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岡潔 - Wikipedia

岡潔

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

岡 潔(おか きよし、1901年4月19日 - 1978年3月1日)は、日本の数学者奈良女子大学名誉教授理学博士京都帝国大学、1940年)。大阪府大阪市生まれ。

目次

[編集] 略歴

  • 1922年3月 第三高等学校理科甲類卒業
  • 1925年3月 京都帝国大学理学部卒業
  • 1925年4月 京都帝国大学理学部講師
  • 1929年4月 京都帝国大学理学部助教授
  • 1932年3月 広島文理科大学助教授
  • 1940年6月 広島文理科大学辞職
  • 1941年10月 北海道帝国大学理学部研究補助嘱託
  • 1942年11月 北海道帝国大学辞職
  • 1949年7月 奈良女子大学理家政学部教授(1953年より理学部教授)
  • 1964年3月 奈良女子大学定年退官
  • 1964年4月 奈良女子大学名誉教授
  • 1969年4月 京都産業大学教授

[編集] 受賞歴・叙勲歴

[編集] 生涯

[編集] 通史

岡潔は1901年4月19日に大阪府大阪市で生まれた。父祖の地は和歌山県の山村、和歌山県伊都郡紀見村(現在、橋本市)である。1925年、京都帝国大学卒業と同時に同大学講師に就任、1929年、同大学助教授に昇進。1929年より3年間、フランスに留学。1932年、広島文理科大学助教授に就任したが、1938年、病気で休職、のち辞職。郷里にもどり、孤高の研究生活に身を投じた。1941年秋から翌年にかけて北海道大学に赴任。札幌市在住の、終生に亘る心腹の友であった中谷宇吉郎と旧交を暖めた。後、再び帰郷し、郷里で終戦を迎えた。1949年、奈良女子大学教授に就き、1951年から晩年までは奈良市に住まいした。奈良市名誉市民。

[編集] 数学者としての挑戦

フランス留学時代に、生涯の研究テーマである多変数解析函数論に出会うことになる。当時まだまだ発展途上であった多変数解析函数論において大きな業績を残した。周知のように一変数複素関数論は現代数学の雛型であり、そこでは幾何代数解析三位一体となった美しい理論が展開される。現代数学はこれを多次元化する試みであるということもできよう。解析の立場から眺めると一変数複素関数論の自然な一般化は多変数複素関数論であるが、多変数複素関数論には一変数の時にはなかったような本質的な困難がともなう。これらの困難を一人で乗り越えて荒野を開拓した人物こそ岡潔である。

具体的には三つの大問題の解決が有名だが、特に当時の重要な未解決問題であったハルトークスの逆問題(レヴィの問題ともいう。および関連する諸問題)に挑み、約二十年の歳月をかけてそれを(内分岐しない有限領域において)解決した。岡はその過程で不定域イデアルという概念を考案したが、アンリ・カルタンを始めとするフランスの数学者達がこのアイデアをもとにという現代の数学において極めて重要な概念を定義した。また、(解析関数に関する)クザンの第2問題が解けるためには、それを連続関数の問題に置き換えた命題がとければよいとする「岡の原理」も著名である。

その強烈な異彩を放つ業績から、西欧の数学界ではそれがたった一人の数学者によるものとは当初信じられず、「岡潔」というのはニコラ・ブルバキのような数学者集団によるペンネームであろうと思われていた事もあるという。

[編集] 教育者の側面

京都大学時代には湯川秀樹朝永振一郎らも岡の講義を受けており、物理の授業よりもよほど刺激的だったと後に語っている。一時期、広島文理大学時代に精神不安定状態に陥り、学生による講義のボイコットなども経験したが、奈良女子大学時代には、与えられた任務には何事も全身全霊で取り組むという彼の性格から、女子教育に関する論文を書くなど、教育にも心を配った。

奈良女子大退官後、京都産業大学の教授となり、「日本民族」を講義した。

[編集] 性癖

岡は仏教を信仰しており、特に弁栄に帰依していた。岡自身によれば、岡は「純粋な日本人」であり、日本人として持っている「情緒」に基づいて、その数学的世界を創造した。岡はこのような自身の体験に基づいた随筆をいくつか書いていて、一般にはむしろそちらの方でよく知られている。

