総合感冒薬
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総合感冒薬(そうごうかんぼうやく)は、頭痛・発熱・のどの痛み・筋肉の痛み・咳・くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどといった、いわゆるかぜ症候群(普通感冒)の諸症状の緩和に効果を出すように、解熱剤(解熱鎮痛剤)と鎮咳去痰薬・抗ヒスタミン剤などを複合した医薬品である。日本では、現在一般用医薬品(大衆薬・OTC)として広く発売されている。剤形としては錠剤・カプセル剤・粉末(細粒・顆粒など)・飲料(シロップ・ドライシロップなど)のパッケージで発売されている。
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[編集] 概要
日本では、1950年代頃から解熱鎮痛剤と鎮咳去痰成分(エフェドリンなど)やビタミン剤・胃薬などを配合した製品が発売されており、大正製薬の「パブロン」・武田薬品の「ベンザ」・三共(現第一三共ヘルスケア)の「ルル」・エスエス製薬の「エスタック」・興和の「コルゲンコーワ」・中外製薬(現ライオン)の「アルペン」・グラクソ・スミスクライン/旧住友製薬の「コンタック」などの商品ブランドが有名であり、これらは発売から現在まで50年前後の長きに渡りブランド名が用いられている。また、ツムラやクラシエ薬品などの漢方薬メーカーが葛根湯や小青竜湯をかぜ薬として市販しており、ゼファーマの「カコナール」のように葛根湯をドリンクにしたものも発売されている。
- これら商品名については一般用医薬品を参照されたい
現在の総合感冒薬は基本的に解熱鎮痛剤・鎮咳去痰薬・抗アレルギー剤を含んだ製品が一般的であり、それに加えて薬草・漢方などを合わせた製品もある。なお、テレビCMなどで「眠くなる成分」と言われているのは有効成分のコデインや、クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミンのことを大概は指している。しかし逆手にとって「眠くなる」ように夜用の風邪薬には無水カフェインを加えず、朝・昼用には無水カフェインを加えた、「朝昼・夜」用2種類の風邪薬をワンパッケージにした製品も登場している(2003年発売の「コンタック総合かぜ薬 昼・夜タイプ」など)。
風邪は対症療法のため、薬を飲んだとしても十分休養することが望ましい。また、医師や薬剤師の了解を得ずに他の薬と併用すべきものではない。インフルエンザや急性中耳炎・急性副鼻腔炎などにも一時的に症状緩和などの効果はあるが、あくまで応急処置として、早めに医師の診察を受けるべきである。
医療用医薬品としては、1950~1960年代に大衆薬と同等の成分を配合した「ダン・リッチ」(住友製薬)「PL(顆粒)」(塩野義製薬)などが発売されている。現況は薬価引き下げに伴い製薬会社にとって殆ど利益が出ない製品となっているが、廉価でも効果があるとしてよく処方する医師もいる。なお「ダン・リッチ」についてはPPA問題(後述)に絡み2005年3月末をもって販売終了となっている。
また、「風邪」で症状が重い場合は医師が独自にステロイド剤・気管支拡張剤・抗ヒスタミン薬・抗菌薬・ビタミンBなどを調合して注射で投与することもある。
[編集] 副作用
主な副作用として、先述の「眠くなる成分」が含まれる製品を中心に眠気やだるさ(頭がぼーっとする感覚など)が表れることがある。これは体質や症状によって差が有るため服用してもまったく出ないこともある。重篤な副作用としては間質性肺炎・肝機能障害・アナフィラキシーショックや薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群・ライエル症候群)・喘息などの薬剤アレルギー症状、PPA含有製品による脳出血のリスク(後述)などがある。
このため服用後は自動車など乗物運転・機械類の操作や飲酒は控えるべきであり、添付文書にも注意事項として記載されている製品が大数である。
[編集] 広告・販売戦略
冬季の風邪シーズンに多く売り上げることからドラッグストアで目立つ位置に陳列されたり、特定の商品は大幅値引きしたり、ノベルティが貰えたりするなどの販促活動が活発である。また昭和30年代からは冬季を中心に風邪薬のテレビCMが放送されており、1980年代から現在にかけてはタレントを起用した各種広告が活発である。どの風邪薬も似たり寄ったりの成分であるため、イメージ戦略を通じて購買意欲を湧かせるものとされている。 さらに2000年代からは風邪薬のテレビCMの開始時期が8月末頃まで前倒しして展開されるようにもなっている。
[編集] アンプル入りかぜ薬事件
