通信の秘密
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通信の秘密(つうしんのひみつ)とは、個人間の通信(信書・電話・電子メールなど)の内容及びこれに関連した一切の事項に関して、公権力がこれを把握する事及び知り得た事を第三者に漏らすことなどを禁止する事であり、「通信の自由(つうしんのじゆう)の保障」と表裏一体の関係にあると言える。また、不特定多数への表現・情報の伝達にあたる検閲の禁止と対として考えられる場合も多い。
なお、近年の通信事業者の民営化により、本権利にも、私人間効力を認める考え方が優勢である。
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[編集] 電気通信における通信の秘密
憲法上の通信の秘密は政府など公権力に対する義務として課せられたものであるが、電気通信事業者に対しては、電気通信事業法第4条第1項で通信の秘密について「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。」として定めている。この義務は電話事業者のみならずインターネットサービスプロバイダなど、すべての電気通信事業者に課せられるものであるが、また一般個人に対しても課せられている。すなわち、一般個人であっても電話の盗聴などを行なうと電気通信事業法における通信の秘密を侵害したことになる。これに対する罰則は電気通信事業法第179条で「電気通信事業者の取扱中に係る通信(第164条第2項に規定する通信を含む。)の秘密を侵した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」と定められている。さらに同2項では「電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、3年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。」とあり、電気通信事業者による通信の秘密の侵害に対してはさらに重い罰が課されている。
なお機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされている。そのためインターネットサービスプロバイダのルーティングやメール配送などの行為はすべて通信の秘密を侵害しているとされている。ただし当事者の同意がある場合、そもそも通信の秘密の侵害とされないことから、オプションで提供するウイルスチェックサービスや迷惑メールフィルタリングサービスは通信当事者の片方である受信者の同意が取れていることから、通信の秘密の侵害にはあたらないとされている。また、通信の秘密の侵害が行なわれた場合でも、メールの配送など業務上必要な正当業務行為に当たる場合や、緊急避難に該当する(刑法37条)の場合などは、違法性阻却事由が存在し、違法とはされない。これによってインターネットサービスプロバイダは違法性を指摘されずにサービスを提供することが可能である。
[編集] 通信の秘密に関する最近の動向
2006年5月にぷららネットワークスがWinnyの遮断を発表したことに対し、総務省が通信の秘密の侵害に該当し違法であるという指摘を行なった。これについては、その後デフォルト・オンでWinnyの遮断サービスを提供するものの、その後利用者の希望に応じて遮断が解除できるなどの幾つかの条件を付して総務省が容認したとされる。その条件については基本的に「電気通信事業者が行う電子メールのフィルタリングと電気通信事業法第4条(通信の秘密の保護)の関係について」[1]の考え方が踏襲されていると思われる。また、迷惑メール(スパムメール)対策としてのOutbound Port 25 Blocking (OP25B)が、通信の秘密を侵害し、違法であるかについては総務省で2006年11月に、通信の秘密を侵害するが正当業務行為であるとして違法ではないという判断を下している。[2] インターネットサービスプロバイダが行なう各種の行為が通信の秘密の侵害として違法であるかどうかについては、電気通信事業関連の4団体(社団法人日本インターネットプロバイダー協会、社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟)が2007年5月に「電気通信事業者における大量通信等への対処と通信の秘密に関するガイドライン(第1版)」を策定した。
[編集] 海外における通信の秘密
意外な事に海外においては通信の秘密に関する憲法や法律上の規定を行なう例はあまり存在しない。わずかにヨーロッパなどで1990年代以降に民主化により憲法を制定した国に見られるにすぎない。アメリカにおいては、通信の秘密に相当する"Confidentiality of Communication"という言葉は憲法にも規定されておらず、また法的には存在しない。同様の概念は「プライバシーに対する合理的期待」として判例法上保証されているにすぎないと考えられている。
[編集] 大日本帝国の通信の秘密
大日本帝国憲法26条では法律に定められた場合を除いて信書の秘密が保障されていたが、日露戦争の後、内務省は逓信省に通牒して極秘の内に検閲を始めた [1]。更に1941年(昭和16年)10月4日には、臨時郵便取締令(昭和16年勅令第891号)が出されて法令上の根拠に基づくものとなった。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 郵政省『続逓信事業史』1961年、ほか。