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岡精義 - Wikipedia

岡精義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

岡 精義(おか せいよし、1906年12月 - 不明)は、日本ヤクザ実業家暴力団・三代目山口組舎弟。三友企業社長。岡山県倉敷市出身。


目次

[編集]  来歴 

明治39年(1906年)、 岡山県倉敷市で生まれた。岡精義は、幼少の頃から叔母の元で育った。

岡精義は、旧制中学校を卒業した。

大正12年(1923年)、神戸市へ移住し、港湾荷役沖仲仕として働き始めた。

昭和5年(1930年)、神戸の賭場で、田岡一雄(後の山口組三代目組長)と知り合った。その後、金銭的に苦しかったこともあり、田岡一雄の借り上げた部屋に、度々滞在し寝食を共にするようになった。

昭和9年(1934年)8月、海員争議が起こり、会社側から二代目山口組・山口登組長に、紛争解決の調停役を依頼された。山口組舎弟の西田幸一と田尻春吉が、山口登の代理人として会議に出席した。話し合いがこじれ乱闘となり、西田幸一は殺害され、田尻春吉はも重傷を負った。その知らせを受けた田岡一雄[1] が、岡精義とともに、海員組合争議本部に乗り込み、日本刀で組合長を斬りつけ、重傷を負わせた。田岡一雄は傷害罪懲役1年の実刑判決を受け、神戸刑務所に服役した。

同年、港湾荷役の下請け業となり、東南アジア各地の湊の軍役荷役に従軍した。

昭和11年(1936年)1月20日、田岡一雄は、山口登からを受け、山口登の若衆となった。

昭和18年(1943年)、岡精義は、帰国して、神戸港運株式会社を起こした。

昭和21年(1946年)7月、山口組舎弟会が開かれた。山口登の若衆だった藤田仙太郎(元関脇山錦善治郎。本名は山田善治郎)は、山口組三代目に、田岡一雄を提案した。舎弟頭・森川盛之助、湊芳次ら全員が田岡一雄の山口組三代目就任に賛成した。

同年10月13日[2]、田岡一雄の山口組三代目襲名式が、神戸市・新開地の食堂「ハナヤ食堂」[3]で、行われた。参加者は10人程度だった。

同年10月17日、田岡一雄は、神戸市生田区相生町の料亭「三輪」で、披露宴を行った。山口組三代目の初代若頭には、山田久一が就任した。このとき、岡精義は田岡一雄の若衆(後に舎弟)となった。田岡一雄からの最初の盃を、吉川勇次(後の三代目山口組若頭補佐)が受けた。このとき、組員は、先代の舎弟6人、先代の若衆14人、田岡一雄の直系若衆13人だった。

昭和22年(1947年)8月15日、民間貿易の再開が許可された。田岡は、岡精義の提案を受け、これを機に、港湾事業に積極的に参加していくことを決めた。

昭和23年(1948年)6月、連合軍司令部経済科学局民間運輸課は、コンファレンス・メモを出した。コンファレンス・メモは、荷役作業の元請け業者のみを認めて、荷役作業の下請けと第二次下請けを禁止した。港湾運送事業の統制会社を解体し、港湾労務の中間搾取を排除する狙いがあった。荷役作業の下請けと第二次下請けの会社は、元請け会社に組み込まれ、元請け会社の「作業部」になった。これにより、田岡の港湾事業は頓挫した。田岡は、岡精義を保阪運送会社の神戸支店作業部長に送り込み、しのぎの確保を目指した。

昭和25年(1950年)6月25日、朝鮮戦争が勃発した。同年6月28日、北朝鮮は、韓国の首都ソウルを陥落させた。神戸港は、朝鮮半島の米軍への補給基地となった。港湾業務の下請けを禁止したGHQのコンファレンス・メモは有名無実となった。これにより、田岡には、再び神戸市の港湾事業を押さえるチャンスが巡ってきた。

昭和26年(1951年)5月、運輸省は、コンファレンス・メモに代わって、港湾運送事業法を制定した。この法律で、港湾業務が一般港湾運送(元請け)、船内荷役、はしけ運送、沿岸運送に分けられ、それぞれが基準に沿った登録制となった。田岡は、岡精義の進言に従い、再び港湾事業に進出した。

同年、岡精義は、三友運輸株式会社を設立した。

昭和27年(1942年)、岡精義は、三友運輸株式会社を「三友企業」と改称した。

昭和31年(1956年)4月、田岡一雄は、第二次下請けの労務者を集めて、「神戸港港湾労働組合連合会」を結成した。神戸港港湾労働組合連合会委員長には、白石幸吉の子分・大利幾造が就いた。発足時は、山口組系企業に加えて、15の単一組合、440人の労務者が母体となった。神戸港には、もとから総評系の「全港湾労働組合神戸支部」があった。「全港湾労組神戸支部」は第一次下請けの労務者のみによって結成されていた。

