8ミリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
8ミリ(はちミリ)には、次の意味がある。
- 8mm(ミリメートル)の長さ。
- 8mm幅のフィルムを利用した映画。(後述)
- この事から転じたジョエル・シュマッカー監督、ニコラス・ケイジ主演の映画。
- 8mm幅の磁気テープを利用したビデオ。 → 8ミリビデオ
- 8mm幅の磁気テープを利用した、コンピュータ用のデータ記録装置、あるいは記録メディア。 → Exabyte(Data8)、AIT
- 8mm幅の磁気テープを利用した、オーディオ用のマルチトラックレコーダー。 → DTRS
8ミリフィルム映画( - えいが、通称8ミリ)とは、8mm幅のフィルムを利用した映画。映写にあたって免許資格が不要であり、取り扱いが簡便なことから、主に家庭用に1932年から発売され、さらには教育用や産業用などでも広く使われた。
1965年頃にはコダックや富士フイルムによって数々の改良がされ、1970年代にピークを迎えたが、1980年代に入り、家庭用の VHS ビデオテープを小型化した VHS-C や8ミリビデオが発売されると市場がなくなり、フィルムや機材の生産、現像サービスの多くが中止された。
一般家庭用としての役割を終えた後も、アマチュア映像制作者(特にアニメーションや特撮の自主制作を行うもの)にとっては、ビデオでは出せない味がある、物理的にフィルムを切り張りすることで編集に高価な機材を必要としない、1コマずつの撮影が出来た、現像済みのフィルムを針などでひっかくことで透過光や光学合成に似た効果(「シネカリグラフィ」と呼ばれた)を出せる、などの利点があった。
しかし、家庭用デジタルビデオ MiniDV の登場とパソコンの高性能化・低価格化でデジタル映像編集が容易になり、近年では前述の長所も8mmだけのものではなくなってきた。かえって8mmでは、現像やフィルム代といった感材費や、現像に一定の時間を必要とする、などの手間と費用が嫌われて、利用者は減っている。
なお、テレビドラマ用には面積が4倍の16ミリ、劇場用映画には面積が16倍の35ミリが使用されるのが一般的である。
[編集] フィルムの規格
8ミリフィルムには大別して白黒とカラーに分かれ、そのほとんどがリバーサルフィルムである。カラーフィルムには自然光での撮影に適したデイライト型と、白熱灯などの人工光での撮影に適したタングステン型が存在する。撮影時の光源によってフィルムを選択する必要がある。
フィルムの横に磁性体を塗布してあり、画像の撮影と同時に音声の録音が可能な「サウンドフィルム」とよばれるフィルムがあった。フイルムの両端ぎりぎりに2トラックのステレオ録音が可能な製品もあったが、ビデオカメラの普及にともない現在はシングル8、スーパー8とも製造を中止している。
[編集] ダブル8
16ミリフィルムの半分の幅を交互に使って往復撮影を行ない、現像後、半分に切って8ミリフィルムとした。撮影の途中でリールを交換する必要があり、ダークバッグの用意が欠かせなかった。
[編集] スーパー8
コダック社が開発した規格。従来のダブル8と同じアセテートベースを採用している。ダブル8との相違点はパーフォレーションを小さくし、その分、画像面積を約1.5倍に拡大、また16コマ/毎秒が標準であったフィルム走行速度を18コマ/毎秒と早めた。さらに高級機種においては24コマ/毎秒という商業映画と同じ滑らかな動きの撮影・映写を可能とした。カートリッジ形式を採用しており、内部にプレッシャープレートを内蔵しているため、ダブル8のようにゲートにフィルムを通す手間がなくなった。また日中でもフィルムのカブリや感光をおそれることなく、カメラにフィルムを装填できるようになり、カートリッジの切り込みによってフィルム感度の設定を自動にすることができた。しかし、フィルムの走行に一軸構造が採用されているために、フィルムの巻き戻しが不可能になってしまい、オーバーラップなどの特殊効果ができなくなってしまったが、のちにカメラメーカーの努力によって一部制限があるものの巻き戻しを可能にした。スーパー8のカラーフィルムには基本的にタングステンタイプのフィルムしかないが、カメラに内蔵されたフィルターによって太陽光下でも撮影できるようになっている。発色のよさから根強い人気があり、フィルムは現在でも販売されている。2005年現在、一部のフィルムのみ日本国内で現像することが可能である。
[編集] シングル8
富士フイルムが開発した。パーフォレーションや画像の寸法などはスーパー8とほぼ同じだが、こちらはPETベースを採用しており、従来のアセテートより薄く、強度が強くなっている。スーパー8とは厚みが違うためシングル8とスーパー8をつなぐと映写時にピントがずれる。マガジン形式であり、VHSテープの様に2軸で走行するため自由に巻き戻しなどができる。現在はサイレントフィルムのみが販売されているが、現像後に磁性体を塗布するアフレコ仕上げというのが行われており、映写機などで後から録音することはできる。2006年現在、現像は日本国内では、東京調布市にあるフジカラーサービス東京現像所と墨田区にある「レトロ通販(有限会社レトロエンタープライズ)」でのみ行われている。
- 小型カメラのテレビCMに、後に参議院議員となる扇千景が起用され、「私にも写せます」は当時の流行語となった。
カメラの出荷停止後も販売を継続していたが、富士フイルムでは2006年4月25日に、2007年3月をもってフィルムの販売を、2008年9月をもって現像サービスの終了を発表した。しかし、その後映画関係者や文化人らで作る「フィルム文化を存続させる会」が結成され、大林宣彦監督らを発起人に約300人の賛同人を集め、事業存続を求めて同社と話し合ってきた結果、同社内でも存続の方策を検討することとなり、今後も設備を更新、修理し、数年をめどに販売を続けることが決定した。
- FUJIFILM シングル8 http://www.fujifilm.co.jp/single8/
- フィルム文化を存続させる会
- FUJIFILM 8mmフィルム
- シングル-8用フィルム 販売および現像終了のお知らせ http://fujifilm.jp/information/20060425/index.html (後日撤回)
- シングル-8用フィルム「FUJICHROME R25N」「FUJICHROME RT200N」販売および現像サービス終了延期のお知らせ 平成19年1月10日
[編集] 機材
撮影および映写に必要な一般用機材は生産終了している(下述※)。入手には中古カメラを扱う店舗やオークションなどで中古品を探さなければならない。 ただし、例外的にステレオスプライサー、スプライシングテープに関しては販売の継続が続いている。
代表的な機材として、
- 8ミリカメラ※(付属機器として、レリーズ、電磁レリーズ、各種フィルタ、アングルファインダなど)
- 三脚
- 照明機材
- エディタ(編集機)※
- スプライサー※(8ミリフィルムを任意の箇所で切断、あるいは接着する機材。付属品としてスプライシング・テープ。)
- 映写機※
- スクリーン
などがある。
[編集] 外部リンク
- レトロ通販(生フィルムの販売及び現像サービスなど)
- 8mmFILM大百科(機材が中心)
- ムエン通信(総合情報、古い機材のマニュアルなど)
- 8ミリ映画制作マニュアルWIKI(8ミリ映画制作のガイドブック。特に初心者にわかりやすい)