ビューカード
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ビューカード(VIEW CARD)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が発行するクレジットカードである。
1993年2月2日から発行を開始し、特に「ビュー・VISAカード」発行後の2000年度以降、利用可能店舗の拡大に合わせ事業収益が年々増加している。会員数はVIEW Suicaカードを含め約400万人(2006年8月現在)。
JR東日本の駅窓口と自動券売機によるJR全線の乗車券類購入およびSuicaチャージ(入金)は特典ポイントが3倍に優遇され、同社エリアにおいてJR線を有利に利用できる。ただし提携VIEW SuicaのType IIカードではこの条件が適用されない。
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[編集] 概説
[編集] 発行開始
1993年の発行開始当初は自社専用カードの機能のみで、利用可能なのはJR東日本の乗車券類購入や関連する日本テレコム・東京デジタルホンの料金決済、一部の東急ホテルズ店舗に限られていた。また募集対象もJR東日本の営業地域内在住・在勤者に限定されていた。
この当時のシステムは丸井のノウハウを利用したものといわれている。
一方、同社グループ企業との提携で「ルミネカード」をはじめとする駅ビルやホテル(ホテルメトロポリタン・ホテルメッツチェーン)との「ビュー・ダブルフェイスカード(提携カード)」が発行され、多くの会員を獲得するなど、さらなる事業展開の基盤が築かれていた。次いで1998年からは、北海道旅客鉄道(JR北海道)の駅窓口・同社グループの駅ビルなどを「ビューカード加盟店」として利用可能とした。
[編集] 国際カードの発行開始
2000年3月より、新たにVISA提携カードである「ビュー・VISAカード」の発行を開始した(当時のVISAイシュアはユーシーカード)。それまで、JRグループ共同商品の「JRカード」が、日本全国のJR線窓口で利用できる唯一の国際カードとして便利な存在だったが、「ビュー・VISAカード」の登場により利用可能な店舗が一挙に全世界のVISA加盟店へ拡大した。
同時期には「えきねっと」(インターネットとれTEL)がサービス開始となり、2001年からはジェイアール東日本情報システムか構築する基幹システム「VENUS (View card Effective Network and Universal System) =ビーナス=」を稼動し、10月からは「VIEWプラス」制度を開始した。
[編集] VIEW Suicaカードの登場と躍進
2003年にVIEW Suicaカードの発行を開始。当初の国際ブランドはJCBとVISAで、2004年からMasterCardが加わり会員数は急増した。発行開始から100万人達成までに3年5ヶ月、200万人達成までにさらに4年10ヶ月を要したが、300万人から400万人まではわずか1年3ヶ月で達成している。
同年にはリボルビング払い専用の「VIEW Suicaリボカード」を発行開始し、このカードに限りリボルビング払いの取り扱いを開始。
また新銀行東京・JALカード(日本航空インターナショナル)・ビックカメラなどJRとは無縁と思われる数多くの企業と事業提携を次々と発表し、提携VIEW Suicaカードの発行が著しい。2005年からプロパーカードが「定期券機能付きVIEW Suicaカード」となった。
2006年10月1日から、あらかじめ基準額と入金額を「ビューアルッテ」で登録の上、自動改札機(PASMO相互利用時も含む)への入場時にVIEW Suicaカードのストアードフェア残額が基準額を下回っているときに、その場で登録金額を自動決済してチャージする「オートチャージサービス」も開始された。
現在は「Suica」サービスを軸に、多方面へ展開したクレジットカードとして進化している。
- 詳細はVIEW Suicaカードの項を参照のこと。
[編集] ビュー・法人カード
発行当初より法人向けにコーポレートカード(交通費等の経費立替用途)の「ビュー・法人カード」を発行し、2000年の「ビュー・VISAカード」発行開始にあわせて「ビュー・(VISA)法人カード」にリニューアルし、現在も発行されている。