同年8月29日、田岡一雄は、港湾荷役協議会を解散し、全国規模の「全国港湾荷役振興協会」を設立した。全国港湾荷役振興協会は、全国の船内荷役の第二次下請けが集まった団体だった。全国港湾荷役振興協会会長には、藤木企業・藤木幸太郎社長が就いた。田岡一雄は、副会長兼神戸支部長に就いた。岡精義は常任理事となった。

昭和37年(1962年)12月13日、田岡一雄は、「御事始」(または、「正月事始」。通称「事始め」)の席で、企業を持った幹部が若衆を持つことを禁じた。

昭和38年(1963年)、国鉄三宮駅前に、地下街「さんちかタウン」が建設されることが決まった。山健組山本健一組長(後の三代目山口組若頭)が、さんちかタウンの工事の用心棒を請け負うことになった。まもなく、山本健一が逮捕され、収監された。吉川組吉川勇次組長(後の三代目山口組若頭補佐)と山口組若頭地道行雄(地道組組長)が、さんちかタウンの用心棒を、山口組直轄で行うようにした。地道行雄は、岡精義を通じて、さんちかタウンの建設を請け負った建設会社から、用心棒代を出させた。

同年3月、警察庁は、神戸・山口組、神戸・本多会、大阪・柳川組、熱海・錦政会、東京・松葉会の5団体を広域暴力団と指定し、25都道府県に実態の把握を命じた。

同年8月、田岡一雄は、協議機関「七人衆」を設置した。地道行雄、舎弟頭・松本一美、南道会・藤村唯夫会長、松本国松、安原武夫、岡精義、三木好美が七人衆になった。

昭和39年(1964年)1月、「暴力取締対策要綱」が作られた。

同年2月、警視庁は「組織暴力犯罪取締本部」を設置し、暴力団全国一斉取締り(第一次頂上作戦)を開始した。

同年3月26日、警察庁は改めて広域10大暴力団を指定した。10大暴力団は、神戸・山口組、神戸・本多会、大阪・柳川組、熱海・錦政会、東京・松葉会、東京・住吉会、東京・日本国粋会、東京・東声会、川崎・日本義人党、東京・北星会だった。

昭和40年(1965年)、山口組に対する第一次頂上作戦が開始された。

詳細は第一次頂上作戦#山口組に対する第1次頂上作戦を参照

同年4月25日、田岡一雄に、兵庫県警捜査四課を通じて、引退届けを送った。

同年5月2日、田岡一雄は岡精義の引退を認めた。

[編集]  註 

  1. ^ 当時はまだ正式な若衆ではなかった。
  2. ^ 飯干晃一『山口組三代目 1 《野望篇》』徳間書店<文庫>、1982年、ISBN 4-19-597344-9では、「昭和21年(1946年)10月13日に田岡一雄の山口組三代目襲名式が行われた」としているが、溝口敦笠井和弘ももなり高『血と抗争! 菱の男たち 1』竹書房、2002年、ISBN 4-8124-5658-4では、「山口組三代目襲名式が行われたのは、昭和21年8月」としている
  3. ^ 飯干晃一『山口組三代目 1 《野望篇》』徳間書店<文庫>、1982年、ISBN 4-19-597344-9では「山口組三代目襲名式が行われた場所は、食堂『ハナヤ食堂』」としているがでは、溝口敦笠井和弘ももなり高『血と抗争! 菱の男たち 1』竹書房、2002年、ISBN 4-8124-5658-4では「山口組三代目襲名式が行われたのは、神戸市須磨の割烹料亭『延命軒』」となっている


[編集] 参考文献 


[編集] エピソード・人物 

  • 戦後、組員に正業を持つことを奨励していた田岡一雄は、自身としても山口組が初代より手掛けていた港湾荷役業務の取り仕切りを岡精義に任せることとした。当時過酷な労働のため荒くれ者の多かった港湾荷役の沖仲仕界の秩序を守り、安定して労役に従事させるためには、ヤクザの様な強力な力が必要だったと言われている。
  • 岡は1951年に港湾荷役業務を行う三友運輸株式会社(1952年に三友企業株式会社に改称)を設立し、自ら経営に当たる事になった。
  • 自らは組員を一人も持たない企業舎弟ながら山口組最高幹部の一人であったため、1966年4月19日、警察の「第一次頂上作戦」の一環として恐喝容疑で逮捕された。このとき既に経済的に安定し、企業経営も軌道に乗っていた岡は、山口組と関係を維持する必要が無くなっていた。そうした状況で逮捕後の1966年5月5日に岡は獄中で山口組脱退を表明し渡世から身を引いた。
  • 経済復興に伴い1950年代前半以降 会社は順調に業績を伸ばし続け、山口組を支える存在となっていった。山口組が1950年代後半以降、若頭地道行雄を中心に武闘派が全国進出を図っていく中、この岡の存在は その財政面を大きく支えることとなった。
  • 岡精義の山口組からの脱退で田岡は山口組として、大きな財政基盤である港湾荷役業から全面的に撤退することを決めることとなった。


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