武田惣角
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武田 惣角（たけだ そうかく、安政6年10月10日（1859年11月4日） - 昭和18年（1943年）4月25日）は、日本の武術家。
大東流合気柔術、中興の祖といわれている。源正義の武号を名乗っている。
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[編集] 略歴
武田惣角は、武術家で宮相撲力士でもあった会津藩士・武田惣吉の次男として現在の福島県河沼郡会津坂下町で生まれた。若い頃から武術の修行に勤しみ、小野派一刀流（おのはいっとうりゅう）・*鏡新明智流（きょうしんめいちりゅう）、宝蔵院流槍術、相撲、柔術などを幼少より学んでいる。
13歳の時、父を説得して上京した惣角は、直心影流の剣術家であり、父の武田惣吉の友人であった榊原鍵吉（1830年～1894年）に入門して内弟子になった。ここで剣術の他、棒術、槍術、薙刀術、鎖鎌、弓なども学んだ。なお直心影流を修行したことについては否定説があり、佐川幸義や望月稔の証言では、直心影流ではなく鏡新明智流の桃井春蔵に学んだ可能性が高い。
10代後半のとき、兄の武田惣勝が若くして亡くなったことにより、武田家を継ぐために呼び戻された。しかし、惣角は家を飛び出して西南戦争の西郷隆盛軍に身を投じようとしたがかなわず、西南戦争後は九州を皮切りに各地で武者修行した。
明治21年（1888年）、福島県会津坂下町で結婚し、長男と長女をもうけた。(家系については後述)
かなりの達人であったらしく「会津の小天狗」と賞される程の実力を持っていた。一説によると、明治31年（1898年）、霊山神社の宮司をしていた保科頼母（元会津藩の国家老であった西郷頼母）より「剣術を捨て、合気柔術を世に広めよ」との指示を受け、[1]剣術の修行を止めて大東流合気柔術の修行をしたという。
その後、武田惣角は全国行脚して大東流合気柔術の技法を教授し、数多くの門弟を育てる。明治31年（1898年）以降については、英名録と謝礼録という記録が几帳面につけられているため、いつ、どこで、誰に武術を教授したか、かなり詳細な記録がある。武田惣角は生涯道場を持っての教授を行わず、請われれば何処にでも出向き、年齢・出身・身分の差別無く大東流合気柔術の技法を広めた（ただし、大東流を学び八光流を開いた奥山龍峰によると、謝礼の多寡により教える内容が違ったという）。
また全国行脚の最中に様々な他流試合やストリートファイトを行い、大東流合気柔術の実戦性を証明した。
大正元年（1912年）頃、武田惣角は北海道で再婚し、以後、北海道を本拠地とするようになる。
太平洋戦争中の昭和18年（1943年）に青森で客死、享年85。今日でも「近代最強の武術家」との評価は高い。
文盲であったらしく[2]、長文を書く際には門弟に代筆させていたという。
[編集] 脚注
- ^ 大東流の伝承史に付いては近年の武術史の研究と調査で否定的な意見が多い。詳しくは大東流合気柔術の項を参照のこと。
- ^ 弟子の証言によると読むことはできたようで、新聞を読むなど最新知識の取得に熱心であった。幼い頃に一生字を書かないと誓ったという
[編集] 家系
[編集] 祖先
清和源氏の甲斐武田氏の系譜。武田信玄が亡くなった翌年、武田氏と親交があった会津の蘆名氏に協力を求めるため、武田氏から蘆名氏に、武田国継が武田信玄の遺書を持って遣わされた。しかし、織田信長と徳川家康によって甲斐武田氏が滅ぼされてしまい、武田氏の血脈を残すために武田国継はそのまま会津に留まり、織田信長による武田の残党狩りを逃れるため、三浦平八郎盛重と名乗る。会津の蘆名盛氏に地頭として仕えた。
また、武田国継は会津で西光寺を建立している。武田惣角はこの武田国継の子孫。その後、伊達政宗が蘆名氏を滅ぼし、蒲生氏、上杉氏、加藤氏と会津の領主は変遷するが、武田家は会津に留まり、蘆名氏、蒲生氏、加藤氏、そして会津松平氏（保科氏）に仕えた。江戸時代には藩士ではなく神職や指南役として仕えたとも言われる。
