閃光電球
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閃光電球(せんこうでんきゅう)は、フラッシュバルブ(Flashbulb)とも呼ばれ、エレクトロニックフラッシュの普及以前に使用された、一瞬だけ発光する写真撮影用の照明。
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[編集] 概要
閃光電球は、エレクトロニックフラッシュと同じく、撮影時にシャッターを切った一瞬だけ発光する電球。閃光電球は基本的には単なる電球なので、発光器(はっこうき)、もしくはフラッシュガンと呼ばれる、小型のアンブレラを持ち、発光用の電池とコンデンサを収めた装置を必要とする。また、撮影時は発光器とカメラをシンクロケーブルで接続することでシャッターと同期して発光する。
エレクトロニックフラッシュとの最も大きな違いは、閃光電球は一度使うと二度と使えないこと。写真を一枚撮影するたびに新品と交換が必要で、寿命まで何度でも発光するエレクトロニックフラッシュとは対照的である。また発光直後は高温なので、交換作業には注意が必要である。
しかしこのままでは連続して使用する場合に電球の交換が煩わしい。そのために工夫された製品も現れている。インスタマチックカメラやポケットカメラ、ミノックスなどで使うフラッシュキューブと、ポラロイド社のSX-70などで使うフラッシュバーである。
- フラッシュキューブ(Flashcube)
- 4つの電球をひとつにまとめた立方体となっており、一度使うたびに90度回転させることで4回発光できるもの。
- マジキューブ(Magicube)
- フラッシュキューブと同様だが、スプリングがマジキューブの根元にある接点を叩くことで発光するため、電源を持たないカメラに直接取り付けて使用できるというもの。外観はフラッシュキューブと酷似しているが、差込口が異なるため、間違える心配はない。
- フラッシュバー(Flashbar)
- 複数の電球が横に並んだ構造となっており、それらを順番に発光させることができるもの。SX-70など、対応するカメラの上部に差込口がある。レンズ前面のカバーを撮影時に持ち上げると、そのカバーに差込口が表れるものもある。
これらは発光器が持つはずのアンブレラも(小さいながらも)内蔵しており、直接カメラに差し込んで使用する。
その他、エレクトロニックフラッシュであれば、切り換え式で光量を変更(多くは2段階)できたり、外光式オートやTTL自動調光のように広い範囲で光量を変更できる機種もあるが、閃光電球は光量を変更することができない。さらに、多くの閃光電球はモノクロ用で、カラー撮影の場合はカラー用のものが必要となる。
[編集] シンクロ接点
閃光電球が使うシンクロ接点(シンクロターミナル)は、その発光タイミングによって、いくつかの種類がある。
- M接点
M級の閃光電球とレンズシャッターむけ。M級とは、最大光量となるタイミングをおおよそ20ms後となるように作られた閃光電球。レンズシャッターでM接点を使うと、そのタイミングでシャッターが全開となるため、全速同調となる。もしX接点で使うなら、1/30秒以下にすれば同調する。フォーカルプレーンシャッターで使うなら1/15秒以下で同調する。
- FP接点
FP級の閃光電球とフォーカルプレーンシャッターむけ。シャッターの先幕が走り出してから、後幕が走り切るまでの時間に合わせて、発光時間を25~55msと長引かせたもの。(つまり、スリットが移動中は発光し続ける) したがって、フォーカルプレーンシャッターでも全速同調。閃光電球が含む発光体を何種類か混在させることでこのような長時間を実現している。また、閃光電球が充分な光量に達するまで10ms程度は必要なため、シャッターの先幕が走り出すより15~20msほど速く発光を始めさせる。
- X接点
MF級の閃光電球とエレクトロニックフラッシュむけ。タイムラグは考慮されておらず、即時に発光する。フォーカルプレーンシャッターの場合、先幕が走り切った瞬間に発光させるため、その時点で後幕が走行を始めていない、つまり、シャッターがスリット状態で走行するのではなく、全開となるシャッタースピードでしか同調しない。なおホットシューはエレクトロニックフラッシュの普及以降に標準化されたため、すべてX接点である。
[編集] 主要メーカー
[編集] 参考文献
- 小秋元隆輝 "35mm精密カメラ"(復刻版)1996年 朝日ソノラマ ISBN 4-257-12014-2
- 日本写真学会写真用語委員会 "写真用語辞典" 1976年 写真工業出版社
- 三省堂編修所 "コンサイスカタカナ語辞典" 第3版 2005年 三省堂 ISBN 4-385-11060-3
[編集] 関連項目
- プリントゴッコ - 初期の製品で使用された