過マンガン酸カリウム
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過マンガン酸カリウム | |
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IUPAC名 | |
別名 | |
組成式 | KMnO4 |
式量 | 158.04 g/mol |
形状 | 深紫色結晶 |
結晶構造 | 柱状斜方晶系結晶 |
CAS登録番号 | [7722-64-7] |
密度と相 | 2.703 g/cm3, 固体 |
水への溶解度 | g/100 mL ( °C) |
融点 | 約 200 °C(分解) |
沸点 | °C |
出典 |
過マンガン酸カリウム(かまんがんさんかりうむ、potassium permanganate)は化学式 KMnO4 の無機化合物で、カリウム (K+) と過マンガン酸 (MnO4−) イオンより構成される。Mn の酸化数は+7、O の酸化数は−2、K は+1である。
分子量は 158.04 g/mol で、水、アセトン、メタノールに可溶である。固体では深紫色の柱状斜方晶系結晶である。においはなく強力な酸化剤である。
水への溶解度は 7.5 g/100 g (25 ℃) で、約 200 ℃で酸素を放ち分解する[1]。
目次 |
[編集] 歴史
過マンガン酸カリウムは1659年に発見された。初期の写真家の間では閃光粉として使用されていた。
[編集] 用途
過マンガン酸カリウムは実験室および工業の場面で多くの種類の酸化反応に用いられている。さらに他の化合物合成の試薬としても使用される。例として、薄い KMnO4 水溶液はアルケンを 1,2-ジオール(グリコール)に酸化する。より濃い過マンガン酸溶液は芳香環のメチル基をカルボキシ基に酸化する。またコカインを 100% 純粋に精製するのにも用いられてきた。分析化学では KMnO4 水溶液の標準溶液はその色が紫色のため、酸化還元滴定の滴定剤としても用いられる。深紫色の過マンガン酸は、酸性溶液中では酸化数+2を持つ薄いピンク色の Mn2+ (aq) 陽イオンに還元される。塩基性溶液中では過マンガン酸は酸化数+4を持つ茶色の沈殿物、二酸化マンガン (MnO2) に還元される。
過マンガン酸カリウム水溶液と塩酸プソイドエフェドリン水溶液からメトカチノンを生成する事ができる。薄い水溶液は洗口液 (0.25%) もしくは手の消毒液 (1%) としても利用される。ほかに、殺菌剤、消臭剤、魚類の寄生虫駆除、飲料水の処理、リン中毒の解毒剤、染料の用途が挙げられる。
第二次世界大戦時には、水溶液はヴァルター機関の反応触媒として利用された。また木パルプのκ価を測定する試薬として用いられる。
[編集] 注意
固体の過マンガン酸カリウムは非常に強い酸化剤であり、純粋なグリセリンと混合すると強い発熱反応が発生する。この反応はこれらが入っているガラスや他の容器を溶かすほど自発的に高温の燃焼となり、近くにある可燃性の物質に引火することがある。この反応は固体の過マンガン酸カリウムが多種の有機化合物と混合された場合にも発生し得る。過マンガン酸カリウムの水溶液は、特に薄い場合、危険性は低い。過マンガン酸カリウムの固体を濃硫酸と混合すると爆発性の酸化マンガン(VII) (Mn2O7) を生成する[2]。
過マンガン酸カリウムは衣服や手を染色するため取り扱いには注意が必要である。これは、過マンガン酸カリウムが還元されてできた二酸化マンガンのためである。衣服のしみは酸性にした亜硫酸ナトリウム(亜硫酸ガスの発生に注意、酸性の定着液を使用すると安全、処理後の洗浄を確実に)を使用して除去可能である。ただし、シュウ酸を使うこともできる。肌のしみは48時間以内に自然に除去されるが、肌に触れるとやけどを起こし、飲み込むと胃腸炎を起こす。さらに、固体の過マンガン酸カリウムと塩酸を混合すると、致死性の塩素ガスが発生する。
日本国では法令により危険物第一類、特定麻薬向精神薬原料に指定されている。アメリカではDEA規則により使用と販売が制限されている。
[編集] 参考文献
- ^ 久保亮五、長倉三郎、井口洋夫、江沢洋 『岩波 理化学辞典 第4版』 株式会社岩波書店、1987年。ISBN 4-00-080015-9
- ^ Cotton, F. A.; Wilkinson, G.; Murillo, C. A.; Bochmann, M. (April 1999). Advanced Inorganic Chemistry, 6th Edition. Wiley-VCH. ISBN 0-471-19957-5