東北工業大学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
東北工業大学(とうほくこうぎょうだいがく、英称:Tohoku Institute of Technology)は宮城県仙台市太白区に所在する私立工科系大学である。
目次 |
[編集] 概要
工学部とライフデザイン学部、大学院を有する私立大学。 八木山(本部及び主に工学部)、長町(主にライフデザイン学部)の2つのキャンパスを有する。もともと、電気系の法人および郵政互助会(現・郵政福祉)が設立母体で、電気系の学科が中心と思われがちだが、後発の建設系学科(建築・建設システム)の他、デザイン・環境情報などの学生も多いのが特徴である。専門教育に力を入れ、東北6県や北海道・北関東出身者が在校生の大多数を占める。
郵政互助会が出資したこともあり「郵政互助会教育振興基金奨学生」の制度が利用できた。
付属図書館は八木山キャンパスの本館と長町キャンパスの分館の2つがある。そのうち八木山キャンパス本館は、主に八木山キャンパスにおける専門教育をバックアップするための蔵書数を誇る。
環境情報工学科研究棟及び教育棟が新規に建設され、近年、施設の一層の充実が確保される。またこれらの建築は、当大学建築学科の考案した最新の制震構造及び制振デバイスを採用した。またインテリア設計、ピクトグラムやサインのデザインをデザイン工学科が担当するなど内部の組織のみである程度完結していることからも教授陣や生徒の専門分野に対するスキルを裏付けるものであるといえる。先の宮城県沖地震時には、他の建築物よりも揺れが少ないことが実証され、技術的データに基づいた設計が実際の現象においてもファンクショナルに稼動したことを裏付けた。
大学における専門教育及び生徒の健康面やメンタル的側面を補完しバックアップする施設として付属工場、ウェルネスセンター、新技術創造研究センター、e-ラーニングセンター、ハイテク・リサーチ・センターが建設された。その中でもハイテク・リサーチ・センターは、文部省(現文部科学省)のサポートを受けた新技術の開発研究所として、東北地方全域で唯一のものとなる。それは、大学の補完機能という目的だけでなく、工学的見地から地域社会を担うInstitute(研究機関)としての機能が大幅に拡充されたことを意味している。
建築学科では12月に学外の施設において、有識者(過去の招聘例として磯崎新や月尾嘉男など建築、都市計画またITの専門家がいる)を招聘した講演会を催し、学生の建築に対する意識を喚起しているだけではなく一般市民に広く開放し、建築や都市デザインに対する興味や問題意識を醸成させる役割を担っている。
デザイン工学科は、プロダクトデザイン、インダストリアルデザイン及びウェブデザインなどにおけるスペシャリストを養成する、全国でも比較的数少ない学科である。
クラブやサークルについては、スポーツ関連の他にカートやモーターサイクル、電子技術などの、言わば工学(テクノロジー)系大学特有のクラブなどが存在する。
[編集] 沿革
- 1964年 東北工業大学設置認可。
- 1964年 東北工業大学開学する。工学部電子工学科及び通信工学科を開設する。
- 1965年 電子工学科・通信工学科の教職課程を開設する。
- 1966年 建築学科を開設する。
- 1967年 土木工学科・工業意匠学科を開設する。
- 1968年 土木工学科・工業意匠学科の教職課程を開設する。
- 1968年 計算センターが新規開設する。
- 1982年 情報処理教育センターが新規開設する。
- 1985年 情報処理技術研究所を新規開設する。
- 1990年 東北少年院跡地に二ツ沢キャンパスを新規開設する。
- 1992年 大学院工学研究科修士課程を開設する。通信工学専攻・建築学専攻・土木工学専攻を開設する。
- 1993年 大学院工学研究科修士課程電子工学専攻を開設する。
- 1994年 大学院工学研究科博士課程を開設する。通信工学専攻・建築学専攻を開設する。
- 1995年 大学院工学研究科博士課程電子工学専攻・土木工学専攻を開設する。 *1997年 東北地方の技術研究の核となるべく拠点の一つとして、ハイテク・リサーチ・センターを新築する。
- 2000年 大学院工学研究科修士課程デザイン工学専攻を開設する。
