たま (猫の駅長)
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たま(1999年4月29日 - )は和歌山電鐵貴志川線の貴志駅において駅長を勤めている雌の三毛猫である。2007年1月5日に同社より正式な辞令を交付されたことで話題を呼んだ。同時に同居する猫「ちび」(雌、2000年5月12日? - )とたまの母親「ミーコ」(1998年10月3日? - )[1]も助役に就任した。主な業務は「客招き」、報酬は年俸としてキャットフード1年分。任期はなく、終身雇用である。
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[編集] 経緯
[編集] 駅長就任まで
たま達3匹は同駅の売店「小山商店」の飼い猫である。出産1ヶ月ほど前から売店に住み着くようになったミーコがたまを生み、その後でちびが拾われた。茶虎がミーコで手足が白いのがちびである。
2003年、貴志川線を運営していた南海電鉄が赤字解消が困難なことを理由に路線廃止を表明した後、住民運動の甲斐あって岡山県を中心に公共交通事業を行っている両備グループが経営を引き継ぐこととなり、同グループの岡山電気軌道の子会社として「和歌山電鐵」が設立された。
同じ時期、たま達の猫小屋が公道に置かれていたために立ち退きを迫られており、困った飼い主が2006年4月1日に和歌山電鐵の開業記念式典を終えた後の小嶋光信社長(両備グループ代表と兼務)に「猫たちを駅の中に住まわせてもらえないか」と相談した。たまに惚れ込んだ小島社長の発案によって、「招き猫」になって欲しいとの願いを込めて、それ以前から駅の利用者に親しまれていたたま達を駅長などに任命することになった[2]。和歌山電鐵移管後に合理化のために貴志駅を無人駅化したことも背景にある。猫に駅長を嘱託した例は日本の民営鉄道では初である[3]。
[編集] 駅長勤務
駅長・助役への任命に際しては3匹それぞれに正式な委嘱状が交付され、たま駅長には特製の駅長帽と金色の名札も支給されている。帽子は(人間の)社員が使っている物を小振りにした物で、社内では唯一帽子に金色の線が入っている。小さ過ぎて作るのが難しく、完成までに半年余り掛かったという[4]。金色の名札は2007年10月10日に何者かに持ち去られたらしく紛失してしまったが、このことを知った動物カメラマンから新たに手製の名札が贈られ、金色の名札が再発行されるまでの間代わりに身に付けていた[4][5]。
たま駅長らの勤務日及び勤務時間は、月曜日から土曜日の朝9時頃から夕方5時頃までである。改札台や売店前のテーブルに上って乗降客を出迎えるのが日課である。また、「おもちゃ電車」のテープカットや、利用促進の為の「貴志川線祭り」などのイベントで伊太祈曽駅等に出張した事もある。
たまは大人しく、ミーコは人懐こい性格だが、ちびは人見知りする性格で猫小屋に籠っている事が多い。2007年5月11日にはちびが専用ケージから逸走して行方不明となる事件も起こったが、5月16日午前5時頃駅に戻って来た所を乗客に発見、保護された[4]。
[編集] 話題作りと表彰
たま駅長就任の話題は多数のテレビニュースや新聞でも取り上げられ、たま駅長目当ての乗客が全国から和歌山電鐵を利用して訪れるようにもなった。同時期にインターネット上で注目を集めた「ねこ鍋」など話題となる猫が多かったこともあって、テレビ番組や雑誌などで特集が組まれることもあった。
さらには和歌山県を巡るパッケージツアーの一部として「いちご電車」や「おもちゃ電車」と合わせてたま駅長訪問が組み入れられるようにもなった。当駅の乗降客数はたま駅長就任まで1日あたり約700人だったのが、就任直後の2007年1月には約17%増加するなど、「たま駅長効果」は具体的数値となっても現れている。2007年ゴールデンウィーク期間中にはいちご電車とたま駅長の効果もあってか、同社では前年同期比40%増の収入を記録した[6]。
この事から2007年春の開業1周年記念式典にて同社から「スーパー駅長賞」が、2007年12月には両備グループにおける「トップランナー制度」に基づく「トップランナー賞・客招き部門」が贈られている。ちなみにトップランナー賞のご褒美は猫じゃらし、年末手当はカニカマのスライスである[7]。さらには貴志川線の知名度と乗客数・売上とを向上させたことから、たまは就任1周年の2008年1月5日をもって駅長から「スーパー駅長」(課長職相当)に昇進した。昇進に際しては地元住民など約300人が集まって大々的な式典が執り行われ、新たに青地に金の「S」が入った名札が交付された[8]。同年4月20日には閉鎖された券売窓口跡を利用して「駅長室」が設置された。駅長室のデザインはいちご電車や九州新幹線の車両など鉄道車両・施設のデザインを手がけている水戸岡鋭治による[9][5]。
この一連の活動に対して和歌山電鐵にも、人と動物との共生のための活動を行っているNPO法人「Knots」から、人と動物との共生に尽力する企業へ贈られる「2006年度りぶ・らぶ・あにまるず賞グランプリ」が贈られている[10]。
