パンチドランカー
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パンチドランカー（英：Punch Drunk：PD,Punchy）は、頭部の外傷後に生じる高次脳機能障害のこと。また、そのような状態にある人間を指す。 英語に「ドランカー(drunker)という言葉は存在せず、drinkの過去分詞形drunkに 誤って接尾辞をつけた造語である。
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[編集] 要因
この症状については、頭部への強い打撃や衝撃の繰り返しが、発症する主な原因となっている。特にボクシングは格闘技の中でも頭部にダメージを与える事で、相手選手の運動能力を一時的に喪失させ、これにより相手をノックアウトすることで勝利するというスポーツで、また興行という観点からも派手なノックアウトで相手を倒すことが至上とされる風潮が根強いため、パンチドランカーという現象に他の格闘技と比べても陥りやすい傾向がある。
そもそも、格闘技におけるダウンはいわゆる『脳震盪』が最大の要因である。『震盪』とは、激しく揺れ動かすという意味で、すなわち、頭部へ受けた衝撃は、脳に対しては回転加速度的な動きと揺れを加える事になる。この衝撃により脳の実質が頭蓋内で強く揺さぶられる状態となり、脳内に変位（ずれ）が生じて大脳表面と大脳辺縁系および脳幹部を結ぶ神経の軸が広い範囲で切断、あるいは損傷を受ける。このことによって発生するものである。
ボクシング以外の格闘技・スポーツでも、空手、キックボクシング（K-1）、総合格闘技、プロレス、ラグビー、アメリカンフットボールなどで、これと同様の症状やその兆候ではないかと思わせる挙動や言動を見せる選手や選手経験者がたまにおり、関係者やファンの間で憶測や不安を呼ぶ事も決して珍しい物ではない。
[編集] 症状
パンチドランカーは、結果的に広い範囲で神経の連絡機能の断絶を生じ、前述のような症状を継続的に呈し続けることになる。脳への影響は打撃による累計的な損傷量、つまりダメージの蓄積がもっとも警戒すべき点であるとされており、それゆえ選手としてのキャリアが豊富かつ長期に渡る者や、激しいファイトを特徴とした選手ほど十分な注意が求められることになる。
尚、このような病状を『瀰漫（びまん）性脳損傷』もしくは『瀰漫性軸索損傷（DAI）』と呼び、受傷後のある一定期間を経た後の病状の進行が問題となっている。
頭部打撃の直後の場合は、周囲のトレーナーやコーチ、また自分自身も心配し注意をしていることが多い。異変に気づき、脳の画像検査をした結果、出血やむくみなどの変化が早期に認められ、診断も比較的容易である。しかし、微小な出血やダメージが徐々に蓄積されていく場合は、症状も徐々に軽度なものから見られ、選手自身や周囲も気づかないことが多いので危険である。認知障害や人格変化は診察室では目立たず、自覚症状や訴えも少なく、失語症もほとんど見られない。その為、競技関係者や当の選手にさえ軽視している者も少なくないのが実態ではある。
そして選手本人が日常生活や競技活動の中で異変に気づく頃には、脳は相当のダメージが蓄積されているものと判断できる状態となり、選手は様々な症状に生涯に渡って苦しみ続ける事となってしまう。
具体的な症例。
これらによって社会復帰はおろか、日常の生活活動さえ著しく困難になる場合もある。また、衝撃で脳と同様に三半規管や前庭神経に損傷を受けていると、平衡感覚などにも異常が発生し、日常生活にさえ支障を来すこととなる。これも（医学的な意味よりも）広義のものとして、パンチドランカーの範疇に含める場合がある。
[編集] 対処法
パンチドランカーとその症状を避けるためには、周囲の証言を聞き出すことや定期的な脳の検査（脳室拡大および白質の瀰漫性萎縮）を欠かさず、チェックを続けることが必要不可欠である。どんな小さなサインも見過ごさないようにすることが、悪化させない最良の手段である。近年では、多くの格闘技団体で試合前後の脳の検査を義務付けている。
この問題は選手生命だけでなく選手の引退後の人生、深刻な後遺症が発生した場合には家族の生活までをも大きく左右しかねないものであり、競技に関係するすべてのスタッフは十分に理解を深め、対応することが求められる。
[編集] パンチドランカーを扱ったフィクション
[編集] パンチドランカーである事を告白した人物
- 佐竹雅昭 著書「まっすぐに蹴る」で、日常生活も困難になっていたことを告白した。
- 武田幸三 著書「ラストサムライ 片目のチャンピオン 武田幸三」で、片目がほぼ見えなくなっていたことを告白した。
- たこ八郎 引退の原因となった。廃人とまでは行かないまでも、一時期二桁以上の文字すら記憶できなかったという。
- ガイ・メッツァー インタビューで告白し、引退。
