二足歩行
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二足歩行(にそくほこう、Bipedal Locomotion)とは、動物が2本の足でその体を支え、重心を前に移動させて前進する歩行様式。恐竜類に多く見られた他、鳥類も、ダチョウやキウイのような地上性の種類を含め、前肢が翼に変わって歩行には使われないので、広い意味で二足歩行であると言える。ヒトや鳥類のペンギンも二足歩行ではあるが、体軸が垂直に立っている、下肢が直線状に伸びている、など他の動物と異なっているので、特に直立二足歩行と呼んで区別する。
二足歩行は、三畳紀の原初的な恐竜類に始まる。中生代を通じて獣脚亜目に属する肉食性の恐竜はいずれも二足歩行となり、鳥脚亜目のイグアノドンやハドロサウルス類も二足歩行となった。ジュラ紀には既に鳥類も出現しており、恐竜絶滅後の新生代にはディアトリマ・フォルスラコスなどの走行性の大型肉食鳥類が出現し、二本足で地上を疾駆しながら獲物を捕らえる生活様式に適応した。新生代末にはディノルニスやエピオルニスのような植物食の大型種、その他クイナの仲間などの小型の走行鳥がいる。地上走行性の鳥類の二足歩行の理由については、進化の不可逆性で説明できる。すなわち、一度変化や退化で失われた器官は再び現われないという事で、クジラ類が水中生活に戻ったにもかかわらずえらは再生せず、肺呼吸をしなければならない例がよく知られるが、鳥類の場合も、いったん翼に変わった前肢が、地上性に戻っても歩行に適した形に戻る事がなく、二足歩行に適応せざるを得なかったと考えられる。
しかし、新生代に入って大発展を遂げた哺乳類では、人類の他にはカンガルーの仲間が移動に際して二本足で跳躍するなどのわずかの例外を除いて二足歩行はなく、これまで発見された化石でも確認されていない。チンパンジー・ゴリラなどの大型類人猿も、短時間二足歩行をすることはあるが、基本的には四足歩行で、長時間の移動では前肢を地面に付けて歩く。
なお、恐竜類も鳥類のほとんども、二足歩行と言っても体軸は基本的に地面に平行であり、四足歩行の変形とみなせる。ヒト及びペンギンの直立二足歩行についてはその項を参照のこと。