ハラン (植物)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハラン | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||||||||||
|
ハラン(葉蘭または馬蘭、Aspidistra elatior)とはユリ科(APG植物分類体系ではスズラン科)の常緑多年草で、巨大な葉を地表に立てる植物である。俗にバランともいうが、多くの図鑑はこれを別名として認めていない。よく庭に植えられ、斑入りなどの品種がある。また幅広い大きな葉は食物を包んだり盛ったりするのに用いられてきた。
中国南部原産であると言われてきたが中国での野生は見つかっておらず、鹿児島大学の研究者により九州南部の宇治諸島、黒島、諏訪之瀬島が本来の野生地であるという報告がなされている(Sako and Maruno,Bull. Kagoshima Univ. For. 11: 33--78. 1983 and Sako et al. ,ibid. 16: 83--108. 1988)。茎は地下を横に這う地下茎の形をとる。葉は薄いが硬くてつやがあり、深緑色。楕円形で長さが50cmを越える。密な群落を作るので、地面からこの様な大柄な葉が立ち並ぶような風景となる。日陰で手入れをしないでもよく育つ。
花は紫色で多肉質。5月ごろ地下茎から出て地面すれすれに咲く。ちょうど花が地面にめり込んだような格好である。果実も地表に乗っかった姿になる。
折詰や刺身についてくる「緑色のプラスチックシート」はハランを真似たものである。本来はハランの葉を包丁で細工したもので、現在ではハランそのものを料理の飾りに添えて使用することが少なくなったが、料亭・寿司店では主に高級店で実物を使っている店もある。
同属の植物は、これまでに85種が中国、インド東部、ベトナム、ラオス、台湾、日本で発見されており、そのうち59種は中国に分布し、さらにそのうちの54種は中国の固有種である。
ハランはヨーロッパでも植えられ、ジョージ・オーウェルの自伝的作品Keep the Aspidistra Flying”(「葉蘭をそよがせよ」1936年)には、イギリス中産階級の象徴として庭のハランが登場する。
[編集] 花粉媒介について
この植物の花は地上すれすれに咲くことからカタツムリやナメクジにより授粉されるとの仮説を提唱した植物学者がいたが、1995年に日本の加藤真がダンゴムシがこの種の花粉を媒介することを示した(KATO, M. 1995. The aspidistra and the amphipod. Nature,London. 377, 293)。