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レイチェル・カーソン - Wikipedia

レイチェル・カーソン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

レイチェル・カーソン
レイチェル・カーソン

レイチェル・ルイーズ・カーソンRachel Louise Carson, 1907年5月27日 - 1964年4月14日)は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州に生まれ、1960年代環境問題を告発した生物学者。アメリカ内務省魚類野性生物局(United States Fish and Wildlife Service)の水産生物学者として自然科学を研究。

当時、州当局が積極的に散布していたDDTなどの合成化学物質の蓄積が環境悪化を招くことはまだ顕在化しておらず、その啓蒙活動を行った彼女の意義は大きかった。

特に、1962年に発表した『沈黙の春』は、農薬類の問題を告発した書として米国政府にまでその衝撃が伝わった。本書を基にケネディ大統領は大統領諮問機関に調査を命じた。これを受けアメリカ委員会は、1963年農薬の環境破壊に関する情報公開を怠った政府の責任を厳しく追及。DDTの使用は以降全面的に禁止され、環境保護を支持する大きな運動が世界的に広がった。

『沈黙の春』の執筆中に癌宣告を受け癌と戦いながら執筆活動を続け、1964年4月14日に癌で亡くなった。

後の研究により、DDTの危険性に疑問が残り、その禁止によりマラリア患者激増という事態を引き起こしたとされるが、『沈黙の春』が人類史上において、環境問題を提議した功績に変わりはない。

目次

[編集] DDT禁止に関する議論

カーソンは特にアメリカの保守層から批判を受け続けているが、特に格好の標的となったのがDDT禁止問題である。この問題については1980年代にレーガン、ブッシュ(父)と続いた共和党政権時代から政治学者チャールズ・ルービン(Charles Rubin)らによって継続的にカーソンへの批判がなされてきたが、2000年代に入ると「カーソンがDDTの禁止を主張しなければ何百万人ものマラリア患者が死なずに済んだ」という論法で、カーソン個人がそれらの死について責任を負うべきであるという批判がなされるようになった。加えて2006年にWHOがマラリア予防の方法として、年に1度、住居の壁面にDDTを塗布する使用法を推奨したこともあり、カーソンのDDT批判は完全に的はずれだったという主張もなされている。

一方、こうした批判に対しカーソンの伝記を執筆したライト(Mark Hamilton Lytle)は、たしかにDDT禁止に関する世界的な論議の中でカーソンが果たした役割は大きかったにせよ、様々な公衆衛生上の問題が複雑に絡み合っていたアフリカの状況を考えると、DDT禁止によるマラリアの蔓延が数百万人を殺したという表現には大幅な誇張がある上に[1]、カーソン自身、DDTの完全禁止を主張したことは一度も無いと指摘している[2]

なお、DDTの使用は残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において、マラリア対策用としてのみ使用可能とされたが、これに関し Malaria Foundation International(MFI)のアミール・アタラン(Amir Attaran)(オタワ大教授、法学)は、かつてDDTの農薬としての使用が禁止されたことは、マラリア対策という面では明らかに効果的であった(耐性を持つ蚊の増加を抑えることが出来た為)と評価している[3]

また、DDTはその後の研究で発ガン性こそ疑問視されるようになったものの、環境汚染物質であることは疑い無いもので、その農薬としての大量散布が北米における猛禽類の大幅な減少(卵の殻が薄くなるなどの理由による)を招いたことは有名である。また農薬として使われれば甲殻類や多くの魚種を殺してしまうことも知られている。

[編集] 主な著書

  • 潮風の下で(Under the Sea Wind)
  • われらをめぐる海(The Sea Around Us)
  • センス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder)
  • 海辺(The Edge of the Sea)
  • 沈黙の春(Silent Spring)

[編集] 出典

  • Lytle, Mark Hamilton. The Gentle Subversive: Rachel Carson, Silent Spring, and the Rise of the Environmental Movement. New York: Oxford University Press, 2007 ISBN 0-19-517246-9

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  1. ^ Lytle, pp.217-228
  2. ^ カーソンは「沈黙の春」の266-275ページ(邦訳のページ数ではないことに注意)においてこの問題に言及している。カーソンは殺虫剤によるマラリア駆除が大きな成果を上げていることを認めた上で、こうした殺虫剤の大量使用は殺虫剤に耐性を持つ蚊を増やすことにも繋がると指摘し、殺虫剤というマラリア対策の最大の武器を人類は自ら破壊しつつあるのかもしれないと論じる。さらにカーソンは「最善の策は殺虫剤の使用量を必要最低限に留めることであり、使用可能な許容量の限界まで殺虫剤を使うべきではない」とも指摘している(p.267)
  3. ^ Malaria Foundation International(MFI):DDTに関するページに該当の記述あり

[編集] 外部リンク


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