ピースボート
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ピースボート(Peace boat)は、民間レベルの国際交流を目指す日本のNGO。もしくは、この団体が行っている国際交流を目的とした長期船舶旅行の名称。
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概要
ピースボートはアジアをはじめとする各地の人々と現地での交流を行うことで国際交流と理解を図るという趣旨により、青少年を運営主体として長期の船旅を企画・運営しているが、実際には対価が発生することから株式会社の「ジャパングレイス」という会社が旅行業者として企画・実施している。
この企画の発端は、日本のアジア侵略を「進出」と書き換え、被害国の人々が抗議した「教科書問題」である(誤報に端を発して国際問題となった。報じられた教科書とは別に「進出」との書き換え意見があったことも判明した)。世界中の市民と交流するに当たって、平和・民主主義・人権から地球環境問題など、具体的には、地域紛争やHIV問題など、地球上が抱える重大な問題をテーマに扱ってきた、政治的意図を持つ船旅企画である。
敢えて何らかの政治的・外交的問題を意識して渡航先の多くを選ぶこと、明確に反米・反体制的な立場を打ち出していることなどから、その行動や成果には強い賛同と激しい否定の両方がある。主催者の辻元清美が政治家として世間に露出するようになってからは、さらに非難が目立つようになった。
ピースボートの主要活動である船舶旅行(クルーズ)は、平均して年2回以上行われている。船舶や寄港地での講演や交流企画もあり、参加者に体験と交流を促す面が強い。その一方、「ボランティアスタッフ」になれば通常より割安で乗船できることもあり、「安価な世界旅行ができる」と考えて参加する者もいると言われる。また、クルーズ以外にもいくつか派生プロジェクトが実施されている。
ピースボートは自身のウェブサイトにて、自身が国連との特別協議資格をもつNGOであると表記している。ただし、国連のwebサイトでは、ピースボートは経済社会理事会に協議資格(特殊諮問資格/Special Consultative Status)を持つNGOであると記載されており、若干の相違がある。
参加費用は決して安くなく(サービスの悪さを考えれば、他社のクルーズ船よりかなり割高である)、主催団体がNGOであるために、その収益等が全く公表されないことも強く疑問視されている。
歴史
国後島への渡航
第38回クルーズに於いて、ピースボートは日本・ロシア間の領土問題となっている国後島へ渡航した。事前に日本外務省より渡航自粛要請を受けながらの実施であった。また、クルーズ後の2002年10月31日に、外務省は欧州局ロシア課長名に於いて、ピースボートに対し改めて自粛を要請している(自粛を再要請した事実はピースボートのHPに記述されている)。
北朝鮮への渡航
「アジア未来航海」と名づけられた第29回クルーズや、「コリア・ジャパン未来クルーズ」と名づけられた第50回クルーズなど、ピースボートは数回にわたり朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)へ渡航している。また万景峰号をチャーターして北朝鮮へのクルーズを行ったこともある。
なお、こういった北朝鮮との緊密な行動や、日本人拉致問題よりも北朝鮮への戦争賠償や謝罪の優先を訴えたり、反対世論の声が強い時にも敢えて北朝鮮への経済援助を行うべきと訴えたことなどからも、『ピースボートは北朝鮮寄り』とする声が少なからず存在する。
訴訟
ピースボート主宰者ら16人は出版社の新潮社などに対し、著しく名誉を傷つけられる報道をされたしたとして、損害賠償を求める訴訟を起こした(この事実はピースボートのHPに記述されている)。
週刊新潮に掲載された記事は「ピースボート豪華世界一周を『惨たん旅行』にした責任者」との見出しで、ピースボートを批判する内容であり、「金儲け主義の集団と確信した」等の記載もあった。東京地裁は新潮社側に192万円の支払いを命じる判決を下したが東京高裁では敗訴、最高裁は上告を棄却しピースボート主宰者側の敗訴が確定した。
また、ピースボート関係者は文藝春秋などに対しても、1994年10月20日号の週刊文春の記事により名誉を傷つけられたとして、損害賠償を求める訴訟を起こしたが、こちらも2002年2月8日に最高裁での敗訴が確定した。当該記事の見出しは「『サンマがご馳走(ちそう)か!』ピースボート地球一周豪華クルーズにケチ」であった。
東京地裁は「記事の主要部分は真実であるか、文春側が真実と信じたことに相当の理由がある」としてピースボート側の請求を退け、東京高裁も地裁の判決を支持し、最高裁はピースボート側の上告を棄却した。
- 週刊文春の記事では、「ピースボートの集客は旅行業法上問題がある」という指摘があった。これを受けて、これ以後の広告では旅行主催の株式会社ジャパングレイスを大きく出すようにした。
関連項目
外部リンク
- ピースボート
- ピースボートクルーズ(株式会社ジャパングレイスHP)
- 国連広報センター
- 船内裏新聞 シオカラ集
- ヒロさん日記(辛口批判) - 社会批評をテーマとしたHPでピースボートにもかなりのスペースが割かれている。