復古的改憲論
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復古的改憲論(ふっこてきかいけんろん)は、自民党保守派が主張している改憲の方針、またはそれに対する民主党・社民党等の勢力による呼称。
戦前ノスタルジア、日本国憲法の制定過程に法手続き的に疑問が多いこと、占領下に制定されたため大日本帝国憲法に存在していた(そして通常世界各国の憲法には存在している)戦争や戒厳令に関する規定が存在しないことなどへの問題意識などにより、明治憲法(大日本帝国憲法)に近い形へ日本国憲法を改正しようとする考え方。天皇を名目上も元首化する事や、国民の義務および責務の追加、人権マイノリティーの大幅な制限、伝統や愛国心の復活などが挙げられる。また、論者によっては、憲法9条の改正(軍隊の復活、“防衛戦争”の容認)も本論に含めることがある。
近年においては、国会議員の世代交代によって、明治憲法ノスタルジアをもつ議員は少数になり、憲法改正論議の中では、新しい人権の明記などが程よく支持されているという認識が、2001年頃までは一般的であった。
しかし、小沢一郎らの脱党や野中広務の引退で経世会が大きく弱体化し、加藤の乱失敗で宏池会が分裂、自民党の中でも特に戦前回帰主義が強い清和政策研究会の影響力が強化された他、同派閥の小泉純一郎が国民的人気を得て首相に就任、さらに第44回衆議院議員総選挙(郵政選挙)で自民党が大勝し、野党の重しが外れたことなどの追い風を受けて自民党の復古主義的傾向は一気に加速した。
そして、戦後民主主義的政体を嫌悪し、戦前ほどではなくとも国家権力の強化・明治憲法の部分的復活を望んでいるのは、戦前世代だけでなく、2006年に首相に就任した安倍晋三等、戦後世代の自民党政治家にも多いことが明らかになった。なお、保守派の評論家には、制定過程に鑑みて日本国憲法は存在自体無効であると主張する者もいる(渡部昇一など)。
2005年に発表された自由民主党の新憲法草案には、そうした復古的改憲論が反映されている(外部リンク)。
なお、逆に、従来からの復古的改憲論者の中には、近年の憲法改正議論を、明治憲法体制を破壊したアメリカへの追従政策の永続化に繋がるものとして嫌悪感を抱く者もいる。
なお、「復古的」という表現自体に否定的なニュアンスがあるため、小森義峯(憲法学者 国士舘大学・皇學館大学などで教える)らのような明治憲法復活論者を除いて、その意見の持ち主と見なされる論者が自称することは基本的に無い点に注意する必要がある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 自由民主党新憲法草案(PDFファイル)