大入道
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大入道（おおにゅうどう）は、日本各地に伝わる妖怪。
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[編集] 概要
名称は大きな僧の意味だが、地方によって姿は実体の不明瞭な影のようであったり、僧ではなく単に巨人であったり、様々な伝承がある[1]。坊主（僧）姿のものは大坊主（おおぼうず）ともいう。また大きさも人間より少し大きい2メートルほどのものから、山のように巨大なものもある[2]。
人を脅かしたり、見た者は病気になってしまうとする伝承が多い[1]。狐や狸が化けたものとする説もあるが[3]、多くは正体不明とされている[1]。
[編集] 人に害を成す大入道
- 東京の事例
- 第二次世界大戦最中の昭和12年（1937年）。赤紙を届けに行った人が、赤羽駅の近くにある八幡神社踏切で兵士の姿の大入道に襲われ、4日後にその場所で変死した。大入道の正体は自殺した新兵、もしくは失敗を責められて上官に撲殺された兵士の亡霊と言われた。ちなみにその近辺では、赤紙を受取ったという者は誰もいなかったという。
- 人間の霊が大入道と化す、珍しい事例である[1][4]。
[編集] 人を助ける大入道
阿波国名西郡高川原村字城（現・徳島県名西郡石井町）では、小川の水車に米などを置いておくと、身長二丈八尺（約8.5メートル）の大入道が現れ、それを搗いておいてくれると言われていた。ただし搗いている様子を見ようとすると、脅かされてしまうという[1]。
[編集] 動物が化けた大入道
かつて仙台の荒巻伊勢堂山に、夜毎に唸り声を発する大岩があった。さらにはその大岩が雲をつくような大入道に化けるという話もあった。
当時の藩主の伊達政宗はこの怪異を怪しんで家来に調査させたが、戻って来た家来たちは、大入道の出現は確かでありとても手に負えないと皆、青ざめていた。
剛毅な正宗は自ら大入道退治に出向いた。現場に着くとひときわ大きな唸り声と共に、いつもの倍の大きさの入道が現れた。正宗が怯むことなく入道の足元を弓矢で射ると、断末魔の叫びと共に入道は消えた。岩のそばには子牛ほどもある獺が呻いており、入道はこの獺が化けたものであった[3]。
仙台の鰻坂の名の由来は唸り坂の訛りとされるが、この唸りとはこの伝承の大岩の唸りとする説がある[3]。
[編集] その他の大入道
- 富山県の事例
- 越中国下新川郡黒部峡谷に16体もの大入道が現れ、鐘釣温泉の湯治客たちを驚かせた。身長は5丈～6丈（約15～18メートル）で、七色の美しい後光が差していたという[1]。
- 愛知県の事例
- 江戸時代中期、三河国の豊橋近くに、古着商人が商用で名古屋へ行く途中、大入道に遭遇した。身長1丈3～4尺（約4メートル）と伝えられており、大入道の中では小さい部類に属する[2]。
- 滋賀県の事例
- ある秋の夜。伊吹山の麓に大雨が降り、大地が激しく震えた。すると間もなく、野原から大入道が現れ、松明状の灯火を体の左右に灯して進んで行った。
- 周囲の村人は、激しい足音に驚いて外へ出ようとしたが、村の古老たちが厳しく制した。やがて音がやみ、村人たちが外へ出ると、山頂へと続く道の草が残らず焼け焦げていた。古老が言うには、大入道が明神湖から伊吹山の山頂まで歩いていったということである。これは大入道の中でもさらに大型の部類に属するとされる[2]。
- 鳥取県の事例
- 昔、因幡国（現在の鳥取県）の森に雲をつくほどの大男が出たと言う。大坊主が出るという噂を聞きつけた武士は退治に出かけた。その武士を大坊主は茶屋の主人に化け、からかったという[5]。
- 兵庫県の事例
- 「西播怪談実記」によれば延宝年間9月、播磨国で犬を連れて山奥に猟に出かけた水谷なる者が、山伏姿の大入道が自分を睨み付けているのを目撃。山を跨ぐほどの巨大さ（数百メートルの巨大さ）であったという。殺生を戒める山神の化身であったという[6]。
- 同様に同地佐用郡にて元禄年間5月、鍛冶屋平四郎なる者、夜中に網を持ち山の奥へ川に漁にでかけると、3メートルほどの大入道が川上で網をひっぱっているのを目撃、腹の据わった平四郎は脅えず引き合いをやってるうちに大入道は姿を消したという[7]。
- また同地佐用郡でも、早瀬五介なる者が夕刻時、あたりが暗くなった頃、目の治療の帰り2人連れで道すがら、道の真ん中で3メートルほどの大入道が立ちふさがっているのを発見、大急ぎで逃げるように駆け抜けていったが同行者には見えなかったという[8]。
[編集] 脚注
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- ^ a b c d e f g 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、71-72頁。ISBN 4-620-31428-5。
- ^ a b c 水木しげる 『妖鬼化 2 中部編』 Softgarage、2004年、29頁。ISBN 4-861-33005-X。
- ^ a b c 水木しげる 『図説 日本妖怪大全』 講談社〈講談社+α文庫〉、1994年、90頁。ISBN 4-062-56049-6。
- ^ 今野圓輔 『日本怪談集 -妖怪編-』（電子書籍版） インタープレイ〈現代教養文庫ライブラリー〉、2004年、205-207頁。
- ^ 水木しげる 『妖怪大図鑑』 講談社、1994年、6頁。ISBN 4-062-59008-5。
- ^ 小栗栖健治・埴岡真弓編著 『播磨の妖怪たち 「西播怪談実記」の世界』 神戸新聞綜合出版センター、2001年、22-25頁。ISBN 4-343-00114-8。
- ^ 『播磨の妖怪たち 「西播怪談実記」の世界』 31-33頁。
- ^ 『播磨の妖怪たち 「西播怪談実記」の世界』 82-83頁。
