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大本営発表 - Wikipedia

大本営発表

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大本営海軍部による発表(1941年12月8日)
大本営海軍部による発表(1941年12月8日
大本営陸軍部による発表(1942年1月3日)
大本営陸軍部による発表(1942年1月3日

大本営発表だいほんえいはっぴょう)とは、太平洋戦争大東亜戦争)において、日本大本営陸軍部及び海軍部が行った、戦況などに関する公式発表のことである。

当初はほぼ現実通りの発表を行っていたが、以下に記載する通りミッドウェー海戦の頃から損害の過少発表が目立ち始め、不適切な言い換えがまかり通るようになり、最終的には勝敗が逆転した発表すら行ったことから、現在では「内容を全く信用できない虚飾的・詐欺的な公式発表」代名詞になっている。

目次

[編集] 概要

[編集] 第一回

第一回の大本営発表は、1941年12月8日午前6時に行われたものであり、内容は開戦の第一報で、NHKラジオより報道された。以下はチャイム[1]の後にアナウンサーが読み上げたその発表文である[2]

臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。
大本営陸海軍部、12月8日午前6時発表。帝国陸海軍は今八日未明 西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり

[編集] 発表の回数及びその形式

大本営発表は846回行われている[3]

発表の形式としては、報道の形でアナウンサーが読み上げるものと、陸海軍の報道部長が読み上げるものとの2種類があった[4]。ラジオ発表では、放送前後などに楽曲が演奏された。戦勝を報じる時には「陸軍分列行進曲」(陸軍部発表:陸戦)、「軍艦行進曲」(海軍部発表:海戦)、「敵は幾万」(陸海軍部共同発表)が、敗走等の悲壮な戦果を報じる時には「海ゆかば」であった。

[編集] 内容の虚飾性・詐欺性

戦況が好調に推移していた段階では、内容もおおよそ現実に即していたが[5]ミッドウェー海戦においては、海軍部隊の大損害の事実を過小に発表[6]ガダルカナル島からの撤退を「転進」と表現するなどし、レンネル島沖海戦の頃からは、現実からはすっかり乖離した虚報となっていった。果ては占領地守備隊の全滅を「玉砕」と美化して表現した。

なお、大本営が戦況を正確に把握しておらず、現場指揮官の報告した景気の良い戦果をそのまま発表したために現実と乖離した報道となった場合も多く、しばしば日本軍の現地司令官がそれを額面どおりに信じて悲惨な結果を招いている[7][8]

[編集] 終焉

大本営発表としての放送は、戦闘行動が続いていた1945年8月14日、第840回を数えた段階で、実質的に終わった。その後は大本営及帝国政府発表との名称で、第841回(8月21日午後1時)、第842回(8月21日午後5時)、第843回(8月22日午後3時30分)、第844回(8月23日午後5時30分)、第845回(8月24日午後5時30分)、第846回(8月26日午前11時)まで、計6回行われた。内容は日本陸海軍の行動でなく、アメリカを中心とする連合軍の日本占領にかかわる事項を伝えることに終始した。最後の発表(第846回)全文は以下のものであった。

本八月二十六日以降実施予定の連合国軍隊第一次進駐日程中連合国艦隊相模湾入港以外は夫々四十八時間延期せられたり

[編集] 現代日本における「大本営発表」

転じて、今日でも情報を操作し、政府や有力な組織・団体や有名人を一方的に利するために、政府広報白書、組織、団体、マスコミなどによって行われる「公式発表」等を揶揄して「大本営発表」と呼ぶ場合がある。

総じて、『情報源の確かでないもの、意図的に操作されたもの、もしくは虚偽の確率が極めて高い情報』という意味で現代では使われており、『全く信用できない情報』と同義語として使用されている。または、発表する側が事前に「質問は一切受け付けません」として一方的に発表者側に立った意見や情報を述べることを指すこともある[9]

[編集] 脚注・出典

  1. ^ 流されたのは楽曲ではなく臨時ニュースのチャイムだった
  2. ^ 現在人々が眼にする、大平秀雄が発表文を読み上げる映像は、後日「再現映像」として収録されたものである。
  3. ^ 出典:保阪正康『大本営発表は生きている』 はじめに、p.5より
  4. ^ 残されている大本営発表の放送録音は、アナウンサーによるものと、陸海軍報道部長によるものの両方が残存している。両者には、言い回しの部分で微妙な差異がある。例えば、第一回の発表(開戦の第一報)における「アメリカイギリス軍」という表現と「米英軍」という表現の差である)。
  5. ^ 戦況が好調に推移していた段階ですら、真珠湾攻撃に参加し捕虜となった海軍特殊潜航艇搭乗員の事実を隠している。軍神の項を参照されたい。
  6. ^ 相澤淳「大本営発表とミッドウェー海戦」 防衛庁防衛研究所『戦史研究年報』第7号 2004年3月 p122~p128
  7. ^ 特に大戦後期の攻勢作戦報道に顕著である。堀栄三『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』を参照。
  8. ^ 特に台湾沖航空戦ではこれが一因となり、フィリピン決戦前に海軍全体で約1,200機の作戦機が作戦前に稼動状態にあったうちの300機以上とその搭乗員をたった一週間弱で喪失するという大打撃を受けた上、在フィリピンの海軍の稼動航空機が150機から約40機に激減する等、決戦前に戦力に大打撃を受けてしまった。これにより、フィリピンの制空権確保という作戦行動が事実上不可能になってしまったため、続く同年十月に生起した捷号作戦において軍令部は特別攻撃隊の編成及び使用を決意し、フィリピンの航空作戦部隊であった第一航空艦隊司令長官大西瀧治郎中将が同年10月21日、特別攻撃隊の出撃命令を下すことになった。
  9. ^ 特に芸能関係や不祥事発覚後のスポーツ選手へのインタビューなどに多い

[編集] 参考文献

  • 富永謙吾『大本営発表の真相史』(自由国民社、1970年)
  • 平櫛 孝『大本営報道部 言論統制と戦意昂揚の実際』(光人社NF文庫、2006年) ISBN 4-7698-2485-8
  • 保阪正康『大本営発表は生きている』(光文社新書、2004年) ISBN 4-334-03242-7

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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