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中尊寺 - Wikipedia

中尊寺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

中尊寺

金色堂新覆堂
所在地 岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
位置 北緯39度0分6.31秒
東経141度6分8.14秒
山号 関山(かんざん)
宗派 天台宗東北大本山
本尊 阿弥陀如来(重要文化財)
創建年 (伝) 嘉祥3年(850年
開基 (伝)慈覚大師円仁
札所等 奥州三十三観音番外札所
文化財 金色堂他(国宝)
木造阿弥陀如来坐像、金色堂旧覆堂他(重要文化財)
特別史跡
  

中尊寺(ちゅうそんじ)は、岩手県西磐井郡平泉町にある天台宗東北大本山の寺院。奥州観音札所番外。山号は関山(かんざん)、本尊は阿弥陀如来、開山は慈覚大師円仁とされる。

奥州藤原氏三代ゆかりの寺として著名であり、平安時代の美術、工芸、建築の粋を集めた金色堂(こんじきどう)をはじめ、多くの文化財を有する。国の特別史跡に指定されている。(「金色堂」については別項「中尊寺金色堂」を参照。)

2001年世界遺産登録の前提となる暫定リストに記載され、2008年には「平泉-浄土思想を基調とする文化的景観」の一部としてユネスコ世界遺産委員会の審査を受ける。

目次

[編集] 起源と歴史

[編集] 草創伝承

寺伝によると、草創は平安時代初期にさかのぼり、嘉祥3年(850年)、円仁(慈覚大師)が関山弘台寿院を開創したのがはじまりという。その後貞観元年(859年清和天皇から「中尊寺」の額を賜ったという。しかし、円仁開山のことは、確かな史料や発掘調査の結果からは裏付けられず、実質的には12世紀初頭、奥州藤原氏の初代・藤原清衡堀河天皇の勅命を受けて伽藍を整備したのが、中尊寺の創建と見られる。

[編集] 奥州藤原氏と中尊寺

奥州藤原氏の実質的な初代である藤原清衡が平泉にて中尊寺の中興(事実上の創建か)に着手したのは長治2年(1105年)、50歳の時であった。金色堂の建立は天治元年(1124年)、諸堂の整備が終わって、盛大な落慶供養が行われたのは着手から実に21年後の大治元年(1126年)で、清衡は71歳(死の2年前)であった。この落慶供養の際の願文(がんもん)の写本が残っているが、それによれば、中尊寺は前九年・後三年の役の戦没者を含め、あまたの霊を浄土へ導き、奥州全体を仏国土にしたいとの願いから建立されたものであった[1]

平泉では、奥州藤原氏4代(清衡、基衡秀衡泰衡)約100年にわたって王朝風の華やかな文化が栄え、毛越寺(もうつうじ、基衡建立)、観自在王院(基衡夫人建立)、無量光院(秀衡建立)などの寺院が建立されたが、当時の面影をとどめるのは中尊寺金色堂と毛越寺の庭園のみである。

[編集] 中世以降

文治5年(1189年)、奥州藤原氏は滅亡するが、中尊寺は源頼朝の庇護を得て存続した。『吾妻鏡』に、当時の中尊寺から頼朝に提出された「寺塔已下注文」(じとういかちゅうもん)という文書が引用されている。それによれば、当時の中尊寺には金色堂のほかに、釈迦如来多宝如来を安置した「多宝寺」、釈迦如来百体を安置した「釈迦堂」、両界曼荼羅の諸仏の木像を安置した「両界堂」、高さ三丈の阿弥陀仏と丈六の九体阿弥陀仏を安置した「二階大堂」(大長寿院)などがあったという。中尊寺には、建武4年(1337年)に大きな火災があり、金色堂を残してほぼ全焼してしまった。

近世の中尊寺は衰退し、『奥の細道』の旅をしていた松尾芭蕉が中尊寺の荒廃ぶりを見て嘆いたのはよく知られる。近世を通じ、伊達氏の庇護を受けて堂宇の補修・建立が行われ、寛文5年(1665年)には東叡山寛永寺の末寺に組み込まれている。

