富山・長野連続女性誘拐殺人事件
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富山・長野連続女性誘拐殺人事件(とやまながのれんぞくじょせいゆうかいさつじんじけん)とは、1980年の2月に富山県で女子高生が殺害され、次いで3月に長野県で信用金庫に勤めるOLが殺害された事件。警察庁広域重要指定事件111号に指定された。逮捕当時、ギフト店を共同経営していた女性Mとその愛人である男性Aが共犯とされたが、裁判でMの単独犯行であることが判明。後にAは無罪となる。
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[編集] 事件
[編集] 富山県での殺害
1980年2月23日、富山県で帰宅中の女子高生が、Mにアルバイトの話を持ちかけられ、Mが運転する日産のフェアレディZに乗せられ誘拐される。24日と25日の2日間、女子高生は自宅に心配することがないよう電話していた。25日の午後になって、Mから家族に身代金要求の電話があるも、具体的な金額を提示せず。26日、岐阜県のラーメン店でMとAと女子高生が目撃されている。ラーメン店を出てから数時間後、女子高生はMに車内で睡眠薬を飲まされて昏睡状態のところを絞殺され、雑木林に遺棄される。遺体は翌月になって発見。
[編集] 長野県での殺害
同年3月5日、長野県で帰宅途中の信用金庫勤務のOLが、Mに言葉巧みに誘われフェアレディZに乗せられて誘拐される。翌日6日の早朝、OLは絞殺されて町道の脇に遺棄される。その数時間後の午前7時、Mが家族に電話。
「明日の朝10時、長野駅に3千万円持ってこい」
翌日7日の朝に長野県警に特別捜査本部が設置され、捜査を開始。10時、長野駅のアナウンスで家族が呼び出され、Mからの電話を受ける。家族が10万円しか用意できなかったことを話すと、Mは怒って、昼まで待つと言って自宅で電話連絡を待つよう指示。昼過ぎにMから電話。
「2時に2千万円を持って長野駅に来て、4時38分発の列車に乗って高崎駅で降りて待て」
だが結局、Mは現れなかった。
警察は富山県と長野県の事件を同一犯の犯行と断定。どちらの犯行現場でもサングラスをした美人が赤いフェアレディZを運転しているのを目撃されていたことから、すぐにMとその愛人であるAが参考人聴取される。やがてMの声紋と身代金交渉の電話の声紋が一致したことなどから30日、MとAを逮捕。
捜査によってOLが車に乗り込む数時間前から、Mが若い女性にお茶を飲みませんかと声をかけていたことが判明。
[編集] 犯行の動機
Mは富山県生まれ。生活保護受給家庭で育ったが、成績はトップクラスだった。短大に進学するも、家庭の事情で中退、保険会社や化粧品会社に勤める。やがて上京して結婚、埼玉県で暮らし、男児が誕生するも、やがて離婚。子供を連れて富山県に戻るが、父親が死亡。結婚相談所で再婚相手を探しながら、朝も夜も働き、一家を支えた。やがて夜の仕事仲間を介してAと知り合う。Aにはすでに妻がいたが、同棲生活を始める。
MはAとギフト店の経営を始めるも、すぐに経営難に陥り、サラ金に手を出して数千万円の借金を負ってしまう。そこでMはかつて勤務した保険会社で得た知識を悪用し、結婚相談所に紹介された男性を保険金殺人のターゲットにして、海岸に誘い出し麻酔薬をかがせたが未遂に終わる。
やがて返すあてのない借金をしてフェアレディZを購入。このころから誘拐で大金を得ることを考え始め、とうとう実行するに至る。
[編集] 裁判
逮捕後、Mは「主犯はAで自分は無罪」と主張していたので、検察は主犯をA、Mを従犯として起訴した。
1980年5月13日 富山地裁で初公判。Aは無罪主張。
1985年 検察は起訴状と冒頭陳述を変更、主犯をMに、従犯をAとし、これまでの主張を翻した。
1988年2月9日 Mに死刑、Aに無罪判決。検察はAについて控訴。Mは自身について控訴。
1992年3月31日 名古屋高裁金沢支部が検察とMの控訴棄却。Mは上告。検察は上告せず、Aの無罪確定。
1998年9月4日 最高裁で上告棄却。Mの死刑確定。
2007年3月23日 富山地裁がMの再審請求を棄却。
2008年現在、Mは獄中結婚によりFという苗字になり、名古屋拘置所に収容されている。
[編集] 名誉毀損訴訟
Mは裁判中から、事件報道をしたマスコミ各社に名誉毀損を理由に損害賠償請求訴訟を起こしては和解を繰り返していたが、唯一、彼女と和解の道を選択しなかったのは、佐木隆三と出版社の徳間書店。
1991年に発行された『女高生・OL連続誘拐殺人事件』で、大衆の低俗な興味を満足させる記述により、社会的評価を著しく低下させられ、名誉や人格を傷つけられたとして、Mは著者の佐木隆三と出版した徳間書店に慰謝料500万円を請求する訴訟を起こす。名古屋地裁は名誉感情の侵害を認め、佐木や徳間書店に慰謝料支払いを命じる判決が出たが、双方がすぐに控訴。2000年に、佐木と徳間書店に75万円の慰謝料の支払いが命じられた。
佐木との裁判が決着した後、Mは東京拘置所に収容されている死刑囚を相手に訴訟中。
[編集] 関連書籍
- 佐木隆三『女高生・OL連続誘拐殺人事件』 徳間書店、1991年9月。ISBN 4195993806
- 清水一行『迷路』 徳間書店 1998年4月。ISBN 4198908729