Me 309 (航空機)
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メッサーシュミットMe 309 は第二次世界大戦時にドイツで試作された単発単座レシプロ戦闘機。Bf109の後継機として1940年試作指示が出され、1942年7月に初飛行した。当時の単発戦闘機としては珍しく意欲的な前輪式降着装置を持ち、胴体に引き込み式の冷却器を備えた洗練されたスタイルであった。しかし、ラジエータの加熱や機体の安定不良など欠点が多く是正作業に取り掛かったが、Me262の優先生産方針もあって4機の試作のみで開発中止になった。試作機の一部はMe262開発のための諸テストに転用された。
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[編集] 技術的特徴
Bf109は主脚の間隔が狭く離着陸時の安定性に難があった。そこで本機では主脚を主翼に取り付け内側に引き込む形式として主脚間隔を広くした。更に降着装置を前輪式とし、地上姿勢での前方視界を確保。後方視界についても涙滴型キャノピーを採用し、キャノピー後端から尾翼にかけて胴体をなだらかに低くして視界を妨げないようにするMe262にも共通するデザイン手法を採り入れた。これらBf109の弱点を改善した上で引き込み式ラジエータ、与圧キャビンを備え、強力なエンジンを搭載することで飛行性能の向上を図った。また重装備の機体を短距離着陸させる為、プロペラは逆ピッチまで可変できる様になっていた。
[編集] エンジン
搭載するエンジンはDB603系、DB605系、Jumo213系が検討された。特にDB603H[1]搭載型は性能計算値で緊急出力時860km/h以上の高速を発揮することになっていた。試作1号機V1はDB605A-1を搭載したとされる。
[編集] 武装
機関砲の装備位置や口径は諸説あるがメッサーシュミット社の提案では以下の3タイプとなっている。
- 戦闘機型(Leichter Jäger)
機首上面MG131×2、プロペラ軸内砲(モーターカノン)MG151×1
- 駆逐機型(Leichter Zerstörer)
機首上面MG131×2、プロペラ軸内砲MG151×1、主翼付け根MG131×2、MG151×2
- 戦闘爆撃機型(Jagdbomber)
機首上面MG131×2、プロペラ軸内砲MG151×1、主翼付け根250kg爆弾×2
[編集] 先行テスト
本機で新たに採用する技術は5機のBf109Fを改造して先行テストが行われた。各機の型式とテスト内容は以下の通り。
- Bf109V23:前輪式降着装置。
- Bf109V24:引き込み式腹部ラジエータ。
- Bf109V30:キャビン内空調設備。
- Bf109V30a:与圧キャビン。
- Bf109V31:幅広の主脚間隔と腹部ラジエータ。
[編集] 評価
1942年6月初頭に完成した試作1号機Me309V1の社内テストが開始されると次々と問題が発生する。まず地上滑走の際に前輪が激しい首振りを起し速度を上げると蛇行することが判明し、この対策に1ヶ月以上を費やした。7月18日には初飛行を行うが、収納した前輪とラジエータの位置関係が悪く、ラジエータに充分な量の空気が当たらなくなり冷却水が過熱して、わずか7分間で緊急着陸を余儀なくされる。先行テスト時に前輪式と腹部ラジエータを別の機体でテストを行ったことの弊害であった。その後のテストでは前輪の首振りは改善したが機体の方向安定性そのものに問題が有り、離陸滑走中に滑走路をはみ出したり、高速飛行中も直線飛行の維持が困難だった為、垂直尾翼の面積を拡大した。更に着陸速度を下げる為プロペラを逆ピッチにしたところ、急激に速度を失い機首から滑走路に叩きつけられ前輪を折損する事故を起した。逆ピッチを使用しない場合、接地速度は200km/h近くにもなり着陸操作は困難を極めた。試作2号機V2に至っては初飛行時に着陸事故で全損している。
1942年11月空軍によるテストが開始されるが一ヶ月も経たない内に早くも絶望的な酷評を受ける。11月末の報告書では舵の重さ、着陸の難しさから平均的技量のパイロットには取扱いが困難なことが指摘され、より優秀なFw190Dの実戦投入が近付く中でBf109Gより50km/hほど速いだけのMe309の存在意義は薄いと結論付けられた。実際Bf109Gとの模擬空戦では旋回性能で劣り、高速で逃げるしかない有様だった。1943年3月試作3号機V3が初飛行したが、続く試作4号機V4の完成を待たずして同月中に計画中止となった。
[編集] Me609
1942年12月メッサーシュミット社が提案した、2機のMe309を主翼と水平尾翼で連結したいわゆる双子機(Zwilling)。F-82ツインムスタングと同じ手法だが左側の胴体にしか操縦席がない単座型だった。ラジエータは固定式に変更されている。武装は左右の胴体のプロペラ同軸砲に30mm機関砲MK103を各1門、連結された中央翼に30mm機関砲MK108を2門、250kg爆弾2発か500kg爆弾1発を搭載する予定だった。基本となるMe309が不出来なので計画のみで終わった。
[編集] スペック
- Me309V-2
- 全長:9.46 m
- 全幅:11.00 m
- 全高:3.45 m
- 翼面積:16.55 m²
- 全備重量:4,250 kg
- エンジン:ダイムラー・ベンツDB605B 1,475hp
- 最大速度:733 km/h[2]
- 実用上限高度:11,400 m
- 航続距離:1,400㎞
- 武装[3]
- 30mm機関砲×1
- 20mm機関砲×2
- 13mm機関銃×2
- 乗員 1名
[編集] 脚注
- ^ 実際に生産されたDB603にHという型式は存在しない。計画のみのエンジンと思われる。
- ^ 試作何号機の記録かは不明だが、実測値では578km/h。
- ^ 武装については30㎜砲をモーターカノンとしてプロペラ軸内に装着して次の3タイプとしたとの説も有力である。
- 30mm×1、13mm×2、の標準タイプ
- 30mm×1、13mm×4、20㎜×4の重装備タイプ
- 標準タイプに250kg爆弾2個を翼下にもつ急降下爆撃機型。が計画された。
- ↓※生産国であるドイツ版ウィキペディアでは、モーターカノン一門他装着とある。
- Militärische Ausrüstung: Bewaffnung mit 1 x 30 mm MK 108 Motorkanone, 2 x 13 mm MG 131 über dem Motor, 2 x 13 mm MG 131 in den Flügelwurzeln außen und 2 x 20 mm MG 151/20 in den Flügelwurzeln innen.
[編集] 参考文献
- 小室克介「世界未発表オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第7回メッサーシュミットMe309“バトンを受けそこなった第三走者・戦闘機編”」
- 文林堂『航空ファン』2004年7月号 No.619 p96~p101