方法として一人が所持するカードで帯同者全員のe特急券を予約すれば、任意の移動区間に対して決められたポイント数×人数分のポイントが使用したカードの所持者に入る、などといった方法がある。[1]
なお2008年3月1日の乗車分から、利用区間ごとのグリーンプログラムの加算ポイントが一部変更された(例:東京-新大阪での獲得ポイントは現在90ポイントだが、変更前は100ポイントだった)。
[編集] EX-IC(エクスプレスIC)サービス
東海道新幹線のチケットレス化を目指し、2008年3月29日から導入された新しいサービスである。専用のICカードなどを媒体として、スピーディな乗車や乗り継ぎが実現する。なお、eきっぷのみでの利用は不可となっている。
同日のサービス開始時点では個人会員が対象で、法人会員向けや山陽新幹線を含む東海道・山陽新幹線全線でのサービスは2009年夏に開始される予定である[2]。
[編集] 概要
『JR東海エクスプレス・カード』・『J-WESTカード(エクスプレス)』の会員に別途貸与される「EX-IC(エクスプレスIC)カード」、またはEX-ICサービスの情報を登録した「モバイルSuica」を搭載した携帯電話と会員のエクスプレス予約の情報をひも付けし、自動改札機にICカードなどをタッチした時に会員の予約購入した乗車券・特急券の情報を確認してチケットレスで通過できる。
「モバイルSuica」のチケットレスサービス(モバイルSuica特急券)と異なり、利用者が自分で「モバイルSuica搭載携帯電話機」にきっぷの情報をダウンロードするのではなく、自動改札機通過時に会員の予約情報との照合を行って通過を判定し、EX-ICカードなどへきっぷの情報が格納される。
自動改札機にEX-ICカードなどをタッチすると、利用する列車や座席番号などが記載された「ICご利用票」が出力されるほか、改札内などにある座席情報表示機でもカードをタッチすると座席などの情報が表示され、乗車直前の確認の役目を果たす。
EX-ICカードは在来線用のSuicaやICOCA・TOICAと組み合わせて使用するもので、新幹線の自動改札機に2枚同時にタッチして在来線部分の運賃精算と新幹線部分の有効判定を同時に行う。モバイルSuicaの場合はエクスプレス予約の会員登録をすれば、在来線と東海道新幹線の乗り継ぎが1台の携帯電話で可能になる。
[編集] 運賃など
新幹線区間では運賃(乗車券)と特急券をセットにした専用の価格(新幹線チケットレス運賃)が適用され、営業キロが片道200km以上(東京都区内発着の場合は100km以上)の新幹線駅相互間のみの利用であれば従来のきっぷ(e特急券+乗車券)と比べてさらに安く利用できる。
新幹線と在来線を乗り継いで利用する場合は「新幹線チケットレス運賃」と在来線利用区間の運賃(別途Suica・TOICA・ICOCAのストアードフェア残額から引き去り)を合算した金額となるため(乗車券の特定都区市内制度は適用されない)、総額が従来のきっぷと異なる。特に新幹線区間を挟んで前後で在来線を利用したり、片側のみ在来線利用でも在来線の利用距離や区間によっては従来のきっぷより総額が高くなる場合がある。
従来の運賃とe特急券+乗車券との差額は200円なので、在来線利用区間が片方の特定都区市内のみでかつ10km以下(山手線・大阪環状線内は10km超でも10円安い)ならEX-ICサービスが、10km超の場合や両端で特定都区市内制度を利用する場合は従来のきっぷの方が有利である計算となる。
このため、エクスプレス予約では従来のきっぷとEX-ICサービスを選択して利用することを推奨するとともに、利用者が価格を簡単に比較できるように計算専用のWebサイト「EX-IC運賃ナビ」を用意している。
[編集] JR東日本『ビューカード』への利用開放(モバイルSuica経由)
平成20年3月29日よりEX-ICサービスが開始された事に伴い、モバイルSuicaを経由して申し込む事でJR東日本の『ビューカード』でエクスプレス予約が利用できるようになった〈TypeIIおよび法人カードを除く〉。ただし、利用に際しては「ビューカードをモバイルSuicaの決済クレジットカードとして登録している」事、そして「ビューカードをエクスプレス予約の決済クレジットカードとして利用する」事が条件で、「ビュー・エクスプレス特約」への同意が必要になる(「ビュー・エクスプレス特約」の手続きに際し、ビューカードからエクスプレス予約会員の年会費として1,050円(税込)が決済される)。
「ビュー・エクスプレス特約」の手続き完了後、JR東海より「エクスプレス予約会員証」が送付され、「エクスプレス予約会員証」の到着後、モバイルSuicaアプリメニューより利用登録を行う事でエクスプレス予約の全てのサービスが利用できるようになる。[3] エクスプレス予約会員証には会員番号の記載はなく、会員番号はモバイルSuicaより利用登録した際に画面に表示される際か、携帯電話のエクスプレス予約のログイン画面から会員番号の問い合わせをした際にしか確認できないので注意が必要である。また、会員証に記載されている番号も、会員証をなくした際に必要なためメモ等の必要がある。
基本的にはEX-ICサービスでの利用が前提ではあるが、予約の際に画面上で所定の操作を行う事でe特急券等きっぷでの購入も可能になる。また、EX-ICサービスを利用できるのは現時点では東海道区間(東京~新大阪間)のみのため、往路または復路に山陽区間が含まれる場合、往路・復路ともにe特急券等きっぷでの購入となる。
なお、現時点ではJ-WESTカードエクスプレスとの組み合わせは不可となっている。
[編集] 歴史
- 2001年(平成13年)9月3日 - JR東海エクスプレス・カードにおいて、東京駅~新大阪駅の各駅間発着でのサービスを開始。
- 2005年(平成17年)12月10日 - サービスを山陽新幹線・新神戸駅まで拡大。
- 2006年(平成18年)7月22日 - 山陽新幹線全区間にサービスが拡大。同時に、J-WESTカード(「エクスプレス」限定)でも東海道新幹線全区間での同等のサービス利用が可能となる。
- 2008年(平成20年)3月29日 - EX-ICサービス(仮称の段階ではエクスプレス予約ICサービス)を東海道新幹線で開始(個人会員のみ)。
- 2009年(平成21年)夏 - EX-ICサービスを山陽新幹線にも導入するほか、法人会員向けにも拡大する予定。
[編集] その他
カードの入会申込書や駅構内のポスターなどの各種広告媒体では、「東海道・山陽新幹線の会員制ネット予約。 エクスプレスE予約」(座席マークの中にE)というロゴが長年使われてきたが、EX-ICサービスの導入に合わせて「EXPRESS予約(「EX」を大きく強調して上に配置)」という新しいロゴを導入し、公式サイト・広告媒体や駅構内などの案内表示が順次新ロゴに変更された。
[編集] 脚注
- ^ 1回の予約操作で最大6名(大人・子供あわせて)までの全員が同区間を移動する場合に予約が可能。
- ^ ICサービスで都市間の移動がさらに便利に! - JR東海ニュースリリース 2007年12月21日付
- ^ 実際は「ビュー・エクスプレス特約」申込完了後、エクスプレス予約側にて申込情報が登録され次第、会員証到着を待たずともモバイルSuicaにて利用登録が出来、即エクスプレス予約のサービス利用は可能である。