プロラクチン
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プロラクチン(prolactin, PRL)は主に下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞(lactotroph)から分泌されるホルモンである。
主なプロラクチンは199個のアミノ酸から成り、分子量は23kDa。下垂体のプロラクチン産生細胞(lactotroph)の他、胎盤や子宮など末梢組織でも産生される。成長ホルモンと構造が近く、同一の祖先遺伝子が重複し、機能が分化したと考えられている。ヒトの場合遺伝子は6番染色体に位置する。
目次 |
[編集] 生理作用
[編集] 生殖に関する作用
- 泌乳関連
- 妊娠維持
- 行動 -- 同じく哺乳類において、巣作りや授乳などの母性行動に影響を与える。
[編集] その他の作用
[編集] 基準値
[編集] 分泌調節
[編集] 授乳期
子どもが母親の胸に吸い付く搾乳刺激により、視床下部からのドーパミンなどのプロラクチン抑制因子(PIF:prolactin inhibiting factor)の放出が抑えられ、またTRHなどのプロラクチン放出因子(PRF:prolactin releasing factor)の放出が促進される。それによりプロラクチンの分泌が促進される。搾乳刺激後1~3分で血漿中の濃度があがり始め、10分でピークに達する。
[編集] 発情期
ラットにおいてプロラクチンの血漿中濃度は、発情前期の夜から発情期の朝にかけて最も高くなる。発情前期にエストラジオールのシグナルが視床下部に伝わり下垂体でのプロラクチン分泌が促される。
[編集] 妊娠期
交配刺激がおこるとその刺激が脳の視床下部に伝わり、ドーパミンの放出を抑える。それによりプロラクチン分泌が促進される。プロラクチン血漿濃度は分娩時に最も高くなる。
[編集] その他
サーカディアンリズムに影響され、一日のうち睡眠中に血漿中濃度が最も高くなる。
その他、聴覚・嗅覚からの刺激、ストレスの影響により分泌が促される。
[編集] 受容体
プロラクチン受容体は、普段は単量体で存在しJak2というチロシンキナーゼと結合している。受容体がプロラクチンと結合すると二量体化し、ホモダイマーを形成する。すると受容体のJak2同士がお互いをリン酸化し、さらに受容体自身のチロシン残基をリン酸化する。Jak2や受容体のリン酸基は、Statというタンパク質に転移し活性化させる。Jak2からリン酸基を受け取ったStatと受容体からリン酸基を受け取ったStatが二量体を形成し、細胞核内へ移行して特定の遺伝子発現を促進する。
[編集] 関連疾患
- 高プロラクチン血症 -- 下垂体に腫瘍ができたり、流産・中絶後、また薬剤の影響などが原因でプロラクチン分泌が過剰になり、排卵抑制や乳汁分泌などの症状が現れる。
[編集] 関連リンク
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視床下部-脳下垂体 | 視床下部:TRH - CRH - GnRH - GHRH - ソマトスタチン - ドーパミン - 脳下垂体後葉:バソプレッシン - オキシトシン - 脳下垂体前葉:αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - MSH - エンドルフィン - リポトロピン) |
副腎 | 副腎髄質:副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン) - 副腎皮質:副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA) |
甲状腺 | 甲状腺:T3 - T4 - カルシトニン - 副甲状腺:PTH |
生殖腺 | 精巣:テストステロン - AMH - インヒビン - 卵巣:エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時) |
その他の内分泌器 | 膵臓:グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン - 松果体:メラトニン |
内分泌器でない器官 | 胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:チモシン - チモポイエチン - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) |
誘導タンパク質 | NGF - BDNF - NT-3 |