Multi Video System
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Multi Video System(まるち びでお しすてむ)はSNKが発売したアーケードゲーム基板である。また、同システム基板を導入した筐体のことも指す。MVSと略されることが多い。
ハードウェアスペックとしては同社の家庭用ゲーム機ネオジオと全く同等のものであった。
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[編集] 概要
基板上にカートリッジスロットが最大6本存在し、複数のゲームを1台の筐体で共用することができた。そのため、筐体には2人分の操作デバイス(1レバー+4ボタン、スタートボタン)の他にゲーム切り替え用のボタンが用意されていた。また、一般的な筐体ではディスプレイの上にインストラクションカードを並べる領域があった。また、ネオジオとのリンク用にメモリーカード用のスロットがついた筐体も存在した。なおMVS用のカートリッジとネオジオ用カートリッジに互換性はない。
インストラクションカードの小ささを補填するため、ゲームスタート前に細かいゲームの操作方法の説明が入ったり デモ中にも殆どの場面でタイトルロゴが表示されるなどの配慮がされている。
また、各ゲームでの日々の売上データが蓄積され、人気・不人気が簡単にわかるようになっているなど、オペレータにとっても便利な機能が多数搭載されていた。メモリーカード経由でインカムを集計できるシステム等も予定されていたようである。
家庭用のネオジオ同様、初期の基板と後期ソフトでは組み合わせによってはエラーが起こる場合があった。配線は初期の仕様だとステレオ仕様だったこともありJAMMAとは一部配線が違ったが、後期の基板ではモノラル化されほぼJAMMA仕様となっている。尚国内向けの最後の辺りの一部のソフトは基板とソフト一体型の基板(MV-0)として売られた。
[編集] バリエーション&装備一覧
複数のソフトの装着、家庭用とのメモリーカード共用が売りであった為 基板のみの販売予定は当初はなかったものの、市場の要望により1本スロットの基板の販売が開始された。
同時にゲームソフト側でも、メモリーカード使用を前提とした、クリアまで長時間かかるような構成は減り また、システムにおいても残クレジット数が画面に表示できるようになるなど、汎用筐体にあわせた設定が追加された。
1本スロットの物はMV-1Cを除いて基板に対してソフトは水平に刺さる。
- MV-1 メモリーカードユニット(MV-IC)装備可能、家庭用ネオジオコントローラー装着可能、ステレオミニジャック出力端子装備
- MV-1F MV-1を一回り小さくした基板。メモリーカードユニット装着の為の端子が省かれている。
- MV-1FZ MV-1Fを更に小型化し、音声はモノラル化されている。今まで付いてたオプション端子が削除されている。
- MV-1A 対戦BIOS装備以外はMV-1FZとほぼ同等。
- MV-1B 基板よりソフトの方が大きく、かなり小型化されている。BIOSは従来のDIP40ピンからSOP40ピンに変更されている。
- MV-1C MV-1Bに比べると基板のサイズは大きい。国内仕様のBIOSが載っているものも存在するが、大多数は海外仕様のBIOSが載っている。
複数スロットの物は専用筐体に組み込まれて販売されたものであり、JAMMA規格と一部端子が異なる。いずれも本体に対してソフトは垂直に刺さる。
- MV-2F メモリーカードスロット装備、メモリーカードユニット(MV-IC)装備可能、いずれも非装備の3種類が存在。家庭用ネオジオコントローラー装着可能、ステレオミニジャック出力端子装備。スロットは2つ。
- MV-4F メモリーカードユニット(MV-IC)装備可能、家庭用ネオジオコントローラー装着可能、ステレオミニジャック出力端子装備。スロットは4つ。
- MV-6F メモリーカードユニット(MV-IC)装備可能、家庭用ネオジオコントローラー装着可能、ステレオミニジャック出力端子装備。スロットは6つ。
カスタム基板
- MV-0 セキュリティ強化及び販売価格の調整のため、カートリッジ方式を取りやめ一枚基板としたもの。マシンスペックそのものに変化は無いが、前述のセキュリティ機能を強化するためのチップが追加され(従来の製品に比べ多少ハッキングを遅らせる程度であったが)ハッキング対策が取られた。
ROMソケットはDIPタイプではなく、振動で接触不良が多発する為にホットボンドで固定されている。 採用されたタイトルは『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』『メタルスラッグ5』『ザ・キング・オブ・ファイターズ2003』の3作品だけで、その後のタイトルはカートリッジに戻っている。なお、この3作品は海外向けの後期出荷版のみであるが、 通常のカートリッジでも発売されている。
[編集] その他
SNKはMVSの発売にあたり、アーケードゲームとしての一般的な販売手法の他に、設置を希望する店舗に無償で筐体を貸し出しその収益を徴収するという独自の手法を取っていた。このため、ゲームセンターだけでなく様々な店の一角でMVS筐体を見ることができた。
一本スロットの物では、MVSに供給された麻雀ゲームソフトに対応するべく、MVS標準のジョイスティック+4ボタンを麻雀専用コントロールパネルに置き換え、麻雀専用台にした物も存在する。しかしながら、このようなMVS筐体は使用可能なソフトの数が限られてくる上、複数の麻雀ゲームが搭載できないことから、多く出回ることは無かった(MVSに於いて、麻雀ゲーム自体の数が少なかった事も背景にあった)。また、MVS対応の麻雀ゲームは基本的に標準筐体で操作することを前提としていたという理由もある。
[編集] 参考文献
- ALL ABOUT SNK対戦格闘ゲーム 1991~2000 (ISBN 4-88554-677-X)