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電子工作 - Wikipedia

電子工作

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

電子工作でんしこうさく)とは、大量生産を目的としない電子機器の設計や製作のことである。趣味や小規模の実験・試作を目的として行われる。

目次

[編集] 概要

電気工学電子工学の分野に限らず、理工系の研究者技術者が習得すべき基本技術の一つと考えられることもある。また、研究者・技術者の中には、子供の頃から電子工作を趣味として行ってきた者も多く、電子工作を通じて養われたセンスが業務に役立つことも多い。かつてはラジオ音響機器の製作に代表されるようなアナログ回路が主流であったが、現在ではコンピュータメカトロニクスなど多様な対象分野がある。自由研究技術家庭の実技として行われることも多い。

従来は男性向けの趣味とみられることが多かったが、女性向けの書籍やキットも発売されている。ただし、パソコンプラモデルなど、比較的層が近い趣味で男性向け趣味とみられていたものに比較すると、女性のホビイストの割合が少ない。

[編集] 形態

初心者の場合には、組み立てキット(必要な部品一式と説明書をまとめた製品)を利用するか、書籍や雑誌から希望する製作記事を選び、それに従って製作することが多い。キットや製作記事には部品の一覧表や実体配線図、部品の規格などが詳しく説明されている。プリント基板を製作するためのマスク紙(銅箔面のパターンを印刷したトレーシングペーパー)が付属されていることがある。

初心者向け電子工作の定番として、次のようなものがある。

さらに技量が進歩すれば、自分で回路を設計して製作したり、既存の機器の動作を分析して改良を加えたりすることができる。

特にアナログ回路では、簡単な回路でそれほどの高性能が必要とされない場合、アマチュアレベルにおける基本的な設計・製作技術は現在までの30年にわたり大きな変化は殆ど無い。そのため、古い文献を参考にした場合で同型の部品が見つからなくても、互換性のあるものや代替品があればそのまま製作できることが多い。

製作技術としては、一般にデジタル回路よりもアナログ回路の方が難しいとされるので、デジタル回路の製作を目的とする場合でも、アナログ回路での経験を積んでおくのが良いと言われている。

[編集] 部品の調達

電子工作に用いる部品を入手するには次のような方法がある。

部品の入手については、次のような状況がある。

  • メーカーは採算が合わない製品を直ちに製造中止する傾向があることから、アマチュアには入手が難しくなっている電子部品も多い。
  • 大きな電気街においては、電子部品の需要が減ったことから、専門店の閉店・廃業が相次いでいる。しかし、パソコンのパーツを扱う専門店が増えており、電子工作用の部品も扱う形で、地方都市を中心に新規に出店していることがある。また、Digi-Keyのような外資系のインターネット通販業者も進出しており、こちらを利用するものも増えている。
  • 電子部品は同じ規格の製品でも店によって価格が異なる。また、大量に買うと単価が非常に安くなることがある。
  • 従来から、電子工学の専門誌に、通信販売の広告として非常に細かい字で書かれた部品リストが多く掲載されている。インターネットの普及により、掲載数が減りつつある。

[編集] 製作の方法

主に電子工作をする上での製作方法は以下が挙げられる。

  • 基板(ユニバーサル基板やプリント基板など)に電子部品を差し込み、裏面ではんだ付けをして通電させて製作する。これがもっとも壊れにくく、一般的だと思われる。
  • 部品のリード線の硬さを利用し、空中配線する。衝撃などにも弱く、実験の為の仮組みに用いられる程度である。
  • エッチングしていない全面銅箔の基板(生基板またはプリント板と呼ばれる)に直接はんだ付けして製作する。この方法は特に高周波回路を製作するときによく使われる。アース部分が広くなるのでグラウンドインピーダンスが下がり、高周波回路を製作するときには好都合であるが、比較的小型の部品を使わなければならず、銅箔が広い為はんだ付けするとき熱が逃げ易く技術が必要になるが、プリント基板を作る必要が無く、費用の面を考えれば最良の方法である。
  • ラグ板を使ってラグに電子部品を接続して配線する。ホームページでも多く紹介されている方法である。
  • ブレッドボードを使って電子部品を穴に挿して配線する。はんだ付けが必要なく思い立ったらすぐに実行できるメリットがある。高周波回路には不適。また、チップ部品が使えない。
  • 電子部品一つ一つに導線をはんだ付けし、部品同士を通電させて製作する。この方法を使用すると嵩張ってしまうことがあるが、放熱の関係上、こちらが一番有利になることもある。

[編集] 技術的な特徴

工業的な電子機器の製作と比較して、電子工作には次のような技術的な特徴がある。

[編集] 近年の状況

  • 近年は粗大ゴミの収集が有料化されている地域が多いため、ゴミ集積場から電子機器を拾い集め、部品を取り出す楽しみ方が難しくなっている。また、不要となった大型の自作機器や大量の電子部品など、資源回収として受け付けられない不燃ゴミの処分方法が問題となっている。
  • 昔の子ども達は、身近に電子工作を行なっている大人がいなくても、地域の電気店や模型店などで電子工作の技術に触れる機会があった。
  • 中高生などが田んぼ畦道や電気店裏に放置されていたTV等から真空管等使えそうな物を抜き取り自作機器に利用するという事も多かった。また学校のクラブ活動の一環として廃品を回収し部品を分別リサイクルする事も有った。感電、火傷はごく当たり前で、時には部品の破裂等の失敗を経験しながら理解を深めていった。
  • 近年は理科離れに関連して、子どもを対象とした電子工作キットの製作教室などが多く開催されているとはいえ、キットの製作よりも高度な技術について指導を受ける機会や場所が少ない。なので、“電子工作をしたくても出来ない”という状況である。戦後から1970年代までに発刊されていた電子技術やラジオ関係の雑誌も、1990年代以降ほとんどが廃刊(「模型とラジオ(科学教材社)」「初歩のラジオ(のち「SRハムラジオ」、誠文堂新光社)」「ラジオの製作(電波新聞社)」など)あるいは路線変更(「無線と実験」はオーディオ雑誌に変貌)してしまった。近代の電気技術を支える根本となる“電子工作”が出来なければ、今後の発展が望めないということも考えられる。(最近騒がれているオタクと言う言葉も電子工作という一つの趣味を突き放している原因になっている。「電子工作はパソコンオタクの人がするものだ」等という間違った解釈を植え付けられ、「電子工作をすると自分もオタク呼ばわりされてしまうのではないか」という後ろめたさから電子工作は一般の人には白い目で見られがちだが、電子工作は日本の電気技術を支えてきた重要な過程であり、電子工作があってこそ今の日本は成り立っているといえる。)
  • 火傷の恐れがあるなどの理由から、学校の技術科で半田ごてを使わなくなったという。
  • 集積回路やデジタル処理の発達で、身近にある電子機器のブラックボックス化が進んでしまい、動作原理が理解しにくくなっている。
  • 秋葉原の電子部品店の縮小(日曜に休業する店が増えた)。
  • 自分でパーツを集めて電子工作を行い製作させたとしても、それと同等の物を購入した方が安く、高性能な物を得られる場合が多くなった。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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