プリントゴッコ
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プリントゴッコは理想科学工業が1977年から製造・発売している家庭用小型印刷器具のブランドである。2008年6月末に販売終了することが予定されている。
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[編集] 原理と製品の概要
プリントゴッコの原理はインクが原稿フィルムの細かい穴から染み出る「孔版印刷」で、基本的にはシルクスクリーンを半自動化したものである。原稿をカーボンを含む筆記具で作成して器具に装着し、専用フィルムに密着させてフラッシュランプの熱で熱転写する。感応したカーボン部分だけが透過性を持ったスクリーンとなり、その部分に同製品純正のチューブ式インクを盛り、再び器具に装着して一枚ずつ用紙に押し当てることで印刷する。押圧によってインクを透過させるため、ローラーを必要とせず、印刷は本体のみで完結する。一台で製版と印刷が可能である。 製版に用いるフラッシュランプは、写真用フラッシュバルブの流用であり、ストロボが普及する中需要がなくなっていたフラッシュバルブに再び活躍の場を与えたと言われる。
少ない枚数でも安価に自由な印刷ができることもあり、年賀状や暑中(残暑)見舞いを中心にしたメッセージカードの作成器具の代名詞として幅広く用いられた。カーボンを含んだ印刷を施して直接原稿に使えるように配慮された素材集も多数出版された。自分で作った版下を用いて自由にインクを配置し、誰でも容易にカラフルな印刷ができることがユーザーの高い支持を受け、全国的に普及して行った。発売当初のものは微細な表現を苦手としたが、細かい均一な網目を持つハイメッシュマスターとそれに対応したインクの開発によって、本格的シルク印刷に近いかなり細かな精度を持つ印刷が可能となり、専用フォトスクリーンの登場で写真の網点製版も実現。インクの色数も増えたことで飛躍的に表現力や応用性が向上し、工夫次第で高度な印刷物を作ることもできるようになった。また、原理的にはフルカラー印刷はできないものの、三原色に分解した網点原稿を3つ重ねて印刷することで擬似的に分版カラー印刷を実現するセットや素材集も発売された。応用製品として、簡易スタンプ作成キットや、布印刷に対応したキットなどもある。 こうして進化を続けた結果、最盛期には年賀状印刷の定番となり、年末になると文具店や量販店に山積みされるほどの人気商品に登りつめた。
[編集] パソコンの普及による影響
プリントゴッコは1994年頃をピークに広く日本の一般家庭に普及したが、その後インクジェットプリンタの高画質化、低価格化が進み、それに伴いパソコン上で動作する年賀状作成ソフトが普及したため急速に市場を失った。印刷速度や印刷コストではインクジェットプリンタに見劣りするものではないが、インクジェットプリンタで作成した原稿はカーボンを含まないため、そのままではプリントゴッコの製版用原稿にはできないなど、パソコン、インクジェットプリンタとの親和性が低いこともその一因となった。
その後もしばらくは販売が続けられ、プリンタでは出せない味わいをもたせたり、プリンタと組み合わせて、インクジェットプリンタでは印刷できない金色・銀色・蛍光色などの特殊インクや、立体的に盛り上がるインクなどの特殊印刷を行う用途などに根強い人気があった。しかし、電子メールの普及などにより日本の年賀状文化が衰退していることなどから需要減の歯止めがきかず、2008年6月末に本体の販売を終了する。なお、インク、フラッシュランプなどの消耗品の販売は当面続ける。
[編集] プリントゴッコjet
2003年には「プリントゴッコjet」が発売された。これは小型スキャナ、メモリーカードリーダ、インクジェットプリンタ、液晶画面を内蔵した印刷機械で、原稿作成が容易で手軽にカードが印刷できる点は共通しているものの、従来のプリントゴッコとは全く異なる完全なコンピュータ機器である。しかし、プリントゴッコの特長の一つである特殊インクが使えなかった上、スキャナを備えたインクジェット複合機がパソコン用プリンタ販売の主力になったことで、販売を終了している。
[編集] 年表
- 1977年(昭和52年)5月:ビジネスシヨウでプリントゴッコを発表
- 同年9月:プリントゴッコB6が発売
- 1987年:プリントゴッコPG-10発売
- 1991年(平成3年)11月:プリントゴッコPG-10SUPERが発売
- 1995年(平成7年)9月:プリントゴッコPG-5、PG-11が発売
- 同年11月:プリントゴッコデジタルCD-1が発売
- 1999年6月:プリントゴッコアーツ(紙用、布用:定価29,800円)が発売
- 2000年(平成12年)11月:プリントゴッコFC-3が発売
- 2003年(平成15年)10月 プリントゴッコjetV-10(定価29,190円)が発売
- 2008年(平成20年)6月30日:販売終了