夏草の賦
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『夏草の賦』(なつくさのふ)は司馬遼太郎による歴史小説である。 文藝春秋により発刊された。 戦国時代から安土桃山時代にかけての長宗我部元親を主人公とした作品であるが、この作品では長曾我部元親と表記されている。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
目次 |
[編集] あらすじ
戦国の世、僻地である土佐に生まれた長曾我部元親は、織田家の侍、斎藤利三の美貌の妹、菜々を娶る。そして野望に燃え、土佐一国を征服、更に隣国へと攻め込む。連戦連勝で勢いづいた元親は、四国を併呑するや、京までへも手を伸ばそうとしていた。しかしそこには最盛期を迎えた織田信長がいた。信長は元親に対し懐柔政策を行い、自分の手が空くとすぐに元親を討たんとした。先鋒は、元親により阿波を追い出された三好笑巌。二つの勢力が激突するかと思われたそのとき、明智光秀によって、本能寺の変がおこる。 しかし一時は危機を逃れたものの、明智光秀の栄華はたった11日で終息を迎え、信長の家来、羽柴秀吉が光秀を討つ。そして秀吉もまた信長と同じように四国を掌握しようとし、元親と対決する。戦いの結果、元親は刃折れ矢尽き、秀吉の軍門に降る。 彼が治めるところとなった領土は再び土佐一国に戻り、しかもいわば秀吉の臣下に成り下がってしまったのである。 そして元親は秀吉から九州征伐を命じられる。秀吉の部下の総大将仙石秀久の下した愚かな命令で不仲の十河存保と共に否応もなく屈強な薩摩勢に戦いをいどむことになる。 凄惨な戦いとなり、元親の嫡子である弥三郎(信親)は討死、元親は危うく落ちのびる。それに追い討ちをかけるように愛妻、菜々の死。元親の野望は終わり、長曾我部家は次第に衰退の一途をたどるようになる。
そして元親の跡継ぎ、盛親の代に関ヶ原の戦い、大坂冬の陣、夏の陣…。最後まで豊臣方についた長曾我部家は滅亡する。
[編集] 主な登場人物
- 長曾我部元親…天下を夢見る土佐の風雲児。信長には、鳥なき島の蝙蝠(こうもり)であると揶揄される。
- 菜々…織田家の侍、斎藤利三の妹であり、元親の妻。美貌を持つが、変わり者。
- 福留隼人…元親の嫡子である信親のめのと。元親の禁酒令をやめさせるなど、勇気ある武者。
- 谷忠兵衛…長曾我部家第一の猛将。九州征伐後、信親の遺体を引き取りにゆく。
- 石谷光政…菜々の父。明智光秀が敗れたときに行方不明となっていたが元親の庇護を求めて現れる。九州征伐の際に信親の下につき戦死。
- 桑名太郎左衛門…長曾我部家の家臣。九州征伐の際に長曾我部三隊のうち一隊を率いる。信親とともに戦死。
- 明智光秀…信長の家臣であるが、冷遇されていると感じ、信長を殺害。
- 十河存保…土佐との戦に敗れたことより、元親に恨みをいだく。秀吉に、元親と共に九州征伐を命じられる。優秀な武人だが、討死。
- 仙石秀久…優秀ではあるが、功名心が強すぎ盲目的になる。九州征伐の軍監であるが、元親の反対を無視し、敗れ、逃げ帰る。