浄霊
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浄霊とは宗教的儀式の名称であるが、もともと浄霊(じょうれい)という言葉は、日本において、第二次世界大戦終結直後(昭和23年頃)に、世界救世教教祖岡田茂吉によって同教団内で使用する宗教的儀式の名称として造語されたものである。
この言葉は同教団の日本国外への勢力拡大により、現在では多数の非日本語話者が知る日本語のひとつになっているが、その後、日本国内の霊能者らがこの言葉を異なる意味で使用し始めたため、現在、「浄霊」という言葉には二つの意味がある。
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[編集] 霊能者の用語としての浄霊
霊能者が使用する用語であり、霊能者がもつ霊能力、またはそれを発揮するための儀式の名称である。
この用語は、除霊に類似した言葉として使われることが多い。その場合、除霊も浄霊も、人にとりつき災いをなす霊(悪霊や怨霊、水子の霊など)を除去するための霊能力、または儀式のことを指す。
二者の違いは、除霊が、悪霊や怨霊などと対決して強制的に排除しようとする霊能力の事であるのに対し、浄霊は、憑いている霊の不浄な部分を浄め、向上させ、または納得させることで、災いを止めさせ、解決しようとするものである。
その具体的な方法論は霊能者ごとに細かく異なり、霊を言葉で説得して納得させたり、霊を浄化するなどして霊の迷い・苦しみ・痛みを除去したり、経文や神界からの波動などの力で成仏・往生・昇天させ、本来行くべき穏やかな霊界に送り込むなど、考え方や方法は様々であるが、いずれの場合も、憑いている霊に起因する問題を、霊側の問題を解決することで平和的に終結させようとする霊能力の事である。
なお、浄霊という用語は、上記のような一般的な意味合いであっても、霊能者ごとに細かい解釈や理論が異なっており、さらに、上記以外の意味の儀式を浄霊と呼ぶ場合もあり、この用語は、必ずしも霊能者共通の意味合いをもっているわけではない。
統一性が乏しいのは、世界救世教が造語し、すでに存在していた浄霊という言葉を、それぞれの霊能者が独自解釈で流用したという歴史的背景に起因するためと思われる。
[編集] 関連項目
[編集] 備考
- 浄霊と同等の能力、儀式を、霊を救済するという意味の救霊と呼ぶ霊能者・団体もある。
- 品物や土地建物に対して行う儀式を、浄霊と呼ぶ霊能者も存在する。
- 浄霊を行う霊能者の中には、霊1柱に対し1回で完了させるのが本物であり、複数回行うのは、回数分の対価を得る事が目的の欺瞞行為だと主張する者がいる。
- 浄霊を行う霊能者の中には、自殺者・癌患者の霊を救済できるのが本物であると主張する者がいる。
- 浄霊を行う霊能者の中には、自分以外を全て偽物と決めつける霊能者は偽物であると主張する者がいる。
- インドの仏教では人は7日に1度ずつ7回の転生の機会があり、例外なく49日以内に全員が転生すると考えられているために人間の怨霊は存在しない。しかし、日本では神仏習合が幅広く行われているため、日本の仏教の僧侶・尼のなかには除霊などを収入源としている者も存在する。
[編集] 世界救世教の浄霊
日本の宗教法人 世界救世教およびその系列教団によって行われている宗教的儀式。
この儀式は、1対1で向かい合い、施術者が対面する相手に手のひらをかざすことで、神の光を相手の魂や身体に放射し、病気やさまざまな悩みを解決するというものである。いわゆる手かざしである。
世界救世教の浄霊の「霊」の文字は、幽霊という意味より、魂という意味合いが強い。霊能者用語の浄霊の影響で、憑依霊を退散させる儀式であると誤解を受けることがあるが、世界救世教の浄霊は、憑依霊ではなく、対面している人間の魂を浄める儀式である。
世界救世教はブラジルやタイ国を始めとし、国外約80カ国以上に教線を広げており、合計200万人以上の外国人信徒が浄霊を行っている。外国でも、浄霊は「ジョウレイ」と日本語で呼ばれており、世界救世教ではJohrei という表記でこの言葉の国際化を目指している。
[編集] 関連項目
[編集] 備考
- 宗教的儀式である浄霊には、科学的裏付けなど無いのは当然であるが、世界救世教では、浄霊の効果の科学的検証を、医学者や科学者らの助力を得て試みており、実際に研究者による学術論文なども発表されている。
- ヒーリングに寛容なイギリスでは、浄霊は健康保険が適用できる代替医療として認められている。
- 浄霊は宗教的儀式ではあるが、その習得に改宗の必要がないとされているため、他宗教の指導者、例えば、ブラジルなどのキリスト教国では牧師や神父が、スリランカなどの仏教国では僧侶が、彼らが世話をする信者や檀家らの苦悩を救済する方法として浄霊を習得し、実行している。