系列電器店
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
系列電器店（けいれつでんきてん）とは、特定の電器・電機メーカーと関係が深い販売店をいい、日本では高度成長期の1960年代に普及し、ピーク時には最大30000店を超えたが、品揃えや低価格、広い駐車場を持つ強力な集客力を武器とする家電量販店の急速な台頭に伴って減少傾向となった。
しかし最近は日本人の少子高齢化に伴い、気軽に修理に対応したり、製品の操作方法を丁寧に説明したりと量販店では期待できない細やかなサービスを武器に、売り上げを伸ばす小売店も徐々に増えつつある。
こうした店舗で最も多いのは松下電器産業の「ナショナルショップ」で、全国に約1万8千店と全メーカー中最多である（うち5,600店は「スーパープロショップ」認定店）。他に「東芝ストアー」「日立チェーンストール」「サンヨー薔薇チェーン（現：スマイるNo.1ショップ）」・「三菱電機ストアー」・「ソニーショップ」等がある。
なお（松下以外の）他社系列店の経営環境は（量販店における販売価格の底なし暴落を食い止め安定した収益を確保すべく、意欲ある系列地域電器店を販促支援=サポートする体制、特に後継者育成・人材募集が皆無に等しい為）年々苦しさ・厳しさを増しており、（地域電器店としての生き残りをかけて）従来の他社系列店・他業種小売店から（意欲ある地域店への販促支援・人材募集育成が充実している）ナショナルショップ、あるいは量販店系のFCへ鞍替えする店主も現れている。
また近年は「我が家見直し隊」と題し、系列住宅メーカーと提携して新築・リフォーム・オール電化切替の相談に乗る電器店が急増している。
[編集] 営業車について
製品（修理済みの物も含む）を顧客の元へ届けたり、顧客宅から使用済み製品や修理に出す製品を店舗へ運ぶのに不可欠な営業車の殆どは狭隘道路へも入れる軽トラックや軽ワゴン車を使用している（店の規模にもよるが、多くの店舗は軽トラ・軽ワゴンを各1台ずつ・合計2台を最低限所有し、天候や製品の種類によってこれらを使い分ける事が多い）。
多くの電器店営業車は店名及び取り扱いメーカー名を車体に印刷しており、メーカー系列と店名が一目で分かるようになっている。但し車体への店名入れは（特注で）多額の費用がかかる事から特に売り上げの多い店に偏っており、新車購入当時のまま無地（覆面パトカースタイル）で使用されている店舗も多い。
なお車庫証明を所轄の警察署へ届け出る際、社用車は（黄色ナンバーでも）用途を「事業用」として登録し（多くは「40」・「41」・「480」・「483」ナンバー）、プライベート（自家用）車と明確に区別している。さらに保管場所を自店敷地内に確保出来ている店舗は少なく（来客用駐車スペースや使用済み家電製品の一時保管場所等といった付帯空間と併せて確保する場合は広い敷地が必要である為）、近隣の月極駐車場を借用している店舗も多い。
[編集] 系列店衰退に伴う大手電機メーカー提供番組の減少と売り上げ不振製品生産撤退の動き
かつて大手電機メーカーが多数スポンサーとなっていた民放のラジオ番組は今や松下電器提供の「歌のない歌謡曲」と「Panasonic Melodious Library（提供クレジットは”Panasonic ideas for Life”）」の1社2番組のみとなり、それ以外の他社提供番組（「日立ミュージック・イン・ハイフォニック」・「HITACHI FAN! FUN! TODAY」・「東芝今朝一番」・「シャープと共に」・「シャープニューライフサウンズ」「SONY Night Square」）は全て終了している（かつては夜・深夜・早朝番組のスポンサーになっていた時もあったがこれも全て降板）。特にFM放送は1980年代まで家電メーカーがオーディオに力を入れていたこともあってほとんどの主要メーカーがスポンサーなっていた。
