国家社会主義
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国家社会主義(こっかしゃかいしゅぎ、state socialism、独 Staatssozialismus)は、左翼思想の一つであり、国家権力の補助で、資本主義の労働者に対する弊害を排除しようとする立場を指す。夜警国家の命名やカール・マルクスの生活援助で有名だった19世紀ドイツのユダヤ人左翼思想家フェルディナント・ラッサールらによって体系化された。
日本に於いては内容の異なる幾つもの思想を指しており、用語的に甚だしく混乱している。第一にナチズムの訳として使用されるもので、これは最も一般的な称呼となっている。次に高畠素之、赤松克麿らのもので(学説的には北一輝も加えられることが多い)、これはラッサールのものとも、ナチズムのものとも無関係であるが、歴史的にはこの意味で利用される場合も多い。最後に一般的に政治学で利用されるラッサール流の国家社会主義である。
ナチスの「民族社会主義」(ナチズム、National Socialism、独 Nationalsozialismus)は、党(ナチス党)が国家を支配する「党独裁の改良主義」である。社会思想的には国家社会主義に近い部分もあるが、形態的には党(共産党)が国家を支配する「党独裁の社会主義」のソ連型社会主義に近いため、ナチスは、「国家社会主義」と、ソ連型の党独裁の「一国社会主義」の中間に位置するものとも見なしえる。しかし、ナチズムの大家ヒトラーは自身が唱える国民社会主義をドイツ的資本主義とも併称しているので純粋な国家社会主義とは区別する社会主義ならぬ改良主義と思われる(最もドイツでは社会という記号への執着があるのも参考になる)
国家社会主義は、重要産業の国有化と統制経済を柱としており、改革を手段とする。
国家主導による共産主義への移行を希求する国家社会主義に対し、社会主義体制段階から共産主義体制段階移行時に国家の消滅を謳うマルクス主義は一見相反する主張だが、社会主義体制(共産党一党独裁。党独裁社会主義)を堅持したまま、党が定める経済計画の枠内にて市場経済を導入し(党・国家に忠誠を誓った者のみ)私有財産・私営企業設立を認める(ただし、ある程度規模の大きな企業の場合は国を筆頭株主とする様、調整が図られる)社会主義国も登場して久しく、事実上国家社会主義も共産主義への過渡期の一段階であるとした従来のラッサールの説に沿って認知されつつある、というのが現状である。
批判的立場から以下の体制も国家社会主義であるとする主張がある。
国民社会主義ドイツ労働者党は、国家社会主義ドイツ労働者党あるいは民族社会主義ドイツ労働者党とも訳されることがあるが、言語学的には民族社会主義が妥当である。ただし、アラブのバアス党などが、ナチスの民族社会主義とは必ずしも一致しない。
国民社会主義政党は、党旗に褐色を象徴色とする事が多い。例えば、ナチ党の突撃隊は、褐色の制服を用いた事から「褐色シャツ」とも言われた。
[編集] 関連項目
- 国家主義
- 集産主義
- 独裁政治
- ファシズム
- 民族主義
- 国民主義
- 帝国主義
- 軍国主義
- 社会主義
- ソ連型社会主義
- 統制派
- 革新官僚
- 高畠素之
- 星野直樹
- 岸信介
- 石原莞爾
- 西尾末広
- 鮎川義介
- 国家総動員法
- 中野正剛
- 東方会
- 牛嶋徳太朗
- 国家社会主義日本労働者党
- 民社党