奥谷禮子
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奥谷禮子(おくたに れいこ、本名米澤禮子、1950年4月3日 -)[1]は兵庫県神戸市出身の実業家。名前に使われている漢字「禮」は旧字体であり、著書などでは奥谷礼子とも記される。なお「奥谷」姓は旧姓であり、現在の実名は米澤禮子である。甲南大学法学部卒業。ザ・アール社長[2]。
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[編集] 経歴
[編集] 略歴
日本航空に就職(国際線客室乗務員、のちVIPラウンジ)。退職後の1982年、同僚と人材派遣会社ザ・アールを設立。1986年には、経済同友会初の女性会員の一人に選ばれた。また同年から6年間、当時の堤清二セゾングループ代表との縁で、セゾングループが設立した人材派遣会社ウイル(現株式会社ミレニアムキャスティング)の社長を兼務した。2002年5月には株式会社ローソンの社外取締役に就任する[3]。2006年1月には日本郵政の社外取締役に就任した[4]。
[編集] 役職
現職
日本郵政・ローソン・楽天野球団各社の経営諮問委員会委員[5]、経済同友会幹事、独立行政法人国立新美術館運営協議会評議委員、神戸市市長諮問委員会委員、神戸市神戸経済特区研究会委員、WOWOW放送番組審議会委員[6]、エンジン01文化戦略会議幹事[7]。
過去の公職
厚生労働省労働政策審議会臨時委員(労働条件分科会会員)、郵政省郵政審議会委員[8]、内閣府未来生活懇談会委員[9]、国土交通省交通政策審議会委員[10]、通商産業省産業構造審議会委員、通商産業省航空機宇宙産業審議会委員、内閣府規制改革会議委員、公正取引委員会「21世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」会員[11]。
[編集] 経済同友会との関連
1986年に経済同友会に初めて女性会員が誕生した際、奥谷はその一人であった。以後、経済団体の役員、政府や自治体などの審議会委員などの職に就き、活発に同友会人脈を形成した。 元経済同友会の代表幹事である牛尾治朗・ウシオ電機代表取締役会長(安倍晋三と姻戚関係。兄嫁の父)とは、現在も親しくしている。
[編集] 人物
[編集] 思想・発言
自身が使用者である為か(というより過酷な自己努力と自己責任で成功した為か)、「格差論は甘えです」[12]と、格差社会論そのものに否定的な人物の一人である。2006年10月24日に開催された第66回労働政策審議会労働条件分科会に使用者側の委員として参加し、過労死の問題について、「自己管理の問題。他人の責任にするのは問題(=自己責任論)」「労働組合が労働者を甘やかしている」[13][14]と発言し、さらに週刊東洋経済のインタビューで「労働基準監督署も不要」「祝日もいっさいなくすべき」と発言し論議を呼んだ[15]。
“庶民から努力して「勝ち組」になった人間は、往々にして庶民層を「努力が足りない」「私にできたことがなぜできない」と、世襲の「勝ち組」よりもさらに激しく蔑視する”例として、他に移民からフランス大統領にまでなったニコラ・サルコジが挙げられる。
[編集] 日本アムウェイとの関係
日本アムウェイに関して、一般的に「マルチ商法」と呼ばれることも多い連鎖販売取引の手法が問題視されたが、その後同社に請われてこの問題の是正のため2001年から諮問委員に就任し[16]、2005年には退任している[要出典]。なお、同諮問委員会は現在廃止されている。就任当時には日本アムウェイによるインタビュー[17]で「“ものづくりの哲学”をきちんともって、情熱を傾けている会社」「いい製品を作り、消費者に届けたいという熱意や姿勢を持っている」「ディストリビューターは作り手の情熱と一緒に使い手に届ける使命があると発言するとともに、 「アムウェイに携わるディストリビューターのモラル向上や教育に投資するべきではないか」「社会が成熟してきたところで、アムウェイの人々がきちんとした倫理観をもって進めて行けば、将来大きな躍進が期待できる」とモラル面の改善も申し入れていた。
