ピタゴラスの定理
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ピタゴラスの定理(ピタゴラスのていり、Pythagorean theorem)は、直角三角形の 3辺の長さの関係を表す等式である。三平方の定理(さんへいほうのていり)とも呼ばれる。
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[編集] 概要
平面幾何学において直角三角形の斜辺の長さを c とし、その他の辺の長さを a, b とした時
ピタゴラスとこの定理に関して、直角二等辺三角形のタイルが敷き詰められた床を見ていて思いついたなどのいくつかの逸話が知られているものの、ピタゴラスが発見したというわけではなく古代エジプト[2]などでこの定理やピタゴラス数について知られていた。何故ピタゴラスの名を冠すようになったり、ピタゴラスが発見者と伝えられたりしたのか、詳しいことはよくわかっていない。また、この定理の数百もの異なる証明が知られている。
[編集] 証明
いくつかの代表的な証明を挙げる。
[編集] 相似による証明
はじめに、三角形 ABC を角 C が直角であるような直角三角形とし、角 A, 角 B, 角 C の対辺の長さをそれぞれ a, b, c とする。
頂点 C から斜辺 AB に垂線を下ろし、その足を H とする。三角形 ABC と三角形 ACH と三角形 CBH は全て相似である。 よって、三角形 ABC と三角形 ACH の相似比より
であり、同様に三角形 ABC と三角形 CBH の相似比より
である。 従って、
であるから、両辺にcをかけて
を得る。
[編集] 正方形を用いた証明
三角形 ABC を角 C が直角であるような直角三角形とし、角 A, 角 B, 角 C の対辺の長さをそれぞれ a, b, c とする。 △ABC と合同な三角形を 4 つ図のように並べると、外側に大きな正方形ができ、内側に小さな正方形ができる。 ここで、一辺が a + b の正方形を大正方形、一辺がc の正方形を小正方形と呼ぶ事にする。
大正方形の面積は
- (a + b)2
となり、小正方形の面積は当然ながら、
- c2
となる。 ここで、小正方形のまわりの 4つの直角三角形の面積の合計を求めると、
となる。
これらを使うと
- 大正方形の面積 = 小正方形の面積 + 4つの三角形 = c2 + 2ab
であるから、普通に求めた大正方形の面積と比べて
- (a + b)2 = c2 + 2ab
これを整理すると
- a2 + b2 = c2
が得られる。
[編集] ピタゴラス数
正の整数の組 a,b,c がピタゴラスの定理
- a2 + b2 = c2
を満たすとき、組 (a,b,c) のことをピタゴラス数という。a, b, c の最大公約数が 1 であるようなピタゴラス数は、原始的(げんしてき、primitive)、素、あるいは原始ピタゴラス数などという。全てのピタゴラス数は、原始ピタゴラス数の正の整数倍として得られる。
原始ピタゴラス数は、互いに素な正の整数 m,n に対し、一方が偶数の時
により、(必要であれば a と b の値を入れ替えて)得られることが知られている。
[編集] 一般化
余弦定理はこの定理を直角三角形に限らず任意の三角形に一般化したものとみなすことができる。実際、余弦定理の式
- c2 = a2 + b2 - 2ab cos C
において C を直角とすると、cos C = 0 であるから、確かに余弦定理はその特別の場合としてピタゴラスの定理を含んでいることが分かる。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- ^ 大矢真一 (2001), ピタゴラスの定理, 東海大学出版会, ISBN 4486015584
- ^ 亀井喜久男. "エジプトひもで古代文明に挑戦しよう" 2008-03-03閲覧.