三高時代、岡は友人に対し「僕は論理も計算もない数学をやってみたい」と語っている。岡の考えでは論理や計算は数学の本体ではなく、表面的なことを追うだけでは答えが見えてこないと思っていたらしい。この見えざる数学の本体に迫ることと、仏教的叡智や情緒の探求は岡にとって表裏一体であったと考えられる。

作家の藤本義一は、岡をモデルとした戯曲を製作するために密着取材をした事があり、著書『人生の自由時間』『人生に消しゴムはいらない』で彼の日常生活について記している。

藤本によると、岡は起床してすぐ自己の精神状態を分析し、高揚している時は「プラスの日」、減退している時は「マイナスの日」と呼んだという。 プラスの日は知識欲が次々沸いて出て、見聞きするあらゆる出来事や物象を徹底的に考察 - 例えば、柿本人麻呂和歌を見ると、内容は元より人麻呂の生きた時代背景、人麻呂の人物像にまで自論を展開 - するのだが、マイナスの日は、寝床から起き上がりもせず一日中眠っており、無理に起こそうとすると「非国民」等と怒鳴る有様であった。 岡のこの行動を見た藤本は「恐らく岡は躁鬱病であると考えられるが、プラスの日・マイナスの日は一日おき、もしくは数日おき・・・といった具合で、躁と鬱の交代期間は比較的短かった」と述べている。

[編集] 代表的な著書

  1. 春宵十話、毎日新聞社1963年
    1. 春宵十話、角川書店〈角川文庫〉、1969年
    2. 春宵十話〈改訂新版〉、毎日新聞社1972年
    3. 春宵十話、光文社〈光文社文庫〉、2006年10月。ISBN 4-334-74146-0
  2. 風蘭、講談社〈講談社現代新書;5〉、1964年
  3. 紫の火花、朝日新聞社1964年
  4. 春風夏雨、毎日新聞社1965年
    1. 春風夏雨、角川書店〈角川文庫〉、1970年
    2. 春風夏雨〈改訂新版〉、毎日新聞社1972年
  5. 月影、講談社〈講談社現代新書〉、1966年
  6. 春の草 私の生い立ち、日本経済新聞社1966年
  7. 春の雲、講談社〈講談社現代新書〉、1967年
  8. 日本のこころ、講談社〈思想との対話;2〉、1967年
    1. 日本のこころ、講談社〈名著シリーズ〉、1968年
    2. 日本のこころ、講談社〈講談社文庫〉、1971年
  9. 一葉舟、読売新聞社1968年
    1. 一葉舟、角川書店〈角川文庫〉、1971年
  10. 昭和への遺書、月刊ペン社、1968年
    1. 昭和への遺書、月刊ペン社、1975年
  11. 日本民族、月刊ペン社、1968年
    1. 日本民族、月刊ペン社、1975年
  12. 葦牙よ萠えあがれ、心情圏、1969年
  13. 神々の花園、講談社〈講談社現代新書〉、1969年
  14. 曙、講談社〈講談社現代新書〉、1969年
  15. 岡潔集〈第1巻〉、学習研究社1969年
  16. 岡潔集〈第2巻〉、学習研究社1969年
  17. 岡潔集〈第3巻〉、学習研究社1969年
  18. 岡潔集〈第4巻〉、学習研究社1969年
  19. 岡潔集〈第5巻〉、学習研究社1969年
  20. わが人生観〈1〉、大和出版販売、1972年
  21. 心といのち、大和出版〈わが人生観〉、1984年6月。ISBN 4-8047-3000-1
  22. 岡潔 日本の心、日本図書センター〈人間の記録;54〉、1997年12月。ISBN 4-8205-4297-4
  23. 情緒の教育、燈影舎、2001年11月。ISBN 4-924520-44-6
  24. 情緒と創造、講談社2002年2月。ISBN 4-06-211173-X
  25. 日本の国という水槽の水の入れ替え方 憂国の随想集、成甲書房2004年4月。ISBN 4-88086-163-4
  26. 岡潔/胡蘭成、岡潔・胡蘭成、新学社〈新学社近代浪漫派文庫;37〉、2004年11月。ISBN 4-7868-0095-3
  27. 情緒と日本人、PHP研究所2008年2月。ISBN 978-4-569-69552-5

[編集] 共著

  1. 対話人間の建設、小林秀雄新潮社1965年
  2. 心の対話、林房雄、日本ソノサービスセンター、1968年
  3. 人間の建設、小林秀雄新潮社1978年3月。

[編集] 論文集

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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