アセトアミノフェン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。 |
化合物アセトアミノフェン(別名パラセタモール)は、解熱鎮痛薬の一つである。軽い発熱や、寒け、頭痛などの症状を抑える解熱剤、鎮痛剤として用いられる薬物の主要な成分の一つとなっている。一般に解熱剤は禁忌とされるインフルエンザの際にも解熱剤としてしばしば用いられるなど標準的な服用法では非常に安全な薬物であるが、その広い薬効のため、服用量が過剰となる事が少なくない。
なお、アセトアミノフェンはアスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と異なり、抗炎症作用を持っていない。また、正常な服用量では、アセトアミノフェンは非ステロイド性抗炎症薬と異なり、胃を刺激せず、血液凝固、腎臓あるいは胎児の動脈硬化などの影響がない。また、オピオイド系鎮痛剤(モルヒネなど)と異なり、興奮、眠け、多幸症などの副作用が無く、中毒、依存性、抵抗性および禁断症状に関する問題が完全にないという利点を持っている。さらに、アスピリンやイブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナクなどNSAIDによって引き起こされる「アスピリン喘息」の患者であってもアセトアミノフェンでは喘息を起こしにくいという報告もある。
目次 |
[編集] 歴史
アセトアミノフェンは1873年に初めて合成された。 医薬品として用いられたのは1893年である。
[編集] 作用機序
アスピリンと同様にシクロオキシゲナーゼ(COX)活性を阻害することでプロスタグランジンの産生を抑制するがその効果は弱い。解熱・鎮痛作用はCOX阻害以外の作用によると考えられてはいるが、詳細は不明である。
[編集] 副作用
人体内に存在するシトクロムP450はアセトアミノフェンを酸化し、アセトアミドキノンを生成する。アセトアミドキノンは強い求電子試薬であり、グルタチオン(GSH)のチオール基や細胞内タンパク質と反応する。従ってアセトアミノフェンを多量に摂取すると肝臓毒性が現れる。ただし、治療レベルならこれは問題にならない。他方、犬や猫(特に猫)ではグルクロン酸抱合能が低く、少量のアセトアミノフェンの摂取でも中毒を起こす。したがってアセトアミノフェンを含む解熱鎮痛剤を犬猫に投与してはならない。
- 肝障害
- アルコールとの同時摂取は肝障害を起こしやすく危険である。
- 血小板、白血球減少
- 悪心、嘔吐
など
[編集] 事件
1999年に日本の埼玉県で、市販の風邪薬とアルコールを大量に摂取させることによる殺人事件が発生した。警察は容疑者を絞り込んでいたものの、被害者の体内から毒物などの物的証拠を確認できなかったため逮捕に至らなかったが、風邪薬に含まれるアセトアミノフェンとアルコールを同時に大量摂取することで死に至る危険性があるという調査結果を得て逮捕に踏み切った。
米国ではアセトアミノフェンの大量摂取による中毒死が発生しており、日本でも前述の殺人事件の発生をきっかけに、日本薬剤師会から販売体制の徹底が薬局などに通知された。
[編集] 外部リンク
- アセトアミノフェンに対する誤解(d-inf 他では聞けないくすりのはなし)
- かぜ薬成分アセトアミノフェン、米国で100人以上の死者(WEBニッポン消費者新聞『危ない商品』)