2006年3月に「ビジネスえきねっと」のサービス開始にともない、新たに「ビジネスえきねっとJCBカード」が契約法人向けに発行が開始された。VIEW Suicaと同じくJCBのブランド開放でJR東日本が発行し、従来のビューカードとして初のJCB提携カードである。
現在、法人会員向けのVIEW Suicaカードの発行はされていない。また法人カードではSuicaチャージができないなどVIEW機能での制限事項がある。
[編集] 主な特長
[編集] ビュー・VISAカード/VIEW Suicaカード共通のサービス・機能
Type IIカードで制限されるものは×印
- JR東日本各駅のみどりの窓口(以下、同社窓口)において、乗車券類(定期券・特急券など含む)などを購入する場合、一回あたり5万円までの取引はサインレスとなる。
- ×同社窓口での乗車券類の際に分割払いやボーナス払いも可能(定期券は不可)。
- ×同社における定期券購入には専用の利用枠が別に設定され、高額となることが多い6ヶ月・長距離・新幹線などの定期券購入で、カード利用限度額が圧迫されることがない。
- ×国内旅行傷害保険(公共乗物搭乗中・募集型企画旅行・宿泊予約のいずれかをクレジット利用で補償)、海外旅行傷害保険(カード会員であれば補償)が付帯。
- ×インターネットでの指定席予約「えきねっと」が利用でき、VIEWプラスに加えて「えきねっとポイント」相当分が自動的に「ビューサンクスポイント」に移行される。
- ×JR東日本管内でオレンジカード・Suicaカード購入、Suicaへのチャージ(入金)がクレジットでできる。なお1か月の利用限度額が別途定められており、販売時に承認が必要となっている。
- ×Webサービス「VIEW's NET」でのカード利用明細照会、締日までの支払方法変更。
- ×電話(ビューカードとれTEL)で座席指定券の予約が可能。
- ×「中央ライナー」・「青梅ライナー」のライナー券予約が携帯電話から可能。
- モバイルSuica開始当初、利用にはビューカード登録が必須だった。
[編集] TypeIIカードでのVIEW機能
前項のうち、TypeIIカードでVIEWブランドとして利用可能なサービスは以下に限られる。
- 同社窓口において乗車券類などを購入する場合、一回につき5万円までの取引はサインレス(分割払いなどの支払い方法の指定はできず、翌月一括払いのみ)。
- クレジット決済によるSuicaカードへのチャージが、VIEW ALTTE・カード券売機で可能。
- (Suica搭載TypeIIカード)オートチャージサービスの利用が可能。
- えきねっと(JR指定席予約サービス)・モバイルSuicaの利用には、VIEWカードとして会員登録する。
- カード決済時のクレジットカードポイントは、VIEWカード以外の「一般カード」利用として積算されるため、えきねっとポイントからVIEWサンクスポイントへの自動移行はない。
これ以外の機能(旅行保険付帯の有無やWebサービスなど)は、TypeIIカード発行会社のサービスに準拠し、定期券用特別限度額・「とれTEL」などの設定はない。 また、クレジットの利用代金支払や問い合わせなどもビューカードセンターではなく、TypeIIカード発行会社で行う。
[編集] VIEWサンクスプレゼント
※Type IIカードでは、サンクスプレゼント対象外である。VIEWプラスも適用外となる。
1993年のカード発行当初から実施されており、通常1,000円のショッピング利用につき2サンクスポイント(5円相当)加算される。有効期限はポイント獲得翌年度の1月末まで(サンクスチャージは3月末まで)。
ビューカードのVISA加盟店におけるポイント付与率は1,000円につき2ポイントだが(500円につき1ポイントではない)、他社クレジットカードのポイント制度と比較して変則的な率になっているのは、VIEWプラス制度が始まる前、定期券購入時については付与率を半分の1,000円につき1ポイントにしていた制度の名残である(VIEWプラス制度開始により定期券のポイント付与率は一気に6倍に引き上げられた)。また当初は現金払いでもカードを提示すればポイントが付与される制度もあったが、のちに廃止されている。