- 蘆名氏は桓武平氏の三浦氏の支族であり、三浦は蘆名氏の本姓である。また、西光寺を建立したり、会津入りしたときの持参目録の伝承から、甲斐国からまとまった資産を持参した可能性もある。
- 保科氏（会津松平氏）は、甲斐武田氏の有力な家臣であった家系。
[編集] 祖父・惣右衛門
幕末、武田惣角の祖父、武田惣右衛門は、会津藩家老西郷頼母に御式内と陰陽道を教授した。また城内でも御式内を教授したという。京都の土御門家から内匠頭の官名を受けた陰陽師でもあった。諡は武老翁神霊。
[編集] 父・惣吉
文政3年（1820年）～明治39年（1906年）。諡は惣吉神霊。
武田惣角の父、武田惣吉は会津藩士であり、宮相撲の力士であった。武術にも学問にも堪能で、武田屋敷に隣接する西光寺に寺子屋を開くとともに、自宅の土蔵を道場に改築して武術や相撲も教えていた。元治元年（1864年）の禁門の変では手柄を立て、藩主松平容保から恩賞を受けた。戊辰戦争には250名を預かる力士隊の隊長として参加している。会津戦争では西郷頼母の隊に所属し、会津藩降伏後は越後国の高田藩預かりで1年半を過ごした。明治期には宮相撲の年寄り親方として相撲番付に名が残っている。四股名（しこな）は白糸。剣術、槍術、棒術、柔術の達人でもあり、小柄な武田惣角とは違って巨漢であった。
[編集] 兄、子孫
武田惣角はこうした武術に親しむ家系に武田惣吉の次男として生まれた。幼少期に戊辰戦争、明治維新を経験し、兄の武田惣勝（嘉永2年（1849年）～明治9年（1876年））は武術・学業を修めて神職に就いたが、惣角は学業に興味を持つことができず、もっぱら武術にばかり関心を示したという。惣勝が若くして亡くなったことにより、惣角は武田家を継ぐために呼び戻されたが、しかし、実家に落ち着くことはなく、明治21年（1888年）にコンと結婚して、明治22年（1889年）に長女テル、明治24年（1891年）に長男宗清が生まれた後は、また実家を出て放浪の身となる。大正元年（1912年）ごろに弟子であった山田スエと北海道で再婚、武宗、たえ、時宗、榮子、宗光、しずか、宗吉の4男3女をもうけた。後半生は北海道を本拠地として、三男武田時宗（大正5年（1916年）～平成5年（1993年））と武術家として生きた。
武田惣角の長男宗清は、会津坂下町に残った。宗清の曾孫武田宗光は現在も会津坂下町で大東流合気柔術教室を開いている。なお、会津坂下町の武田惣角の実家は惣角の弟が継いだため、宗清の家系は分家となった。
武田時宗は初め北海道警察に勤務し、後に山田水産に勤務。その傍ら、北海道網走市に大東館を開き、大東流合気武道宗家を称した。武田時宗には後継者たる男子がなく、晩年、体調を崩してから娘の横山信子を次期宗家として発表したが、まもなく、大東館は後継者問題で混乱し、分解してしまった。なお、宗清の曾孫である宗光は、初め会津坂下町で武田宗清が父の惣角から学んだ系統の大東流を祖父から指導されたが、後に時宗やその高弟の指導も受けている。時宗は山田水産を定年退職後、網走市から会津坂下町に通って宗光に指導する事もあった。
- 武田家の家系の由来、会津藩での地位、武田惣角の幼少期～青年時代までの経歴については明確な文書記録が非常に乏しく、疑問視する見解も多い。一方で、先祖代々同じ土地に土着する家系が多くを占める農村部の地域社会では、地域の出来事は100年、200年と地域住民で口伝されるため、根拠のない作り話も難しい。武田家や大東流の伝承のすべてが真実でないとしても、何か、話の種となる事実があったことは想像に難くない。
[編集] エピソード
- 惣角が手裏剣術を教えているとき足が動かない者が笑った。惣角が「何が可笑しい」と問うと生徒は「そのような尖ったものは突き刺さって当然だ」と言い、おもむろに硬貨を出し柱に投げた。硬貨は柱にささり、それをみてから手裏剣術を教えることはしなくなったという。
[編集] 参考文献
- 合気ニュース編集部『武田惣角と大東流合気柔術 改訂版』（合気ニュース）