[編集] 週刊東洋経済インタビュー騒動
週刊東洋経済2007年1月13日号で、「格差社会と言いますけれど、格差なんて当然出てきます。仕方がないでしょう、能力には差があるのだから」と発言し、インターネット上などで波紋が広がっている[18][19]。
記事では、「下流社会だの何だの、言葉遊びですよ。そう言って甘やかすのはいかがなものか」と持論を展開。過労死については「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います。ボクシングの選手と一緒」とした上で、「自分でつらいなら、休みたいと自己主張すればいいのに、そんなことは言えない、とヘンな自己規制をしてしまって、周囲に促されないと休みも取れない。揚げ句、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい。ハッキリ言って、何でもお上に決めてもらわないとできないという、今までの風土がおかしい」と経営者側には責任はなく労働者側の意識が問題との認識を示した。
しかしこの発言に対しては、労働者側への現状認識が欠けていると指摘されているのみならず、日本国憲法第27条とこれを受けて制定された労働基準法、および日本国憲法第28条で定められている労働基本権を失念した発言であるとも指摘されている。また、改正教育基本法に見られる“個人より国家・公共を優先し重んじる”政策からすれば、労働者の判断で休みを取るべきとの奥谷意見は相容れない。なお、事実として最高裁判所は2000年3月に大手広告代理店社員の過労自殺訴訟において企業が社員に払うべき義務について「疲労が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないように注意する義務」という判断を示している[20]。言い換えると「社員の自己管理」ではなく「経営側に職場の環境を整備する義務がある」ということである。さらに、取締役であっても過労死の責任は会社にあるという判断を大阪高等裁判所は示している[21]。これらの指摘については後述の国会審議録での川内博史議員による柳澤厚生労働大臣への詰問およびその参考文献を参照のこと。
また、今回の騒動を受けて奥谷が公表した文章[22][23]では過激な表現が控えられているものの、上で示した日本国憲法の意義や最高裁判所判例の趣旨と異なる発言を行っている。さらに「職種によっては、どこまでが仕事で、どこまでがプライベートか分からないものがある。研究者などは最たるもので、あるテーマに没頭しはじめれば、公私などありはしない。」と発言している。
2007年2月7日の衆議院予算委員会で、川内博史議員(民主党)が「あまりの暴論なので提示させてもらった。柳澤伯夫厚生労働大臣の諮問委員に日本国憲法を無視している人がいて、ホワイトカラーエグゼンプションを推進しようとしている。」と詰問し、この発言について同議員が読み上げた[24]。この質問に対し、柳澤厚生労働大臣は「まったく、私どもの考え方ではない」と答弁している。
この後、奥谷はマスコミの取材[25]に対し「発言の一部分だけをとらえた質問は遺憾」と反論したが、2007年2月19日の衆議院予算委員会で、枝野幸男議員(民主党)が「十分釈明を聞きたい」と述べ、参考人招致を要求した[26][27]。結局、与党側が3月2日に委員長職権で審議を打ち切り予算案が衆議院を通過したので野党側が要求していた奥谷の参考人招致は実現しなかったが『週刊ポスト』『女性セブン』(以上、小学館)や『サンデー毎日』(毎日新聞社)でも奥谷発言が取り上げられた。
この発言に関して本人は2007年4月2日付けの朝日新聞におけるインタビューで、「真意が伝わっていない。工業化社会から知的創造の時代に移り、長く働けば生産性が上がる時代では無い。自分で労働時間を管理し、生産性が上がるよう働けばいいという意味だった。」とコメントしている。なお対談相手の森永卓郎には「規制がなくなれば地獄の底まで働かせるのは、産業革命で立証済み。最低限の権利を守る仕組みが必要だ。」と反論されている。
[編集] 著書