獲得ポイントに応じて、食品やオレンジカード・商品券などの景品と引き換えることができる(ポイント引き換えによるSuicaへの入金「サンクスチャージ」についてはVIEW Suicaカードを参照)。
[編集] VIEWプラス
JR東日本が2001年10月から一般クレジットカード利用による乗車券類発売を開始するにあたり、自社カードをより有利なポイント付与で利用促進するため制定されたものである。
Suicaチャージ(オートチャージを含む)、モバイルSuicaに対するクレジット決済、JR東日本の駅やえきねっとでの乗車券類・「『びゅう』旅行商品」の購入はVIEWプラス制度で、対象外加盟店での利用時に比べ3倍の付与率(1,000円につき6ポイント。決済額の1.5%相当)となる。
そのため、JR東日本およびPASMO事業者の駅構内店舗(駅ナカ)やSuica・PASMO電子マネー加盟店舗等など、Suicaショッピングサービス(Suica電子マネー)が利用できる場所での支払いは、いったんビューカードでチャージしたSuicaで支払う方が(現金・ビューカードで支払うのに比べ)ポイント付与でより有利となるほか、ビックカメラや駅ビル内のテナントとして営業しているマツモトキヨシなどでは、それぞれのポイントカードで現金払いに準じたポイントが付与されて得である。
また、事前に「Suicaポイントクラブ」に登録したVIEW SuicaカードとモバイルSuicaに限られるが、2007年6月からJR東日本リテールネット(旧東日本キヨスク)やジェイアール東日本フードビジネス(ジェフビー)などの「駅ナカ」の対象店舗や、「街ナカ」の対象店舗で「Suicaポイント」が加算されるようになり、さらに有利になった。
[編集] キャッシングサービス
1993年のサービス開始当初からJR東日本自らが貸金業者として、ビューカードでのキャッシングサービスを行っている。
当初は主要駅の構内にCD・ATM(ビュー・キャッシュイン→ビューアルッテ)を設置し、始発から終電までキャッシングの利用が可能だった。その後1997年から他金融機関との提携を開始。現在は都市銀行全5行(みずほ・三菱東京UFJ・三井住友・りそな・埼玉りそな)・千葉銀行・千葉興業銀行・横浜銀行およびゆうちょ銀行(郵便局)のATMなどでも利用可能である。
ビューカードのサービスとして、時間外手数料は無料である。また逆にビューアルッテのATMで全都市銀行と横浜・千葉・千葉興業・山梨中央銀行、ゆうちょ銀行のキャッシュカードで預貯金の引き出しが利用可能となった。引き出し利用可能金額単位は千円単位となっているが、預金口座の残高がマイナス(定期預金担保の貸付残高など)になっている場合は引き出しができない。
- 2004年に発行開始された「ビュー・スイカリボカード」を除き、全種類のビューカードのキャッシング金利は長らく28%台でいわゆるグレーゾーン金利上値であったが、2006年にかけて貸金業界敗訴が決定的となった情勢を踏まえ、2006年6月9日に同年7月1日からの新規キャッシング利用分から年18%(利息制限法の上限金利)に引き下げることを発表した。
- Type IIカードでは、カード発行会社(銀行)側のキャッシングもしくはカードローンの利用となる。
[編集] モバイルSuicaサービスの利用
2006年1月28日からサービスを開始した「モバイルSuica」を利用するためには当初ビューカード(VIEW SuicaまたはビューVISA)が必要であった。これはモバイルSuicaを使うためにビューカードへの入会促進を図るという戦略であり、駅でのプロモーションでモバイルSuicaとVIEW Suicaカードの入会キャンペーンが行われ、VIEW Suicaの入会審査が完了次第その場でクレジットカード番号部分のみ通知され、モバイルSuicaの会員登録ができるようになっていた。
しかし、モバイルSuicaを使うためだけにビューカードに入会しなければならないことに対する抵抗感やわずらわしさ、高校生以下の年齢ではビューカードの申し込みができない(家族会員制度もない)点から、対応携帯電話機種の売り上げに対してモバイルSuicaの会員数が伸び悩み、JR東日本の当初予想を下回る状況が続いたことから、2006年10月1日からはビューカード以外の国際ブランドのクレジットカードも利用できることとなり、さらに同年10月21日からはクレジットカード不要の「EASYモバイルSuica」も登場した。
