プラスチック爆薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
プラスチック爆薬 (plastic explosive) とは可塑性を持つ混合爆薬のことでC-4やセムテックスなどがある。
第二次世界大戦中にアメリカ軍が開発。plasticとは原義の可塑性を意味し、粘土のように容易に変形できる。
日本国の法律に基づく名称では「可塑性爆薬」と呼称する。
目次 |
[編集] 歴史
最初のプラスチック爆薬は1875年にアルフレッド・ノーベルによって発明されたゼリグナイトであったと言われている。
第二次世界大戦時の一般的なプラスチック爆薬はイギリスの会社ノーベル・ケミカル社によって開発されたExplosive No.808(通称:ノーベル808)であった。特徴的なアーモンド臭がする緑色のプラスチック爆薬で破壊活動任務のためにイギリスのSOE(特殊作戦部隊)により広範囲に用いられた。
第二次世界大戦の間にアメリカではRDXベースの新型プラスチック爆薬としてコンポジション C、C2、C3が開発された。これらは従来の爆薬よりも感度が低く、可塑性を持っていた。
C3は非常に効果的だったが、寒冷地ではひび割れを起こすなどして脆くなった。そのため、改良型として1960年代にコンポジション C-4 が開発された。
同時期にチェコでもペンスリットとRDXを使用したセムテックスが開発された。
[編集] 主なプラスチック爆薬
代表的なものとしてC-4(シーフォー)がある。これは、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、トリニトロトルエン、テトリル、ニトロセルロース、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(別名 オクトーゲン、HMX)、ワックスなどを混合した油状物質を主成分であるトリメチレントリニトロアミン(別名 へキソーゲン、RDX)に混合したもの(配合割合はRDX 91%に対し可塑剤 9%前後)。粘土のような柔軟な可塑性がある。結合剤や可塑剤の配合により硬いものも調製できる。青色の閃光をはなつ。
国ごとに組成や呼び方が異なり、以下のように呼ばれている。
- アメリカ - コンポジション C-4
- イギリス - DEMEX, ROWANEX, PE4
- フランス - PE4, PLASTRITE (FORMEX P 1)
- ポーランド - PWM, NITROLIT
- ドイツ - Sprengkörper DM12, (Sprengmasse, formbar)
- ユーゴスラビア - PP–01 (C4)
- スロバキア - CHEMEX (C4), TVAREX 4A
- オーストリア - KNAUERIT
- スウェーデン - Sprängdeg m/46
- チェコスロバキア - セムテックス
[編集] 法規制
日本では「可塑性爆薬に含める物質等を定める告示」(平成9年通商産業省告示第548号)によって爆発物マーカーを添加含することが法律で義務付けられている。
また爆発物マーカーが義務化する以前の爆薬の販売、贈与を行った場合にはかならず相手の身元を帳簿に記載することを火薬類取締法で義務付けている。
諸外国でも可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約の批准国では爆発物マーカーを添加含することが法律で義務付けられている。
[編集] 性能
密度 : 1.6g/cm3
爆発速度 : 約8092m/s
なお、爆薬単体は安定で、鈍感であるため、温度・引火・振動などで爆発することはほとんどない。火をつけると緩やかに燃焼する。爆発させるためには信管による起爆が必要となる。
迅速な陣地構築の必要がある工兵にとって現代では不可欠であり、主に既存構築物の破壊のために使用される。近年では武装勢力による自爆テロ等に多用されることで知られる。
また、噛むと甘いらしく、ガムのように噛む兵士もいると言われている。[要出典]