1950年代当時は、錠剤や粉末状とは別の剤形の、有効成分を水溶液に混合してアンプルに入れた「アンプル入りかぜ薬」が各社から発売されており、飲用することで即効性が有るなどしたため需要は有ったものの、解熱剤としてピリン系製剤(スルピリンなど)が多く含まれていたためショックなどのアレルギーで死亡する消費者が続出した。厚生省は1962年に製薬企業に発売停止や回収などを指示した。これは「アンプル入りかぜ薬事件」(薬害)と言われ、同時期に社会問題化したサリドマイド薬害の事も踏まえて、医療用医薬品の一般消費者向けの宣伝広告の制限・禁止されるようになる。なお、ピリン系製剤で副作用の頻度が少ないイソプロピルアンチピリンを主成分とした頭痛薬や総合感冒薬が即効性を売りに販売されているが、ピリン系製剤のアレルギー体質でなければ過度の心配の必要はない。
[編集] 有効成分・内容量
日本では、後に大衆薬として入手できる製品については安全性から一日あたりの服用量に制限を加えるようになった。これは同じ風邪症状で医師の診察の上処方される、解熱鎮痛薬や鎮咳・去痰薬、抗ヒスタミン剤などの標準的な一日の投与量よりも少なく設定されている。また、大衆薬として発売されている医薬品は安全性が高い有効成分のみ認められているので、現行の風邪薬でも殆ど20-30年以上前に開発された有効成分で構成されている。
医療機関の診察で、風邪の場合に処方されることが多いロキソプロフェンナトリウム(解熱鎮痛剤)や抗生物質・内服ステロイド剤は副作用や繁用の虞から一般用医薬品には一切含まれていない。ただし、風邪薬に含まれるアセトアミノフェンは大量服用すると中毒を引き起こし、コデインやエフェドリンも大量で麻薬・覚醒剤原料と成りうる点から、2000年頃より大量に購入する際に用途を聞かれたり、販売数を制限するよう日本薬剤師会などから通達されている。
いっぽう諸外国ではこのような規制が無いことが多く、OTCで売られている風邪薬でも効き目が強い成分・量で構成されている製品が多いので、もし海外で購入した風邪薬を服用する際は、説明書の服薬量より少なめにするなど考慮するべきである。
[編集] 主な有効成分
現在流通している総合感冒薬に含まれる主な有効成分
- 解熱成分
- アセトアミノフェン・イブプロフェン・イソプロピルアンチピリン(ピリン系)など
- 咳止め・気管支拡張成分
- リン酸ジヒドロコデイン・リン酸コデイン・dl-塩酸メチルエフェドリン・ノスカピンなど
- 去痰・消炎酵素成分(咳・痰・鼻水など)
- 塩化リゾチーム・カルボシステイン・塩酸ブロムヘキシンなど
- 抗ヒスタミン成分(くしゃみ・鼻水・鼻づまり・頭重など)
- マレイン酸クロルフェニラミン・フマル酸ケトチフェン・塩酸プソイドエフェドリン・塩酸ジフェンヒドラミンなど
- その他
- 無水カフェイン・ビタミンB1誘導体など
[編集] PPA問題
PPAとは塩酸フェニルプロパノールアミン (Phenylpropanolamine) の英略称で、日本では別名ノルエフェドリンとも言われる交感神経作用成分のことである。日本では認可された1956年より鼻づまりなどの症状に適応がある総合感冒薬やOTCの鼻炎薬に広く含まれており、交感神経を刺激することで鼻腔毛細血管の拡張を抑えて、鼻づまりなどを緩和する目的であったが、米国ではPPAを服用することで食欲抑制効果があるとされ(日本では認可されていない)、食欲抑制剤として大量のPPAを服用した複数の者が脳出血(出血性脳卒中)を発症し、死亡例もあったため、2000年11月にアメリカ食品医薬品局 (FDA) は米国でのPPA含有製剤の自主的な発売中止勧告を発した。実際のPPAは鼻腔の毛細血管のみならず心臓を通り、全身の血管拡張を抑えることで巡りが早くなり、その結果脳出血のリスクが高まるとしたからである。
日本でも情報番組や報道で「国内の複数のかぜ薬にも含まれている」と大々的に報じ、その連鎖で対応に追われパニック状態となるドラッグストア等も見られたが、当時の厚生省は米国ほど大量にPPAが含有されていないことを理由に、脳出血や心臓病・高血圧症の既往症者は投与禁忌とし、適正利用の指導を強化することで発売を継続することにした。
しかし、国内でもPPA含有かぜ薬の過剰摂取や高血圧などの禁忌患者で脳出血を発症する例が生じているため、2003年に厚生労働省がPPA含有製品をプソイドエフェドリン (PSE) に代替するように製薬会社に通知した事から、殆どのメーカーはPPAからPSEなどに代替した製品を現在販売している。PPA含有製品については外箱などに「PPA含有であること・投与禁忌者について・何か副作用が起きたら医師・薬剤師に相談すること」などと記載された紙が貼付されたり、同様の内容を薬剤師が購入者に伝えるなどした上で、在庫限りで販売されている。
この影響で医療用医薬品の「ダン・リッチ」もPPAを含有する薬品のため2005年3月末で販売終了となった。