1909年明治42年)に本堂が再建。1950年に金色堂須弥壇に800年もの間、安置されていた藤原四代の遺体が調査される(中央壇に清衡、右壇(向かって左)に基衡、左壇(向かって右)に秀衡の遺体と泰衡の首級が納置されていた)。1958年には天台宗東北大本山の称号を許され天台宗総本山延暦寺より不滅の法灯を分火護持される。1962年より金色堂の解体修理が行われ、6年後の1968年に創建当時の輝きを戻すことになる。

現在は、泰衡の首級桶から発見され、1998年に開花したの花が「中尊寺ハス」として境内に植えられている(花弁が現在のものより少し細く、薄いのが特徴)。

[編集] 伽藍

陸羽街道国道4号)から月見坂と呼ばれる参道を登った丘陵上に諸堂が点在する。山内には中尊寺本坊のほか、17か院の子院がある(大徳院、地蔵院、瑠璃光院、願成就院、金剛院、積善院、薬樹王院、真珠院、法泉院、大長寿院、金色院、釈尊院、観音院、常住院、利生院、円教院、円乗院)。

  • 本堂
参道である月見坂を登った右手の中尊寺本坊内にある、中尊寺の本堂である。1909年(明治42年)の建築。
  • 金色堂(解説は別項「中尊寺金色堂」参照)
  • 讃衡蔵(さんこうぞう)
中尊寺ほか山内寺院の文化財を収蔵・展示する施設。1955年に開館したが、現在の建物は開山1,150年の2000年に新築されたもの。もと本坊本尊の木造阿弥陀如来坐像(重文、中尊寺蔵)、峰の薬師堂にあった木造薬師如来坐像(重文、願成就院蔵)、閼伽堂にあった木造薬師如来坐像(重文、金色院蔵)の3体の巨像をはじめ、多くの文化財を収蔵展示する。
  • 金色堂旧覆堂(重文)
1962年、金色堂の解体修理工事が始まるまでの約500年間、金色堂を風雨から守ってきた堂で、1964年に100メートルほど北西の現在地に移築された。建築年代は室町時代中頃と推定される。
  • 経蔵(重文)
金色堂の近くにある。国宝の一切経を納めていた建物で、一部平安時代の古材が使用されているが、建築年代は鎌倉末期と推定されている。内部には国宝の螺鈿八角須弥壇(実物は讃衡蔵へ移動)が置かれ、壇上には獅子に乗った文殊菩薩像と従者4体からなる文殊五尊像(重文)を安置していた。
白山神社能舞台
白山神社能舞台
  • 白山神社能舞台(重文)
境内北方に位置する、中尊寺の鎮守・白山神社内に建つ。嘉永6年(1853年)に伊達藩によって再建されたもの。近世の能舞台遺構としては東日本唯一のものとされ、日本の芸能史上貴重な遺構として、2003年に重要文化財に指定されている

[編集] 文化財

[編集] 国宝

金色院所有)

  • 中尊寺金色堂(解説は別項「中尊寺金色堂」参照)
  • 金色堂堂内諸像及び天蓋 31躯、3面
  • 金色堂堂内具(木造礼盤 1基、螺鈿平塵案 3基、磬架 1基、金銅幡頭 3枚、金銅華鬘(迦陵頻伽文)6枚、附 孔雀文磬 1面)

大長寿院所有)