- 2001年 環境情報工学科を開設する。
- 2002年 大学院工学研究科博士課程デザイン工学専攻を開設する。
- 2003年 大学院工学研究科博士課程環境情報工学専攻を開設する。また香澄町キャンパス9・10号館が新築。土木工学科を建設システム工学科に変更する。工業意匠学科をデザイン工学科に変更する。
- 2003年 地域との交流拠点として仙台市青葉区の市中心部の一角に一番町ロビーが新規オープンする。
- 2004年 通信工学科を情報通信工学科に変更。
- 2005年 新技術創造研究センターが新規開設される。e-ラーニングセンターが開設される。
- 2006年 新1号館を建設。
- 2007年 電子工学科を知能エレクトロニクス学科へ変更。
- 2008年 ライフデザイン学部クリエイティブデザイン学科、安全安心生活デザイン学科 、経営コミュニケーション学科を開設する。香澄町キャンパスを八木山キャンパスに、二つ沢キャンパスを長町キャンパスに名称変更する。
[編集] 教育方針及び特徴
設立は1964年(昭和39年)と比較的古く、東北地方全域の企業を中心に首都圏、北海道に至るまで、卒業生を多数送り込んでいる。 各学科で多少の差はあるものの、1年次より専門科目を積極的に導入し、さらに少人数セミナ-形式の授業も比較的早くより取り入れてる点が特徴のひとつである。これは専門科目に早い時期から取り組むことで、専門科目の学力向上を図り、実戦応用力の強化する意図が読み取れる。
1年次前期より教養課程と平行して専門教育課程を順次進めていくことは、確固とした目的意識を持った学生のモチベーションを喚起するための学習プログラムであるといえる。
建設システム工学科においては、1年次より研究室でのセミナーを行う。また道路実験室を持つ研究室も存在する。また土木分野においてJABEE(日本技術者教育認定機構)の認定を受ける。
情報通信工学科は、3年進級時にオペレーティングシステムやコンピュータハードウェア・ソフトウェアを必修とする「情報コース」と、通信システムや電波工学を必修とする「通信コース」に分かれる。
なお、東北工業大学では、3年進級時と4年進級時に進級認定があり、学科によっては3年次進級時に約30~40%という、私立大学では異例の多さの留年生が発生することがある。これは、科目によっては安易に単位認定を行わない場合が多々あるためである。
入学後に極めて厳しい専門教育を行う点で、石川県の私立理工系大学の金沢工業大学などと酷似する点がある。入学後には早期より専門教育を行い、またその単位認定が厳しいため、卒業が難しい大学として認識されている。1年次より研究室に配属される学科が存在するという点も専門課程を最重要視するという観点より、それらを裏付けるものである。それを理由として入学時より全学科を通して、目的意識の明確な学生が多数存在する。しかし途中で挫折する者も少なくないという傾向もある。これらは「入ること」よりも「入って何を学んだか」に重点を置く本来の大学としての理念を貫く特異な傾向といえる。
付属の研究機関や新しい実験施設が充実しているため、大学における学問が単なる「机上の空論」ではなく、理論と実践を相互に反芻または反復して体系的、総合的に学習を進めることができる実践的なものであるため事実上の「生きた」学問を習得することができる。そのため比較的少人数教育が行われている。前記の理由により、学生にとっての大学生活は、充実するも厳しいものとなる反面、高度に専門的な知識体系を保持し卒業する者も存在する。
建築学科においては、他大学がまだあまり導入していない比較的早期よりCAD(Computer Aided Design=コンピューター支援設計)を積極的に導入しIT(情報技術)を利用した教育に早期より重点を置いていたことでも知られていた。また単科大学としては付属の高度な研究施設が充実していることも珍しく、それらがこの大学の技術的教育を重視する面として特質すべき点のひとつとなっている。
建築設計課題では、関連法規に適合するなどの体系的能力だけでなく、ドキュメンテーション能力やデザインに至るまでの多角的なセンスが重要視される。これは同校に存在するデザイン工学科を意識したものという向きもある。グループ設計などを導入し、建築設計という多種多様な知識のコーディネーションが必須とされる行為に欠かすことのできないチームワークと相互扶助、コラボレーション能力と統率力、そしてなにより協働の精神が養われ、そして試される傾向がある。
