アンジェイ・ワイダ
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アンジェイ・ワイダ(ヴァイダ、Andrzej Wajda, 1926年3月6日 - )はポーランドの映画監督。
[編集] 経歴・人物
1926年、ポーランド東北部のスヴァウキで生まれる。父は軍人であった。青年時代に、浮世絵をはじめとした日本美術に感銘を受け、芸術を志す。第二次世界大戦中は対独レジスタンス運動に参加した。
1946年、クラクフ美術大学に進学するも、その後進路を変え、ウッチ映画大学に進学。1953年、同校を修了。
1954年、『世代』にて映画監督デビュー。1956年の『地下水道』がカンヌ国際映画祭審査員特別賞に輝いた。
1958年の『灰とダイヤモンド』は、反ソ化したレジスタンスを描いており、象徴的表現を多用した鮮やかな描写は西側でも高い評価を受け、ヴェネチア国際映画祭批評家連盟賞を受賞した。これら三作品は、ワルシャワ蜂起時のレジスタンスや、戦後共産化したポーランド社会におけるその末路を描いており、『抵抗三部作』として知られている。アンジェイ・ムンク、イェジー・カヴァレロヴィチらと並んで、当時の映画界を席巻した「ポーランド派」の代表的存在となる。
1981年、『鉄の男』でカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した。しかし、ポーランドの「連帯」運動に参加したため、同1981年に引かれた戒厳令で、ポーランド映画人協会長などの職を追われ、フランスなど海外での映画制作を余儀なくされる。この時期に製作されたのが、『ダントン』(1983年)、『ドイツの恋』(1983年)である。1985年、『愛の記録』にてポーランド映画界に復帰している。
1987年、京都賞(思想・芸術部門)を受賞。賞金の4500万円を基金として、クラクフに日本美術技術センターが設立された。
1992年の『鷲の指輪』で再びワルシャワ蜂起を問い直すなど、現在も鋭い視点に立った名作を作り続けている。2000年、世界中の人々に、歴史、民主主義、自由について芸術家としての視点を示した業績により、アカデミー賞特別名誉賞を受賞している。
映画と共に、演劇活動も盛んに行っている。1988年には、坂東玉三郎主演の『ナスターシャ』にて舞台演出をつとめている。この作品は、ドストエフスキーの『白痴』を舞台化したもので、1994年には、同じくアンジェイ・ワイダ監督、坂東玉三郎主演にて映画化されている。
[編集] 主な監督作
- 世代 Pokolenie(1954)
- 地下水道 Kanał(1956)
- 灰とダイヤモンド Popioł i diament(1958)
- ロトナ Lotna(1959)
- 夜の終わりに Niewinni czarodzieje (1960)
- シベリアのマクベス夫人 Powiatowa lady Makbet(1961)
- サムソン Samson (1961)
- 二十歳の恋 L'amour à vingt ans(1962)
- 灰 Popioły (1965)
- The Gates To Paradise (1968)
- すべて売り物 Wszystko na sprzedaż (1968)
- 白樺の林」 Brzezina (1970)
- 戦いのあとの風景 Krajobraz po bitwie (1970)
- Piłat i inni (1971)
- 婚礼 Wesele (1972)
- 約束の土地 Ziemia obiecana (1974)
- Smuga cienia (1976)
- 大理石の男 Człowiek z marmuru (1976)
- Bez znieczulenia (1978)
- ヴィルコの娘たち Panny z Wilka (1979)
- Dyrygent (1980)
- Z biegiem lat, z biegiem dni (舞台作品,1980)
- 鉄の男 Człowiek z żelaza (1981)
- ダントン Danton (1983)
- ドイツの恋 Un amour en allemagne (1983)
- 愛の記録 Kronika wypadków miłosnych (1985)
- 悪霊 Biesy (1988)
- コルチャック先生 Korczak (1990)
- 鷲の指輪 Pierścionek z orłem w koronie (1992)
- ナスターシャ Nastasja (1994)
- 聖週間 Wielki Tydzien (1995)
- Panna Nikt (1996)
- パン・タデウシュ物語 Pan Tadeusz (1998)
- Zemsta (2002)
- カチン Katyń (2007)・・・・カティンの森事件について描く。ワイダの父親もこの事件で虐殺されている。