2の平方根
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2の平方根(2のへいほうこん)は、次のように書かれる。
この数は実数であり、OEIS(On-Line Encyclopedia of Integer Sequences、オンライン整数列大辞典)では十進記数法の小数点以下65桁までで次のように著されている。
- 1.41421 35623 73095 04880 16887 24209 69807 85696 71875 37694 80731 76679 73799...
おそらく最初に知られた無理数であり、幾何学的には辺の長さが1の正方形の対角線の長さである。代数方程式 (例: x2 − 2 = 0) の解の一つであり、代数的数である。平方根機能のない安い電卓においては、速算の近似値として99/70 (= 1.41428571…) を使うことがある。これは円周率の速算近似値22/7 (= 3.1428571…) より近い。語呂合わせでは「一夜一夜に人見頃(ひとよひとよにひとみごろ)」などがある。 また、連分数で表記すると
となる。 なお、白銀比はで表される。
[編集] 歴史
バビロニアの石板 YBC 7289 (紀元前2000 - 1650年ごろ)に、2の平方根の近似が六十進法で四桁の精度で与えられている。
これは十進法では六桁の近似精度である。古い時代のうちで精度の高い近似としてほかに、古代インドの数学者によるものが知られており、スルバ・スートラ(紀元前800 - 200年ごろ)では、ニの平方根が「基準の長さからその三分の一だけ増やし、さらにこの三分の一のそのまた四分の一から、この四分の一の34分の一だけ取り去ったものを加える」として与えられている。これはつまり、
をあたえていることになる。
無理数はピタゴラス学派のメタポンタムのヒッパサスによって発見されたとされている。通説では、ヒッパサスが無理数を発見したのは2の平方根を分数として表そうと試みていたときであり、彼は2の平方根の無理性の(おそらく幾何学的な)証明をあたえたといわれている。ところがピタゴラスは(有理)数の絶対性を信じていたため無理数の存在を受け入れることができなかった。ピタゴラスは論理的に無理数の非存在を示すことはできなかったが、その信念から無理数の存在を受け入れることができず、ヒッパサスを溺死の刑に処したとされている。
[編集] 無理数であることの証明
以下では、一般によく知られている背理法を用いた証明を掲載する。
が有理数であると仮定する。
すると、は互いに素である(公約数を1以外に持たない)整数m、nを用いて
と表せる。
この両辺を2乗すると
よって
となる。これより、は偶数なので、も偶数であることがわかる。
よってmは整数pを用いて
と表せる。この等式の両辺を2乗すると
となるので、(2)の式に代入すると
よって、両辺を2で割って
である。これより、は偶数なので、も偶数である。
以上より、m、nともに偶数であることがわかったが、これはm、nが互いに素であるという(1)の式に矛盾する。
よって、最初の仮定が誤りだったので、は無理数である。(Q.E.D)