  • 紺紙金字一切経2,739巻(附 漆塗箱275合)
「中尊寺経」と通称される一切経には、初代清衡の発願になる「紺紙金銀交写経」(1行おきに金字と銀字で書写した経)と秀衡発願(寺伝では基衡発願)の「紺紙金字経」がある。前者は近世初頭にその大部分が寺外に流出し、中尊寺に残る金銀字経は15巻のみである。中尊寺旧蔵の金銀字経は、高野山金剛峯寺に4,296巻が所蔵され国宝に指定されているほか、大阪・観心寺、同・瀧安寺等にも分蔵されている。中尊寺所蔵の2,739巻のうち2,724巻は金字経である。各巻の見返し(巻頭部分)に金泥で描かれた絵は、平安時代の絵画資料としても貴重なものである。
  • 螺鈿八角須弥壇
  • 紺紙著色金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図 10幀(とう)
  • 中尊寺経蔵堂内具(木造礼盤 1基、螺鈿平塵案 1基、磬架 1基、螺鈿平塵燈台 1基、附 孔雀文磬 1面)

地蔵院所有)

  • 孔雀文磬

(用語説明:礼盤(らいばん)-導師の坐る台座。平塵(へいじん)-漆工技法の一種。漆塗りの面にヤスリでおろした荒めの金粉をまばらに蒔き付け、装飾としたもの。平安時代以前に多く用いられた。-(あん)「つくえ」とも読む。仏事に使用する仏具などを置く台。(けい)-「へ」の字形の金属板で、導師の脇に吊るし、叩いて音を出す。「磬架」はこれを吊るすためのもの。)

[編集] 重要文化財

中尊寺他17箇院所有)

  • 木造一字金輪坐像
一字金輪仏頂尊」とも言い、密教の修法の1つである「一字金輪法」の本尊として絵画に表わされることは比較的多いが、彫像としては稀有な例である。図像的には金剛界大日如来像と似るが、日輪を表わす円形の光背を負う点と、頭上に「五智宝冠」という五智如来の姿を刻んだ大ぶりの冠を戴く点が特色である。白く塗られた面相および肢体が肉感的なことから「人肌の大日」「生身の大日」の別称がある。正面から見ると普通の丸彫り像のように見えるが、背面を全く造らない、特異な構造の像である。平安時代後期の作。秘仏で、通常公開されないが、開山1,150年記念の2000年に公開されたことがある。

中尊寺所有)

  • 能面延命冠者
  • 木造阿弥陀如来坐像

金色院所有)

  • 金色堂覆堂
  • 木造薬師如来坐像
  • 金銀装舎利壇
  • 金色堂須弥壇内納置棺及副葬品 一括

大長寿院所有)

  • 中尊寺経蔵
  • 木造騎獅文殊菩薩及脇侍像5躯(経蔵安置)
  • 中尊寺建立供養願文 北畠顕家筆

金色院・大長寿院共有)

観音院所有)

  • 木造千手観音立像

瑠璃光院所有)

  • 木造大日如来坐像

金剛院所有)

  • 木造大日如来坐像

願成就院所有)

  • 願成就院宝塔(石造)
  • 木造薬師如来坐像

円乗院所有)

  • 金銅釈迦如来像御正躰

地蔵院所有)

  • 金銅千手観音像御正躰
  • 椿彫木彩漆笈
  • 蓮華唐草文蒔絵大壇

釈尊院所有)

  • 釈尊院五輪塔(石造)

白山神社所有)

  • 白山神社能舞台

[編集] 拝観について

  • 4/1~11/10 8:00~17:00 11/11~3/31 8:30~16:30
  • 拝観料 金色堂・讃衡蔵共通で800円

[編集]

  1. ^ 中尊寺落慶供養願文

[編集] 参考文献

  • 井上靖、佐和隆研監修、井上靖、多田厚隆、佐々木那世『古寺巡礼東国1 中尊寺』、淡交社、1982
  • 須藤弘敏、岩佐光晴『中尊寺と毛越寺』(日本の古寺美術19)、保育社、1989
  • 『週刊朝日百科 日本の国宝』98号(中尊寺ほか)、朝日新聞社、1999
  • 『週刊 古寺をゆく4 中尊寺』(小学館ウィークリーブック)、小学館、2001
  • 『日本歴史地名大系 岩手県の地名』、平凡社
  • 『角川日本地名大辞典 岩手県』、角川書店
  • 『国史大辞典』、吉川弘文館

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク

中尊寺ホームページ

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