- 正しい仕事のやり方・すすめ方(日本能率協会マネジメントセンター、2006年、ISBN 978-4-8207-1685-3)
- サービスの作法(郵研社、2006年、ISBN 978-4-946429-79-8)
- 成功する人は「気配り」上手(日本文芸社、2005年、ISBN 978-4-537-25295-8)
- 如是我聞(亜紀書房、2003年、ISBN 978-4-7505-0302-8)
- 日航スチュワーデス 魅力の礼儀作法(新潮社、2003年、ISBN 978-4-10-103121-7)
- ポジティブになれる人ほど幸福に近づける(亜紀書房、2000年、ISBN 978-4-7505-0018-8)
- ポジティブに生きる(ザ・アール21、1997年、ISBN 978-4-916134-02-8)
- 女が会社をつくる時(大和出版、1991年、ISBN 978-4-8047-0117-2)
- 男たちよ、そろそろお休みなさい(大和出版、1990年、ISBN 978-4-8047-1166-9)
- こんな女性がオフィスで魅力的(三笠書房、1990年、ISBN 978-4-8379-0385-7)
- もっと女性力が引き出せる本(大和出版、1989年、ISBN 978-4-8047-1156-0)
- ワーキングウーマンのマナー術(永岡書店、1989年、ISBN 978-4-522-01206-2)
- できる女は器量が光る(サンマーク出版、1987年、ISBN 978-4-7631-8936-3)
- 女でキラキラ生きてます(大和出版、1987年、ISBN 978-4-8047-0081-6)
- 女を読む・動かす・拓く(大和出版、1986年、ISBN 978-4-8047-1087-7)
[編集] 参考文献
- ^ 生年月日(誕生日)データベース
- ^ ザ・アール トピックス
- ^ 株式会社ローソン 2003年アニュアルレポート
- ^ 総務省 竹中総務大臣閣議後記者会見の概要 平成18年1月17日(火)
- ^ 楽天市場会社情報 日本プロフェッショナル野球組織への加盟申請について 2004年9月24日
- ^ WOWOW放送番組審議会
- ^ エンジン01文化戦略会議
- ^ 旧郵政省郵政審議会議事要旨(平成7年11月7日公表)
- ^ 内閣府未来生活懇談会 第14回議事概要
- ^ 国土交通省交通政策審議会 第1回総会
- ^ 公正取引委員会「21世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」提言書について 平成13年11月14日
- ^ 週刊日経ビジネス 2006年7月10日号
- ^ 厚生労働省 06/10/24 労働政策審議会労働条件分科会 第66回議事録
- ^ 2006年10月26日(木)「しんぶん赤旗」
- ^ 週刊東洋経済 第6059号 (2007年01月13日号)
- ^ 2001年9月21日 日本アムウェイ株式会社 経営諮問委員会設置のお知らせ
- ^ amway.co.jp | もっと知りたいMLM | 奥谷禮子さん (Internet Archive)
- ^ 「財界のマドンナ」炎上!? (ゲンダイネット)(ウェブ魚拓)
- ^ 痛いニュース(ノ∀`):【労働者へ果たし状】人材派遣ザ・アールの奥谷禮子社長、「過労死は自己管理の問題」と労働者批判 労基署は不要とも
- ^ 平成10(オ)217 損害賠償請求事件(通称 電通損害賠償) 平成12年03月24日 最高裁判所第二小法廷
- ^ 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 取締役過労死で会社に責任 大阪高裁、遺族が逆転勝訴
- ^ コラム その人に合った働き方へ
- ^ コラム その人に合った働き方へ (ウェブ魚拓)
- ^ 第166回国会 予算委員会 第4号(平成19年2月7日(水曜日))
- ^ 「過労死は自己管理の問題」奥谷氏発言が波紋 (asahi.com)
- ^ 第166回国会 予算委員会 第11号(平成19年2月19日(月曜日))
- ^ 「過労死は自己管理の問題」発言で参考人招致要求 民主 (asahi.com)