教養教育は人間科学センターが受け持っており、交通心理学の太田博雄、表象文化論の猿渡学など、特徴のある授業を展開している。
工学系学生では、特に必須となる、メンタル面、モラル面、そして何より環境意識を醸成させる面での教育も教養課程、専門教育課程共に充実している。環境意識が市民レベルまで浸透してきた昨今、特に重要視される技術的側面での解決法を養う点にウエイトを置いていた教育体制となっている。またそれは、エンジニアの精神の基礎となるべく健全な思考と的確な判断力を醸成し、もって正確な知識と才能によって「ものづくり」に貢献しようという主旨のものであるといえる。
情報通信工学科は平成18年度に「みやぎIT人材すくすく特区」による特例措置の適用の認定を受けており、2006年度以降の入学者については学科指定の科目を基準の出席率をもって履修後、修了認定に係わる試験に合格すると、「基本情報処理技術者試験」と「初級システムアドミニストレータ試験」の午前試験が免除となる。
工学部のすべての学科で高等学校「工業」の教育職員免許状が取得できる。また、電子工学科・情報通信工学科・環境情報工学科で高等学校「情報」の、デザイン工学科では高等学校「工芸」の教育職員免許状が取得できる。
仙台市青葉区に位置する一番町ロビーは、地域コミュニティーとの接点となるべく設置されたインターフェース機能としての交流施設である。そこでは、研究活動の一部や企画などをディスプレイしている。都心における気軽に立ち寄れるオープンな環境を市民に提供することで、結果として大学の活動を地域にアピールする拠点の一つとしての機能を果たしている。また、作品などが学外の市民に触れるチャンスを作ることで、学生にとっても地域に対する良い意味での緊張感と弛まない向上心を養う場として認識されているため大学におけるCSR事業的側面も併せ持つ。
インターンシップ制度を早い段階より導入し、早期より学生に技術的スキルの確立とキャリアアップの精神を促している。またこの制度の目的は、受け入れ企業とのタイアップにより、早期よりエンジニアとしての責任を自己認識させ、技術的観点からのソリューション能力と多角的処理能力を身に着けさせるプログラムとなっている。またその手段とチャンスを学生に与えるための便宜を図っているという特徴がある。
[編集] 設置学科及び専攻
ライフデザイン学部
[編集] 付属機関及び施設
- 新技術創造研究センター
- e-ラーニングセンター
- ハイテク・リサーチ・センター
- ウェルネスセンター
- 付属図書館
- 付属工場
[編集] 大学関係者
- 岩崎俊一:前学長、現理事長。工学博士・文化功労者・垂直磁気記録方式の考案者。
- 安達三郎:ノーベル化学賞受賞者田中耕一の東北大学時代の指導教官。工学博士。1992年から2001年度まで通信工学科(現、情報通信工学科)で教鞭をとっていた。元電子情報通信学会副会長。東北大学名誉教授。
- 虫明康人:東北工業大学第5代学長(1984-1989)、工学博士。東北大学名誉教授、元電子通信学会副会長、IEEEライフ・フェロ-、1991年勲二等瑞宝章、1985年紫綬褒章。自己補対複合スタックアンテナ、円形フェイズドアレイアンテナシステムなど特許13件、「アンテナ・電波伝搬」コロナ社, 初版1961、電波とアンテナのやさしい話―超ブロ-ドバンド化の原理の発見―」オ-ム社2001、“Self-Complementary Antennas―Principle of Self-Complementarity for Constant Impedance―”, Springer-Verlag, 1996など著書11件。
- 阿部仁史:建築家。コープ・ヒンメルブラウ(オーストリアウィーンの脱構築主義建築で著名な設計事務所。主なプロジェクトはウィーンのガソメーターA、フランクフルトの欧州中央銀行、ミュンヘンのBMWデリバリーセンターなど。)のロサンゼルス事務所勤務後、阿部仁史アトリエを設立する。1994年に東北工業大学建築学科講師、1998年助教授となり2002年まで同大学、及び大学院に於いて教鞭をとる。