[編集] 年会費
プロパーの「ビューカード」は発行当初から「VIEW Suicaカード」となった現在まで年会費は500円(消費税込み)だが、リボルビング払い専用の「VIEW Suicaリボカード」および一部の提携VIEW Suicaカードでは年会費が無料となっている。
[編集] モバイルSuicaの年会費
ビューカードで登録した場合はモバイルSuicaの年会費は無料だが、それ以外のクレジットカードで登録した場合は2008年4月以降、年会費として1,000円が必要となる予定である(同年3月末日までの登録分は初年度のみ年会費無料)。
[編集] CMキャラクター
発行当初から「VIEW Suicaカード」の登場まで、3~4月や10月前後を中心に、2年に1~2本のペースで実写のテレビCMおよび駅や雑誌での広告宣伝がなされており、サービス開始時は本木雅弘が、1994年~1995年は加藤紀子(挿入曲はサムシン・エルス)が、2000年~2001年は青山恭子が出演していた。
1995年の「とれTEL」サービスのCMはビューカードと絡めた作品だが、付随事業の「びゅう商品券」や関連事業の「Suica」・「えきねっと」(「とれTEL」が発展)のCMは出演者やストーリーがタイアップしない、まったくの別作品となった。ただ、1998年からの「ルミネカード」のCMにはルミネカードのために創られたとされるオリジナルキャラクターの「ルミ姉」、2004年~2005年の「VIEW Suicaカード」絡みのテレビCMではSuicaのペンギンが、2005年からの「大人の休日倶楽部(ダブルフェイスカード)」の広告(テレビCMを含む)には吉永小百合が出演したものが展開されている。
[編集] その他
- ビューカードのロゴ表記は「V∥eW」("I"が2本線)である。「びゅうカード」の表記は用いられず、誤りである。また、逆に同社の発行する「びゅう商品券」は「VIEW 商品券」では誤りとなる。「びゅう商品券」とビューカードはJR東日本の担当部門が異なり、駅以外の「びゅう商品券」加盟店がビューカード加盟店を兼ねるのは少数である。
- JCB・UC等のカード会社が発行するギフトカードは同一ブランドである場合が多いため、こうした誤解が生じている様である。
- 他社に収納代行を委託しない関係で、利用代金の口座振替対象金融機関は郵便局(ゆうちょ銀行)と都市銀行、JR東日本・JR北海道管内に本拠がある地域金融機関(銀行・信用金庫・労働金庫など)に限られてきたが、近年ではJR東日本・北海道の管外(特に東海・近畿・九州地方)の地方銀行などでも口座振替が利用できるようになりつつある(入会申込書に金融機関一覧表が掲載されている)。
- 「ビュー・VISAカード(プロパーカード)」は2003年度で新規の募集を終了したが、「VIEW Suicaカード」への切替申込書を提出しなければ、2008年時点でも従来の「ビュー・VISAカード」が更新カードとして送付される。ダブルフェイスカードは「VIEW Suicaカード」に移行するものと、従来のまま2008年時点でも発行を行うものがある(例:ルミネカードなど)。また「VIEW Suicaカード」の発行開始に伴い、エンボスタイプ(浮き出し文字)のカードは発行停止となった。
- 2007年2月から基幹システムを「VENUS2」にアップグレードし、法人カード以外のすべてのビューカードでリボルビング払いの取扱を開始したほか、「VIEW's NET」上でのカード利用明細の随時更新と支払回数変更サービスの開始と、Type IIカードの運用に対応した。
- この切替に伴い、2月1日前後の深夜・早朝に駅窓口やビューアルッテでの取り扱いなどが休止された。
- ビューカードを利用して、みどりの窓口などで購入したきっぷの券面には「東C」と表示され、一般のクレジットカードで購入したきっぷと区別される(但し、VISA提携によりJR東日本以外の会社で購入する場合は「C制」と表示され、購入したJR旅客会社や旅行会社以外では変更や払い戻しが制限される)。また、ビューカードを決済カードとしてJR東海のエクスプレス予約を利用しe特急券等のきっぷを購入した場合、券面には「海C」と表示される(従って発券後の払い戻しを行う際は原則としてJR東海の窓口において手続きを行う必要がある)。