またテレビ番組でもかつて東芝単独提供だった「日曜劇場」は現在（東芝が降板して単独提供から）複数社提供に変わった（「サザエさん」も以前の東芝単独提供から東芝＋複数社提供に変更）。よって現在放送中の大手電機メーカー提供テレビ番組は「ナショナル劇場（松下電器と松下グループ各社）」、「パナソニックスペシャル（松下電器）」、「日立 世界・ふしぎ発見!（日立製作所と日立グループ各社）」、「ブロードキャスター（東芝ほか各社）」、「世界遺産（ソニー）」、「はなまるマーケット（三菱電機ほか各社）」、「サンデーモーニング（三菱電機ほか各社）」、「サザエさん（東芝ほか各社）」、以上5社8番組である（「サザエさん」と単発特番「パナソニックスペシャル」以外は全てJNN=TBS系列の番組）。
さらに、現在TV・ラジオ共に単独提供番組を持つ電機メーカーは松下（「ナショナル劇場」・「歌のない歌謡曲」・「Panasonic Melodious Library」の3番組）、日立（「世界ふしぎ発見」）、ソニー（「世界遺産」）の3社のみとなり、他社（東芝・三洋・ビクター・三菱・シャープ・パイオニア）は（単独提供より料金の安い）スポットCM或いは複数社提供番組に回っている（単独提供番組を2つ以上持つ電機メーカーは現在松下のみ。日立とソニーは自社系列電器店がじり貧状態なので単独提供番組は「世界ふしぎ発見」と「世界遺産」のそれぞれ一つだけ。共に番組の高視聴率という追い風=プラス要素をかろうじて受け、自転車操業状態でスポンサーに付いている）。放送以外の分野でも三洋電機が（1988年大会からの）プロ野球オールスターゲーム、ビクターが（1982年大会からの）サッカーFIFAワールドカップ各々の公式スポンサーを何れも2006年を以て降板。現在はパナソニックがオリンピック（夏季・冬季）公式スポンサーとして残るのみである。
また（売り上げ不振で赤字が続く）不採算分野の製品生産・販売から手を引くケースも出始め、ビクターは2008年夏を以て日本国内及び欧州向けのTV生産・販売より撤退（同時に神奈川県横須賀市にあるTV生産工場を閉鎖し、従業員の大半は他地域工場へ配置転換）。パイオニアは赤字続きのプラズマTV分野においてパネルの自社生産を終了し、2008年夏モデル以降はパネル生産をパナソニックに委託する（同時に山梨県中央市と鹿児島県出水市にあるプラズマTVパネル工場を閉鎖し、従業員の大半は他地域工場へ配置転換、或いは松下グループ各社の工場へ転籍）。
東芝はHD-DVD式レコーダーの生産より撤退し、日立・ビクター・パイオニア・デノン・ソニー・三洋電機・NECに至ってはDVDレコーダーの生産そのものから撤退（ソニーは2008年5月14日を以てアイワ=AIWAブランド製品生産からも撤退）。三洋電機は赤字続きの携帯電話事業を京セラに売却し、三菱電機に至っては携帯電話の生産そのものから撤退した。
上記の事例から窺えるのは「意欲ある地域電器店を販促支援すると共に、既存系列店の後継者募集・育成と地域電器店新規開業を後押しする体制が十分構築出来ず、逆に量販店市場の割合が一方的に大きい電機メーカーは（急速な価格下落底なしの波に飲まれて）業績を悪化させ（=理想は莫大な生産コストを上回る安定した収益を確保して黒字商品を増やす事だが、実際は逆で量販店で売価が暴落しても生産・流通コストは減らない。よって赤字商品を抱えるメーカーは大規模なリストラ=生産ライン縮小と人員削減・工場再編を推進し）、ラジオ・テレビの番組スポンサーに就く余裕が無くなり、同時に赤字製品をも数多く抱え込むという悪循環が生まれる。よって系列店の黎明期から松下幸之助の肝煎りによって意欲ある系列店への販促支援と、幸之助自ら設立した養成所「松下電器商学院（現：松下幸之助商学院）」における後継者育成。のちに（幸之助の死後）登場した中村邦夫による聖域無き構造改革を惜しまなかった松下電器は業績・売り上げを着実に伸ばし（量販店より高い価格で売っても商売が成り立つSPS認定系列店の後押しにより、量販店における底なしの販売価格暴落に歯止めをかけ、収益を安定させて黒字商品を増やし）、ラジオ・テレビ番組のスポンサーとして君臨出来ている事になる。
さらに各社系列店が行う新製品展示会のラジオ・テレビCMも全国規模で大々的に放送されているのはナショナルショップの「ナショナル・パナソニックフェア」のみで、他社系列店展示会のCMは近年殆ど放送されていない（以前「世界ふしぎ発見」内では「きになる日立の気になるフェア」開催告知が日立製品CMと併せて放送されていたが、現在は日立製品CMのみ）。