日本国外からの観光客も訪れたり、猫を取り扱うフランスのドキュメンタリー映画にも登場することが決まるなど、日本国外でも話題を呼んでいる[11]。
繰り返し訪れる熱心なファンも多く、売店内にはファンから贈られた写真などが飾られている。中には愛知県瀬戸市の招き猫メーカーから贈られた、たま駅長をモデルに作られた陶器製の招き猫もある[5]。
[編集] 面会時の注意
たま駅長がテレビなどで知られるようになったことで貴志駅への乗客も増えた一方で、ローカル線の乗客数・収益の改善のためのものであるにもかかわらず自動車で駅前に乗り付けたり、中には飼い犬などを無理矢理引き合わせてたま駅長らをパニックに追い込んだりなどといったトラブルを起こす者がおり問題となっている[5]。関係者によるブログ『貴志川線応援ブログ』(詳細は外部リンク参照)や和歌山電鐵では、以下のような注意を出している。
- 原則として日曜日は不在である。ただし稀に日曜日でもイベントなどで短時間「休日出勤」していることはある。年末年始など売店休業日や荒天時も休みとなる。臨時出勤日や臨時休業日については、和歌山電鐵の公式サイトや『貴志川線応援ブログ』を参照。
- 当駅には駐車場など車を止める場所が無い。和歌山電鐵では車でたま駅長に会いに訪れる際には伊太祈曽駅または和歌山駅の駐車場を利用し、貴志川線を利用することを推奨している。
- 写真撮影は自由だが、ストロボ(フラッシュ)を点灯させると猫の目にダメージを与えるので、撮影の際はストロボを点灯させないこと。
- 犬などに近づかれるとパニックを起こすので、決して連れて行ってはならない。
- 健康管理に影響を及ぼすため、食べ物を差し入れてはならない。
- 雨の日や冬季間の気温の低い日は猫たちの体調を崩すおそれがあるために外には出せず、猫小屋からの面会になる。暖かい日や晴天日に会うことが望ましい。
[編集] 関連商品
和歌山電鐵では、バッジやポストカード、ノート、鉛筆といった『たま駅長グッズ』を、いちご・おもちゃ両電車グッズと併せて販売している。これらは小山商店では販売されていないが、和歌山駅貴志川線ホームと和歌山電鐵本社がある伊太祈曽駅にて購入可能である[12]。
2007年9月26日には、たま達の仕事ぶりを収めた写真集『たまの駅長だより ~いちご電車で会いにきて~』が集英社より発売された(詳細は参考文献参照)。こちらの写真集は小山商店でも取り扱っている。小山商店では写真集を持参ないし購入した人のうち希望者に対し、たまの手形ならぬ(前足)肉球形の特製スタンプを押してくれる[5]。
トミーテックが発売している鉄道に関わる女性をモデルとしたトレーディングフィギュア「鉄道むすめ」第5弾(2008年1月末発売)には和歌山電鐵の運転士制服姿のキャラクター「神前みーこ」が加わっており(名前は神前駅とミーコ助役に因んでいる)、その頭にたま駅長が乗っている[13]。このシークレット版ではたま駅長の代わりにミーコ助役が頭に乗っている。
[編集] 脚注・出典
- ^ 生年月日の記述は『たまの駅長だより』による。
- ^ 両備グループ|代表メッセージ「三毛猫“たま”を駅長に」、2007年1月5日。
- ^ 民鉄初、ネコの駅長誕生へ(貴志川線の未来を“つくる”会)、2007年1月5日。
- ^ a b c 「おめでとう!! たまちゃん 猫駅長就任1周年記念Special」 『NEKO』2008年2月号、ネコ・パブリッシング。
- ^ a b c d e 『貴志川線応援ブログ』。
- ^ 読売新聞2007年6月10日。
- ^ 両備グループ|代表メッセージ「たま駅長にトップランナー賞」、2007年12月5日。
- ^ 両備グループ|代表メッセージ「たま駅長が“スーパー駅長”に特別昇進」、2007年1月5日。
- ^ 両備グループ|代表メッセージ「スーパー駅長“たま”の駅長室竣工式あいさつ」、2008年4月20日。
- ^ NPO法人Knots「2006年度りぶ・らぶ・あにまるず賞」
- ^ 【アニマル大集合】 「スーパー駅長たま」貴志川線に乗りにきてにゃ - MSN産経ニュース、2008年4月23日。
- ^ ■■ わかやま電鉄 オリジナルグッズ]、2007年10月11日。
- ^ トミーテック「最新鉄道むすめニュース」、2007年10月18日、およびキャラクター紹介ページ。
[編集] 参考文献
- 坂田智昭(写真)『たまの駅長だより ~いちご電車で会いに来て~』ホーム社(発行)・集英社(発売)、2007年 ISBN 9784834251395
[編集] 関連項目
- 芦ノ牧温泉駅 - この駅に住む猫「バス」が会津鉄道より名誉駅長に任命された。この任命式にはたま駅長からも祝電が贈られた。
- 安野駅 - 可部線廃線区間の廃駅。こちらは無人駅に住み着いた野良猫が「猫の駅長」として知られていた。
- 霧島温泉駅 - 近隣に住む2歳の男の子がJR九州より駅長を委嘱された。
- 玖村駅 - JR西日本・芸備線の無人駅。縦縞と白色の猫が二匹、変わりばんこに自動改札機の上に寝ている姿が、動画サイトで話題になる。