- 宮城音五郎:初代学長。宮城県知事、東北大学教授などを務めた。
[編集] 学生生活
[編集] スポーツ
- 硬式野球部は仙台六大学野球連盟に加盟している。
- 1968年より、毎年8月に北海道工業大学と運動部の総合定期戦が開催されている。通算成績は6勝4敗(第21回大会:2006年実施時点)。
- 各競技の勝敗をトータルして判定する「総合優勝」は、第10回大会より導入された。
[編集] サークル・部活動
- サークル活動については部活動、愛好会に分類される。
- 体育会については、運動部、サッカー部や硬式及び準硬式野球部などの他にカート部なども存在する。愛好会については、モーターサイクル愛好会などがある。
- 文化会については、電脳からくり同好会やソフトウェア技術研究会など、工学系大学に即したサークル活動及び愛好会が存在し、それが、学業との密接なシナジー効果を生み出す土壌を大学及び学生共に培っている。
[編集] 学園祭
- 大学祭は年に一度開催される。ここでは毎年、個性豊かなお笑い芸人などを招聘して工学系大学の「硬い」イメージを払拭するのに一役かっている。また屋台や多様な企画や展示、フリーマーケット等を催し地域交流の場として多くの学生が盛んに取り組んでいる。そのため八木山の緑に囲まれたキャンパスの豊かな環境と伝統的に地域交流を重要視する学生精神と相俟って毎年多くの仙台市民が訪れる場となっている。いわば地域に開放された大学としての機能を地域にアピールする活動の一環として市民に広く認知されている。
[編集] ロケーション
杜の都仙台の八木山という緑豊かな環境に位置している。周辺には、世界的に著名な建築家の設計によるせんだいメディアテーク、宮城県美術館、またプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地やZepp Sendaiを構えるなど、地方都市としては、学業及び有意義な学生生活を下支えする基礎となるべき文化的都市施設と比較的柔和な自然が融合した環境下に位置する。
[編集] 大学周辺の著名建築及び設計者
- せんだいメディアテーク 伊東豊雄
- 宮城図書館 原広司+アトリエファイ建築研究所
- 名取市文化会館 槇文彦
- ふれあいエスプ 長谷川逸子
- 宮城県美術館 前川國男
- 宮城スタジアム 阿部仁史+針生承一
- 水の洞窟 運河交流館 隈研吾
[編集] その他
- 奨学金制度
- 成績優秀者を優遇する種類のものや地方公共団体、優秀な学生でかつ経済的理由により学業存続が非常に困難な学生に対する奨学金制度を設けている。
[編集] 施設概要とアクセス方法
[編集] 八木山キャンパス
2008年4月1日より、「香澄町キャンパス」から「八木山キャンパス」に改称された。
- 新幹線、在来線 東京方面、盛岡方面、地下鉄とも仙台駅下車、仙台駅より仙台市営バス・宮城交通(動物公園方面行き)にて「東北工大八木山キャンパス」下車(所要時間約30分)
- 航空機 仙台空港駅より仙台空港アクセス線にて仙台駅下車、仙台駅より仙台市営バス・宮城交通(動物公園方面行き)にて「東北工大八木山キャンパス」下車(所要時間約90分 乗り換え時間含まず)
- 自動車 東北自動車道仙台南インターチェンジまたは仙台宮城インターチェンジより約30分
[編集] 長町キャンパス
2008年4月1日より、「二ツ沢キャンパス」から「長町キャンパス」に改称された。
- 新幹線、在来線 東京方面、盛岡方面、地下鉄とも仙台駅下車、仙台駅より仙台市営バス・野草園行き(610系統)にて「茂ヶ崎」または、東北工大長町キャンパス急行バス(628系統)・東北工大長町キャンパス経由長町四丁目・長町営業所行き(X610系統)で「東北工業大学長町キャンパス」下車(所要時間約30分)
- 航空機 仙台空港駅より仙台空港アクセス線にて仙台駅下車、仙台駅より仙台市営バス・野草園行きにて「茂ヶ崎」または、東北工大長町キャンパス急行バス・東北工大長町キャンパス経由長町四丁目・長町営業所行きで「東北工業大学長町キャンパス」下車(所要時間約90分 乗り換え時間含まず)
- 自動車 東北自動車道仙台南インターチェンジまたは仙台宮城インターチェンジより約30分