大学群
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大学群(だいがくぐん)とはいくつかの大学をある共通点や類似点でまとめた呼称を総合的に指し示す言葉である。
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[編集] 概要
大学はそれぞれの出自や歴史を持つ独立した教育組織だが、様々な視点から区分けをすることが可能である。現在日本で使用されている大学群は以下のような分類方法をとっている。
- その大学の教育史上の出自の共通点によるもの
- スポーツなどの深い交流によるもの
- 地理的な要因によるもの
- ジャーナリズムが高等教育の現状や歴史を語る場合や、特に日本の学歴社会でどの大学がどれくらい評価されるかということを論じるために作り出す造語
- 大学の人気や評判の変動に呼応して日々優劣をつけて作り出されるスラングのようなもの
[編集] 日本
以下では主に日本において見聞される大学群について慎重な解説を試みるが、大学群に関する用語は時代の変動によって意味合いが変化する流動的な要素が多分にある。また、これらの用語の中には優劣を誇張したり、学歴差別を助長すると批判されるものもある。
[編集] 日本教育史上の共通点に基づくもの
[編集] 法令上の根拠で分類できるもの
以下の呼称はそれらの大学が設立された時期やその根拠法によって分類できる物である。
- 戦前に帝国大学令または大学令により設置された大学であったもの。
- 旧制大学の内、帝国大学令により帝国大学を称し、国によって設立された大学。戦前の総合大学。
- 旧制官立大学・旧制公立大学
- 旧制大学の内、大学令により国または公の財源によって設立された大学。戦前の単科大学。
- 旧制私立大学
- 旧制大学の内、大学令により私的財源によって設立された大学。
- 終戦直後に教育基本法、学校教育法、国立学校設置法施行に基づき設置されたもの。
[編集] 歴史的な由来によるもの
以下の呼称は、根拠となる法令はないが、他と明確に区別できる制度上の事実があるものである。
- 旧制官立・公立大学の内、商科大学または商業大学であったもの。
- 旧制官立大学の内、医科大学であったもの。
- 旧制官立大学の内、工業大学または工科大学であったもの。
- 旧制官立大学の内、文理科大学であったもの。
[編集] 地理的なつながりによるもの
大学が所在している地域を元に漠然とした区分をするときに用いられることが多い。
- 在京大学
- 東京23区に本部が所在する大学を示している。広義で東京都および横浜市、川崎市、千葉県北部に本部が所在する大学を示していることもある。
- 在阪大学
[編集] 大学連合
所属大学が協定に基づきその名称を公表しているもので、強い連携関係があるもの。(単位互換程度のものは含まない)
[編集] 大学スポーツによるもの
元々は大学野球の対戦カードから来たもので、大学野球が国民的な関心を集めていたことから、これらの大学は地方における知名度も高いものがあった。こうしたことから東京あるいは関西における私学といえばここであるという認識となり、定着していったものとされている。
このカテゴリーに含まれる用語は第二次世界大戦前から使用されていることも特徴である。また、野球の対戦から始まって、大学間の人的交流や学生団体の連携など、戦前から大学間の交流が実施されていた大学群でもある。
一部の文献にはこれらの用語が第二次世界大戦後の大学受験過熱期(1970年代)に発生したとしているものがあるが、それ以前に発行された書籍や新聞で既にこれらの用語が使用されていることから下の項目で発生した3つの用語と発生時期を誤解しているものと考えられる。
このカテゴリには以下の大学群がある。
- 日本初の定期対戦カードである早慶戦が発祥
- 関西で人気の高かった野球の対戦カードである関関戦および同立戦が発祥。
- 東京六大学野球連盟に所属している大学が発祥
[編集] 受験戦争期に使用され始めたもの
大学受験における偏差値の使用が一般化した後に発生してきた用語で、以下にあげている用語は旺文社から出版されている「螢雪時代」の編集長が考え出した造語という説が一般的である。当初は偏差値的な輪切りのために使われるケースが一般的であり、戦前から使用されていた用語と違ってそれぞれのカテゴリに含まれている大学の交流はほぼなかった。
しかし、これらの用語が一般化するにつれて、それぞれの大学間でライバル意識が発生した。また、他方、組み込まれた大学の発祥やおかれている社会的立場が比較的似通っていたことから、同一大学群としての連帯感も発生し、相互単位互換や学生サークルの連合もこれらの大学群で組まれることが多くなっており、現在では定着した用語と考えて良い。
このカテゴリには以下の大学群がある。
- 三校ともミッション系大学という共通点があり、螢雪時代で一時期使われていたことがある。当時JALパックによる海外旅行が流行っていたことから生み出された用語であるが、商標との関係からあまり使用されることがなく、現在はほぼ死語となっている。
- 明青立法中という用語が使われることもある。
[編集] その他のカテゴリー
予備校などの受験産業や週刊誌、あるいは就職活動、各種掲示板などで様々なスラングが毎日のように形を変えて生み出され続けている。切り分け方は偏差値であったり、大学の出自であったり、地域の偏りであったり、様々となっている。これらの用語に関しては一部でしか通用しない言葉が多く、スラングとなっている。それぞれのスラングにまとめられた大学に関係する人にとって、それらの用語にまとめられたことを誇りに思う人がある一方で、まとめられたくないという思いを抱く人がいるのも事実である。
膨大なスラングの中から全国規模の予備校や各種企業、雑誌・新聞などのマスメディア、日本全国の高等学校などによって使用されていることが確認されたものを以下で紹介する。
- 大東亜帝国(大東文化大学、東海大学、亜細亜大学、帝京大学、国士舘大学)
- 関東上流江戸桜(関東学園大学、上武大学、流通経済大学、江戸川大学、桜美林大学)
- 摂神追桃(摂南大学、神戸学院大学、追手門学院大学、桃山学院大学)
- 早慶上智(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学)
- 大学受験における、私立大学の偏差値上位3校をまとめるために作られた用語。予備校では偏差値最上位のクラスを示す場面で使用されているほか、関東地区の高等学校における進学実績評価の場面でも使用されることが急速に増えている。そうした傾向から一般企業でも使用される割合が増え始めている。近年、東京理科大学を入れて早慶上理という表現を使用する事例が大手予備校や高等学校で増えつつあり、雑誌でも使用され始めている。
[編集] 日本以外の事例
アメリカではハーバード大学などをアイビー・リーグと呼ぶ大学群にまとめ、同じく英国ではケンブリッジ大学やオックスフォード大学などをアンシャン・ユニヴァシティーと呼ぶ大学群にまとめている。
[編集] 参考文献
- サンデー毎日各号
- 螢雪時代各号
- 旺文社パスナビ
- 東京英研フォーラム21
- 『間違いだらけの大学選び』(疾風編/怒濤編)、朝日新聞社、1994年。 ISBN 4022566752 ISBN 4022568224
- 『大学ランキング』、朝日新聞社出版局、各年刊。
- タウンハウジング立川営業所